「あなたは自分の今の生き方に満足していますか?」

 何やら自己啓発本の売り文句みたいになってしまったが、この質問に迷いなく「はい」と答えられる人は果たしてどれくらい存在するのだろうか。「はい」と答えられない人にとっては、今よりも自分に合った生き方を想像すること自体がある種の救いになるのかもしれない。

桜井ユキが明かす“自分と向き合う時間”の大切さ 俳優の仕事は「生きる意味」

数々の名作を生み出してきたNHKドラマ10枠。視聴者の心を揺さぶり、癒やしてきたこのドラマ枠に新たな仲間入りを果たすのが、桜井ユ…

 『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)第6話では、さとこ(桜井ユキ)が移住に向けた長期的な計画を立て始める。

 きっかけは、出張帰りの唐(福士誠治)から喘息改善のために温泉地のある地方へ移住したこけし職人の話を聞かされたことだった。転居の理由は持病に限らず、人によって様々だ。隣人の痰を吐く音に我慢できなくなった高麗(土居志央梨)のように、「ここに私の未来はない」とすっぱり見切りをつけて引越しを決意する人もいる。それができるのは高麗がフリーランスのイラストレーターで、どこでも仕事ができるからだと思う人もいるかもしれない。

 だが、コロナ禍をきっかけにリモートワークやテレワークが急速に普及したことで、働く場所を自由に選べる会社員も増えた。出社の必要がなければ、どこに住むかはその人の自由だ。都会から地方への移住を検討しやすくなり、移住者に支援金を支給したり、現地での就職をサポートする地方自治体も増えている。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、従来は当たり前とされていたものが大きく変化した。その結果、副業や地方移住が盛り上がりを見せているのは、多くの人が知らず知らずのうちに場所、時間、仕事など、色々な制約に縛られていたということの証拠なのかもしれない。膠原病という一生付き合う病気を抱えるさとこは仕事で住む場所を選ぶのではなく、自分の体に合った土地に住居を構えるという考えに感銘を受ける。

WACOCA: People, Life, Style.

Pin