いつしか、あらゆるイベントの外せない定番ルックになっていた、ネイキッドドレス。そのいわばレッドカーペットの名物の着用を、世界最高峰の映画祭とされるカンヌ国際映画祭が、今年から正式に禁止した。以前から、その厳しさゆえに物議を醸してきた公式ドレスコードだが、最新のアップデートを受けてさらに厳格化。「体面上、露出の多い服をレッドカーペット、および映画祭の他エリアでも禁止」と明記されている。そして、禁じられたのは、それだけではない。「ボリュームのある衣装、特に大きなトレーンのある衣装は、ゲストの動線を妨げ、劇場内での着席に支障をきたすため、着用不可とします。これらの規則を遵守しない場合、映画祭スタッフによってレッドカーペットへの立ち入りをお断りします」と続く。

しかし、ドラマティックなトレーンやボリューム感あふれるチュール、ノーブラといった、目を楽しませてくれるルックなくして、レッドカーペットは成り立つのだろうか。これまで披露されてきた華やかなガウンとは打って変わって、地味なイブニングドレスなどしか見られないのではないか。そう懸念する人もいるだろうが、正直言って、私自身は、セレブたちの装いは今年も例年とさほど変わらないものになると思っている。というのも、カンヌ国際映画祭では、レッドカーペットでの自撮りや長居など、自粛が要請されていること、ないしは禁止されていることがすでに多くある。だが、こういったルールの施行は場当たり的で、人によっては全く咎められない。

例えば昨年、ケリー・ローランドはレッドカーペットで警備スタッフに強引に急かされ、突然全方位から取り囲まれた。その一部始終を収めた動画が、ネットで拡散。「私には、他人には超えてほしくない一線があり、その線をしっかりと引いただけのことです」と後日、この一件について彼女はAP通信に語った。「それに、レッドカーペットを歩いた女性はほかにもいましたが、咎められたり、突き飛ばされたり、引き上げろと言われたのは、私のような見た目の人たちだけでした」と、人種差別があったことも示唆。ドミニカ人俳優のマシエル・タベラス、少女時代のユナ、ウクライナ出身のモデルのサワ・ポンティイスカと、ほかに急かされたスターたちが主に有色人種であることを思うと、あながち否定できない。一方で、大物スターやベラ・ハディッドをはじめとするモデル、映画祭の大手スポンサーとつながりのあるゲストたちは、時間をかけて、レッドカーペットでの撮影に応じることが許された。今回、新たに設けられた「ネイキッドドレス禁止」というルールも、このように、実際は一部の人にしか当てはまらないのではないだろうか。ある程度の知名度があれば、服の露出が多かろうと、特に何も言われずにレッドカーペットに立ち入ることが許されるセレブは、必ずいるはずだ。

また、カンヌ国際映画祭では、長い間、露出度の高いルックが披露されてきている。それを思うと、今年も何人かのゲストたちは、確実に掟破りの装いをしてくるだろう。ネイキッドドレスやシアーコーデは、本当に過去のものになとなり、レッドカーペットが保守的なルック一色になってしまうのだろうか? そのときは、これまでセレブたちが纏ってきた、攻めたネイキッドルックを懐かしむしかない。

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