©フジテレビ
結婚式の日、初めて会う旦那様は写真だった。そんな衝撃的な第1話が話題を呼んだ『波うららかに、めおと日和』(講談社)。本日4月24日(木)よる10時よりフジテレビ系で実写ドラマの放映がスタートすることを記念して、「ダ・ヴィンチWeb」では、著者の西香(にしが)はち先生にインタビューを実施、前後編でその様子をお届けする。前編では『波うららかに、めおと日和』誕生秘話からマンガ制作の裏側についてお話を伺った。

西香はち
2019年『花と紺青 防大男子に恋しました。』(講談社の少女・女性マンガアプリ「Palcy(パルシィ)」先行配信、「別冊フレンド」掲載)で商業デビュー。検索した際に台風情報ばかりが出てくるため、デビューを機にペンネームを「24号」から「西香はち」に改める。制服・軍服が好き。
雑誌を変えて、主人公を変えて。そして生まれた衝撃の第1話
――「写真と結婚式を挙げる」という第1話は衝撃的でした。
西香はち(以下、西香):元々、海軍の話を描きたいな、できれば新婚さんでっていう気持ちがあって。それでいろいろと調べたり、取材したりをする中で、靖国神社の遊就館(※1)ってあるじゃないですか。あそこの展示で、たぶん太平洋戦争末期だと思うんですけど「写真と式をあげた花嫁」みたいな展示があって。
advertisement
――まさに『波うららかに、めおと日和』的な。
西香:それがずっと頭に残ってて。1話のつかみになりそうだし、写真と結婚式を挙げるっていうのも軍人さんエピソードっぽさがあると思って。
――「結婚式の日に結婚相手がいない」というのは、作品の舞台となった昭和11年においては、よくある出来事だったんでしょうか。
西香:戦時中だったらあったと思うんですけど、昭和11年にあったかどうかって言われるとちょっと自信はないです(笑)。でもそこはマンガとしての面白さを取るために勘弁してもらおうと思ってます。
――そもそも海軍の話を描きたいと思ったのは。
西香:ある日突然、夜中寝てるときに「軍人さんのマンガ描きたいな」って。
――突如ビビッときたような感じで。
西香:それで軍人さんを描くなら、ちゃんと調べないと、って思って。それでいろんな写真とか見るじゃないですか、昔の人の。そしたら「めっちゃかっこいいな!」って。そうやってズルズルとハマっていきました。
――ある晩の思いつきがマンガになり、それがドラマになるというのはすごいですね。
『波うららかに、めおと日和』担当編集者・福島千尋(以下、福島):でも最初に西香さんから「こういう話を描きたい」と見せてもらったのは、今とはちょっと違う形だったんですよね。時代設定や海軍などの骨子は変わってないんですけど、出てくるキャラクターの感じが少し違うもので
西香:そうですね。元々は新婚の小難しい男女が主役だったんですけど、当時の「コミックDAYS」のチーフから「わかりにくい」とか、そんな感じのことを言われて。たしかに結構キャラが難しいっていうか、動かしにくかったんです。
――そこからどうやって現在の主人公である瀧昌(たきまさ)となつ美(み)の2人が生まれたんでしょうか。
西香:チーフからは「その時代らしいキャラクターを描いた方がいい」って言われた気がします。女の子は控えめなタイプで、男の子はザ・軍人の堅い感じの方がいいって。
――最初に西香先生が描きたかったものから、形が変わっていくことに対しては、何か悩まれたりは。
西香:特になかったです。最初のキャラが動かすのが難しかったので、瀧昌となつ美が生まれたことで話も動き出して。チーフのアドバイスは的確だったなと今は思ってます。
――「海軍士官との結婚生活」というモチーフは、別キャラが主人公だったころから変わっていないんですね。
西香:そうですね。新婚の奥さんの目を通して海軍の紹介とかもしやすいかなと思って。
――「結婚」や「気持ちが通じ合う」といったことをお話のゴールにする作品も多いと思うのですが、『波うららかに、めおと日和』では結婚が物語のスタートです。難しかったことなどは。
西香:難しかったとは、あんまり感じはしない……。結局、出会って、心通わせてっていうところは、結婚していようが、していまいが変わらないかなと思っていて。でも話がワンパターンにならないようにってだけは気をつけなきゃなって思ってます。
福島:恋愛的なことを軸に展開させるような少女マンガ的な作りというよりも、西香さんは『波うららかに、めおと日和』で当時の夫婦の生活や営みみたいなものを丁寧に描いてくださってるなと感じています。
西香:少女マンガといえば、『波うららかに、めおと日和』は、最初「別冊フレンド」編集部に見てもらっていたんです。けど「別フレ」はがっつり少女マンガなので、そもそも海軍ものってどうなの?っていう考えがあって。あとちょっと私が描きたかったものとは相性悪いなと思って。それで「モーニング」編集部の福島さんを紹介してもらったんですよね。(編集部註:掲載は「コミックDAYS」)
――「相性が悪い」というのは。
西香 「別フレ」で描いているときに「少女マンガは、男の子の感情は描かない」って言われて。でも私はできれば男の子の方の感情も描きたかったんです。
――なつ美の気持ちはもちろんですけれども、瀧昌の気持ちもしっかり描かれていますよね。
西香:そうですね。2人の感情が描かれていて、それがすれ違っているのが面白くて好きだったし、自分でも描きたかったので。なので少女マンガの「男の子が何考えてるかわかんない。モヤモヤ」みたいな描き方をしてしまうと、私の方がモヤモヤしちゃうんで。
※1:靖国神社境内に設けられた、戦争に関する史資料などの保存、展示を行う施設。
WACOCA: People, Life, Style.