依頼人のなかで燻る火種を焚きつける、その一方で正義ではなく利益を追求する。そんなピース法律事務所のやり方に納得ができず、「辞める」と言い放った宇崎(間宮祥太朗)。しかし轟(仲村トオル)は「お前はすでに俺の手のひらのなかなんだよ」と、宇崎の実家の弁当屋が抱える借金500万円を肩代わりしたことを明かす。5月2日に放送された『イグナイト -法の無法者-』(TBS系)第3話では、そんな“首輪”を付けられた宇崎が独断で引き受ける案件が描かれる。

 轟たちが別の案件で出かけているあいだ、事務所の留守番を任された宇崎。するとそこに、帆刈町という港町で食堂を営む高山恭子(アンミカ)という女性が轟に相談があるとやってくる。高山の依頼は、1カ月前に海岸のテトラポットから落ちて大怪我を負った外国人技能実習生のクオン(パース・ナクン)を救うこと。なにかを隠しているようなクオンの様子から、その依頼を引き受けることを決めた宇崎。轟の反対を押し切り伊野尾(上白石萌歌)と共に帆刈町へ向かうと、地元の子どもから「海に幽霊が出る」という噂を聞かされるのである。

 安全配慮義務違反や給与の未払い、労働時間の超過などなど、外国人技能実習生を“技能実習”としてではなく安価な労働力として酷使することで生じるトラブルは、現実世界でも頻繁に取り沙汰される社会問題のひとつである。それだけに、近年ではドラマの題材として頻繁に用いられることが目立ち、直近では『東京サラダボウル』(NHK総合)で暴力行為や人権侵害の被害者として、『ゼイチョー 〜「払えない」にはワケがある〜』(日本テレビ系)では見落とされがちな税金滞納問題が触れられ、『MIU404』(TBS系)では彼らが犯罪に手を染めてしまう側に回るなど、描かれかたはさまざまだが、根本にある問題はすべて同じであろう。

日本人は“外国人就労”にどう向き合うべきか 『東京サラダボウル』が描く実習制度の実態

「一度壊れた友情って、また戻ると思う?」
「戻るチャンスはあるんじゃないですか? 少なくとも今、この瞬間、同じ国で生きてるんで…

 そのような、ある種パターン化しやすい題材を、いかにして『イグナイト』のひとつのエピソードのテーマとして落とし込むか。それは“弁護士”という立場から、不遇な立場に置かれても声を上げることができない外国人技能実習生の声を代弁することに他ならない。劇中で伊野尾が語る「法を知ることは声を出せるっていうこと。法を知らないと、なにも喋れないのと同じ」という言葉。さしづめそれは、先述の『東京サラダボウル』において警察通訳人が言語をもって障壁や問題を越える役割を担ったことにも通じている。あくまでも弁護士は、法律をもってそれらを越える手助けをする立場にあり、なにかが起きてからしか立ち入ることができないもどかしい立場でもある。

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