
一般に、その姿に恐怖を抱くのは人間の本能と考えられ、嫌われることが多い蜘蛛。
でもその一方で、蜘蛛は古今東西の多くの文学・芸術作品によく顔を出している。
日本美の原典と目される『古今和歌集』などの勅撰集にも蜘蛛は多く登場し、平安時代の人々は、蜘蛛を恐れたり、嫌ったりせず、網を張っていたり衣についたりすると、恋しい人がくる知らせだとして喜び、多くの和歌に詠んでいた。
ナスカの地上絵にも描かれ、たびたび人助けをもしたという伝説ももち、あるときには神とも崇められ、あるときは鬼にも姿を変える――。
魅力の尽きないのに、嫌われることの多い、摩訶不思議な存在の蜘蛛。
本書では、主に日本の人々が、歴史の中で蜘蛛をどのように捉え、どのように表現したかを追っていく。
目次
目次
はじめに
序章 遺跡の蜘蛛・神話の蜘蛛
1 蜘蛛とはどんな生きものか
2 蜘蛛の考古学
3 世界の神話の蜘蛛たち
第一章 敵の名は土蜘蛛
1 征服神話の中の土蜘蛛たち
2 土蜘蛛は蔑称か
第二章 蜘蛛に寄せる恋の歌
1 蜘蛛に寄せる恋の歌
2 東アジアのめでたいしるし
3 蜘蛛と七夕
第三章 空を飛ぶ蜘蛛
1 雪迎え――空飛ぶ蜘蛛の発見
2 漢詩と和歌に詠まれた遊糸
3 「かげろふ」をめぐる混乱
4 『かげろふ日記』の「かげろふ」とは何か
5 十二単を飾る糸ゆふ
第四章 蜘蛛は神仏のお使い
1 蜘蛛は知る者、賢い者
2 蜘蛛に助けられた人々
第五章 妖怪土蜘蛛登場
1 蜘蛛嫌いの萌芽
2 寺蜘蛛の登場
3 よみがえった土蜘蛛
終章 民俗と遠い記憶
1 相撲を取る蜘蛛
2 蜘蛛の昔話
3 夜の蜘蛛・朝の蜘蛛
おわりに ――蜘蛛はともに生きる仲間――
参考文献
定価2970円(税込)
ISBN9784065395509
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