そう語るのは、映画監督・山崎貴。監督、脚本、VFXを手掛けた『ゴジラ-1.0』(23)が第96回アカデミー賞視覚効果賞に輝いた、いま最も世界から熱視線を浴びる日本人映像作家だ。
山崎監督の「スター・ウォーズ」とのファーストコンタクトは、少年時代、テレビでたまたま見た短い映像だった。そこには、ミレニアム・ファルコンとタイ・ファイターのチェイスシーンが映しだされていた。これまで見たことのない、圧倒的にリアルな宇宙戦の描写に衝撃を受けた。「頭の中が完全に沸騰状態で、その日は眠れませんでした」と当時を回想する。
その映画『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』(77)は、1年後、1978年にようやく日本で劇場公開される。「『スター・ウォーズ』と『未知との遭遇』を中学2年の時に同時に体験してしまったわけですから、それはもう(作品の嗜好が)そっちに行っちゃうよなという。僕にとって間違いなく“原点”です」。かくして中学2年生の山崎少年は、映画とVFXに魅せられ、その道を志すことになる。
MOVIE WALKER PRESSでは、そんな現在に至るまで「スター・ウォーズ」ファンを公言してはばからない山崎監督に独占インタビューを実施。先日発表され大きな話題となった「スター・ウォーズ」待望の新作映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(2026年5月22日公開)への期待、ひいてはクリエイター目線からひも解く「マンダロリアン」シリーズのすごみや、シリーズから引き続き映画の監督、脚本も務めるジョン・ファヴローと対面した際の貴重なエピソードまで、たっぷり語ってもらった。
しゃべるグローグーのおもちゃと一緒に、山崎貴監督にインタビュー! / 撮影/杉映貴子
■「わあ、スターだ!ご本人だ!と思わず興奮しました」
先頃大きな話題を呼んだ「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン 2025(以下、SWCJ2025)」にもゲストとして参加した山崎監督。
世界中のシリーズファンが日本に集結した「SWCJ2025」 / [c]2025 Lucasfilm Ltd. 2025 Getty Images
「スター・ウォーズ セレブレーション」とは、1999年から始まった「スター・ウォーズ」ファン向けの大規模イベント。ここ日本で開催されるのは、2008年以来17年ぶりである。4月18日から20日に幕張メッセで開催された「SWCJ2025」は、同イベント史上最短でチケットが完売、アメリカ以外で開催された「スター・ウォーズ セレブレーション」としては最多動員を記録。世界125か国から集った10万5000人の「スター・ウォーズ」ファンが会場を埋め尽くした。
一般来場者が周囲をぐるりと取り囲むライブステージでのトークイベントに出席した山崎監督の顔も、そこに集まったファン同様満面の笑みと興奮に溢れていた。「どこを見渡しても『スター・ウォーズ』ファン。最高ですね!」というステージ上での彼の言葉には、来場客からは大歓声が上がっていた。「もうね、360度どちらを見てもライトセーバーだらけで。僕の言葉ひとつひとつに対して、皆さんのリアクションが本当に大きい。最高に楽しくていい空間でした」とその時の光景を振り返る。
SWCJ2025の初日、パネルステージでは、2つの「スター・ウォーズ」映画についての新情報が大々的に発表された。『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』からはキャストのペドロ・パスカルとシガーニー・ウィーバーがサプライズ登壇し、会場限定の特別映像が披露された。どんな映像だったか、詳細は明かせないとしつつも、「とんでもなく派手な映像を見せつけられて!いやあ、いいものを見せてもらいましたよ。この映画は確実におもしろいと、一発でわかるような映像でした」とそのクオリティに太鼓判を押す。
ステージ上では、ファヴローに抱えられて、グローグーのライブ・キャラクターも登壇。その様子も目撃していた山崎は、「たぶん、あのグローグーは実際に映画に出てらっしゃる方ですよね(笑)。わあ、スターだ!ご本人だ!と思わず興奮しました」とファン目線でしっかり堪能したよう。
「SWCJ2025」ではグローグーも初来日を果たした / [c]2025 Lucasfilm Ltd. 2025 Getty Images
■「自分がいるこの空間が日本じゃないような感じ」
もうひとつの映画『スター・ウォーズ/スターファイター(原題)』(2027年5月28日全米公開)については、「発表の仕方がとにかく洒落ていて。本作のショーン・レヴィ監督が『みんな、ライアン・ゴズリングが主演だと噂しているけど…ひとつ言えるのは、それは本当だってことだよ』…で、ライアン・ゴズリングが登場!というサプライズ。噂が本当なのも驚きなのに、まさか本人まで来てるなんて」と興奮気味に語る。実は山崎監督、バックステージでゴズリングとニアミスしていたそう。そのことを関係者から聞かされると「ああ、やっぱりそうだったんですね!このスタッフさん、やけにイケメンだなあって思ってたんですよ」と笑う。
エピソード9のその後の物語が描かれるという『スター・ウォーズ/スターファイター(原題)』 / [c]2025 Lucasfilm Ltd. 2025 Getty Images
「SWCJ2025はとにかく、自分がいるこの空間が日本じゃないような感じでした。海外の方も多かったし、全体の内装やライティングもアメリカっぽくて。少し前に行ったNYコミコンの、あの時のムードに近かった。コスプレもみんなものすごいクオリティで、ルークもアソーカも、ほぼ本人じゃないかという人たちがいっぱいいましたよ」。
■「『スター・ウォーズ』の世界がもっと広がっていると思わせてくれる」
さて、映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』で描かれるのは、ディズニープラスのオリジナルドラマシリーズ「マンダロリアン」全3シーズンのその後の物語。山崎監督にとって「マンダロリアン」最大の魅力は、「『スター・ウォーズ』の世界が空想ではなく、本当にあるんだと信じさせてくれること」。
山崎監督が考える「マンダロリアン」の魅力とは?(写真はシーズン3より) / [c]2025 Lucasfilm Ltd.
「映画シリーズに出てきた脇役や小さなキャラクターたちに多くの時間を割いて、その人たちが普段なにを感じ、どう生きているのかをちゃんと伝えてくれるんですよね。『マンダロリアン』を観ていると、映画で描かれている内容だけではなく、もっと世界が広がっていると感じるんですよ。IG-88がこちらで暴れていたり、ジャワたちがあちらでくだらないことをしていたり。エピソード4〜6と同時進行で、あの時期にいろんなことがあったんだと思わせてくれる。そういうところが好きなんです」。
クリエイター目線で「マンダロリアン」を熱く語ってくれた山崎監督 / 撮影/杉映貴子
クリエイター視点では、この作品の技術的核となったLEDウォールに目をみはったという。LEDウォールとは、グリーンバックのように緑一面の背景で撮影し、あとから背景を合成するのではなく、実際に背景素材を投影しながらリアルタイムで撮影できる技法のこと。「技法自体、以前からいろんな人たちが追求し始めていたけど、それをシリーズを作るうえで必要不可欠なツールとして取り入れてしまった。莫大な予算をかけて巨大なLEDウォールのシステムを作って、『あれ?なんかうまくいかないぞ』となったら大惨事じゃないですか。『マンダロリアン』も最初のシーズンはまだそれほど予算が潤沢ではなかったはず。その大部分をあのシステムにつぎ込んだ胆力がまずすごいと思いました。ジョン・ファヴローは『ジャングル・ブック』然り、『無理でしょ』と誰もが思うようなことを、これで行くと決めて、動かして、成立させてしまう。同業者として尊敬します。そして、この技術のおかげで『マンダロリアン』の世界は拡張された。いままでの映画がストーリーに沿って進む従来型のゲームだとしたら、『マンダロリアン』はオープンワールド。『スター・ウォーズ』の世界は本当に存在していて、どこにでもロケに行けると感じられるような技術を開発してしまった。これはとにかく凄まじいことですよ」。
■「テレビシリーズも夢のような事態だからうれしいけど、やっぱり映画館でワクワクしながら観たい」
そんな「マンダロリアン」シリーズを創りあげてきたファヴローが、SWCJ2025直前に東京・調布市にある白組を訪れたという。その時、彼とはどんな話をしたのだろうか。
「うちのスタッフが、ミレニアム・ファルコンの模型とかアイアンマンのマスクを持ってきてみんなでサイン攻めにしちゃって(笑)。ジョンさんもいい人だからすべて応えてくれて、とてもありがたかったです。あんなにみんなでサイン頼んじゃってよかったのかな…と言いつつ、僕もしっかりもらいましたけど(笑)。でも、『小さいチームだけど、お互いに話し合いながら作っている空気が感じられて、すごくよかった』とおっしゃって、楽しんでくれたみたいでした」。
【写真を見る】グローグーの動くおもちゃに興味津々の山崎監督。いつの間にか保護者気分!? / 撮影/杉映貴子
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』の公開は、約1年後の2026年5月22日(金)。劇場映画としては、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(エピソード9)』(19)以来、実に7年ぶりとなる。山崎監督が同作に期待することは?
「『スター・ウォーズ』は映画館の大スクリーンで観るべきものの筆頭。テレビシリーズも、毎週『スター・ウォーズ』が観られる夢のような事態だから、それはそれでうれしいんですけど、やっぱり映画館でワクワクしながら観たい。それがまた体験できるのが楽しみですね。SWCJ2025で観た特別映像が想像よりはるかにすごくて、かつ『マンダロリアン』ならではだったので、テレビシリーズのあの空気をちゃんと劇場映画として拡大してくれていると確信しています」。
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』への期待が高まりまくる! / [c]2025 Lucasfilm Ltd.
そんなこんなでインタビューも終了の時間とあいなり…のはずが、山崎監督のトークはさらに白熱する。「これは僕の持論なんですけど、艦隊戦がない『スター・ウォーズ』は『スター・ウォーズ』じゃないと思うんですよね。特に劇場映画は艦隊戦がないと!『マンダロリアン・アンド・グローグー』には、必ず艦隊戦があると信じてます」「時代設定的にエピソード4〜6のころの話なので、出てくるメカがことごとく好みなんですよね。おそらく多少のマイナーチェンジがあるとは思いますが、ジョー・ジョンストンのメカが山ほど出てきて、そして艦隊戦もあると思うと、もうワクワクして待ちきれないです!」「あ、あと、『スター・ウォーズ:アソーカ』シーズン2に、僕の大好きなアクバー提督が出るというのも発表されたんです。あのモン・カラマリ星の“イカ星人”。フィル・ティペットがカラマリサラダを食べながら名前を思いついたという(笑)」。
山崎貴監督が持参してくれた実物大グローグー&バッグ、実はジョン・ファヴロー監督のサイン入り! / 撮影/杉映貴子
あふれる想いが止まらない山崎監督。その瞳はきっと、「スター・ウォーズ」に初めて出会った中学2年生のあの時のままなのだ。
取材・文/編集部

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