おそらくアンダーソン映画のなかで最も評判の悪い(そしてこのリストの6位の作品と並んで最も過小評価されている)作品だろう。インドを巡る列車の旅で結束を取り戻そうとする3兄弟(オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン)の物語はストーリーテリングの面で野心的だが、その前後に彼が起用した豪華アンサンブルを考えると劇的にスリムダウンされている。

3兄弟のうち2人は旅にあまり乗り気ではない。キャリア最高の演技といってもいいブロディ演じるピーターとシュワルツマンのジャックは何度も旅を降りようと企む。ウィルソン演じるフランシスは一生懸命だが、彼のセンチメンタルな支配的態度は兄弟の苛立ちを悪化させるだけだ。しかし最終的に、彼らは抱えていた荷物を文字通り手放さなければならなくなる。計算され尽くしているようで嫌味すら感じるが、ザ・キンクスの曲に乗って描かれるそのシーンには感動がある。兄弟という関係から生まれる、揺るぎない、強烈な、そしてときに狂気じみた絆の素晴らしさを教えられるシーンだ。

面白いのは、彼らがときにいわゆる「醜いアメリカ人」として一致団結することである。たとえば、喧嘩騒ぎの末に最初の列車から追い出された後、去っていくその列車に怒って石を投げつける場面がそうだ。アンダーソンが、3人の白人アメリカ人が精神的な悟りを求めてインドに向かうという構図に意識的でないと見るのは無理があるだろう。

狭い列車内で様々なシーンを描くのに要求される技巧を考えると、アンダーソンの演出には引き出しが少ないという意見も嘘になる。兄弟の父親の葬儀を描いたフラッシュバック・シーンは、彼の短編作家としての緻密さを物語っている。アンダーソン映画のなかでも感傷的な駄作と評されることもある本作は、実際には彼が演出面で多くの新機軸を試した複雑な作品なのである。

7. フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年)

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Searchlight Pictures/Everett Collection

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