「心の赴くままに生きる勇気をくれるグループ」をコンセプトに活動するWILD BLUEは、山下幸輝、宮武颯、鈴川直弥、池田優斗、鈴陽向の5人で結成されたボーイズグループだ。各メンバーは舞台・俳優・ダンス・モデルなど多彩なバックボーンを持っている。

 彼らが一気に知名度を上げたのが、2024年10月30日に配信リリースされ、山下が出演したTVドラマ『私の町の千葉くんは。』(テレビ東京系)の主題歌に起用された3rdデジタルシングル「Bubbles」のヒットである。UTAがプロデュースを手掛けた同曲は、軽やかなビートとグルーヴが印象的なポップチューン。各メンバーの声質にフィットするように構成されたアレンジは、ファルセットの美しさや母音のニュアンスの違いまで計算されているのではないかと思わせる緻密さで、自然と5人の声の良さが響いてくる上、リピートを促す中毒性も抜群。結果、「Bubbles」は同年12月にSpotify週間バイラルチャートで2週連続1位を獲得している。

 このチャートアクションを牽引したのが、2024年11月に開催されたパシフィコ横浜でのデビューショーケース『WILD BLUE DEBUT SHOWCASE [The First Light]』だ。この日、ファンネーム “STARRY(スターリー)”の発表に加え、リーダー 山下が語った「夢中になって歌って踊っているメンバーを見て、俺はこれがやりたいんだと思った」という言葉が多くのファンの感動を誘った。彼らの思いに応えるように、STARRYたちが一斉に「Bubbles」をSNSでシェアして拡散。また、ショーケース前後のタイミングでTVメディアにも出演し、本人たちが「名刺代わり」と語っている初のオフィシャルブックが発売されるなど、「Bubbles」と5人の実像がリンクする仕掛けが立て続いたことも、WILD BLUEの知名度を高める要因になった。

WILD BLUE ‘Bubbles’ Official MV

 2025年4月からは初の冠ラジオ番組『WILD BLUEのわぶらじ』(TBSラジオ)もスタート。記者会見やTV出演はもちろん、『マイナビ TGC 2024 A/W』や『CREATEs presents TGC 北九州 2024』、『第37回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』でのパフォーマンスなど、限られた時間の中でも存在感を発揮してきたからこそ、こうして着実に“人の目と耳”に届くルートを切り拓くことができたのだろう。

 そんなWILD BLUEが、初のフィジカル作品となる1st EP『POP』を4月2日にリリースした。収録曲5曲すべてを、これまでに続きUTAがプロデュース。作品を聴いてまず驚いたのは、全曲、5人の歌を軸にして作られていることである。既発のシングル曲などでは見られなかった、ドメスティックなメロディのロングトーンにチェストボイスで挑戦したり、ラップ調のアプローチでも音階をなぞったり、日本語の中で母音だけ英語っぽく聴かせたり、ローボイスでウィスパーっぽく発音したりと、5人が果敢に歌に向き合い様々な表現に挑戦している姿が、そのまま作品の良さに繋がっている。

 ここからはEP『POP』の収録曲を紹介していきたい。

 オープニングを飾るM1「BOX of DESTINY」は、ファンクのシンコペーションを彷彿とさせるビートで幕を開けた後、リズムパターンがどんどん変わっていく軽快なポップチューン。言葉を詰め込まず、ラップのように刻むAメロも滑らかに聴かせている。少し湿度のあるメロディで展開するBメロでは、フレーズ最後の母音のしゃくりも含めて初々しさが残るボーカルを生かし、彼らが持つフレッシュな魅力を強く印象づけている。歌詞に繰り返し登場する〈まだ見ぬでっかい未来へ〉というフレーズが、彼らの充実した現在地を示している。この“現在地”を更新していくことがWILD BLUEの使命であり、STARRYが望んでいることだろう。

 M2「POP」はトレンドもポップに昇華したグルーヴィなナンバーで、5人の鮮やかなマイクリレーが展開する1曲だ。歌い出しを担当する池田は、母音と子音のアクセントの違いでフレーズに抑揚をつける。続く山下は「ッ」などの促音や濁音も綺麗に発音し、スムースなグルーヴを描き出しながら、フレーズ終わりのトーンでレンジの広さを見せる。次に登場する鈴川は、透明感ある高音を最初の一音から見事なフルボイスで聴かせるが、曲調とトラックに合わせてアタックの強さを調整しているのがわかる。続く宮武は、吐く息をうまく使ったブリージーなアプローチで他のメンバーとは違った母音のニュアンスを醸し出している。宮武のフレーズが終わった後、リズムが変わると同時に入ってくるのが鈴のボーカル。メロディの刻み方も変わりサビヘと展開するが、リズム重視でありながら滑らかにサビに繋いでいくフロウにセンスを感じる。

WILD BLUE ‘POP’ Official MV

 M3「Oh Girl」はメロウなミディアムチューン。メロディにシティソウルの艶っぽさがあると同時に、スロウジャムを彷彿とさせる大人っぽさもある。5人の歌も、ファルセットを使ったり、フレーズ終わりの母音を少し鼻に抜けるようにして残したりと、メロディの良さをしっかり活かして歌唱している。が、この曲の真骨頂はむしろ彼らのボーカルそのもので、艶っぽさと瑞々しさが同居するラブソングを歌声で見事に演出しているところ。後半のソウルフルな歌い回しへの切り替えも聴き逃せない。今後のWILD BLUEの音楽的な広がりが楽しみになる1曲だ。

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