2013年、包括的な姿勢で知られるフランシスコが、ローマ教皇となった。その期待感は「フランシスコ効果」と呼ばれた。カトリック教会では、信仰が活性化して人々が再び教会の席に戻ってくるだろうという感覚が広がった。

しかし、4月21日に88歳でフランシスコ教皇が死去したことにより、別の「効果」が生まれた。エドワード・ベルガー監督のアカデミー賞受賞作『教皇選挙』を観る人が急増したのだ。この映画は、バチカンで教会の指導者たちが「鍵をかけられた部屋」──つまりシスティーナ礼拝堂──に集まり、次の教皇を選ぶ「コンクラーベ」と呼ばれる教皇選挙のプロセスを描いている。

分析会社であるLuminateのデータによると、教皇の死後、米国における『教皇選挙』のストリーミング視聴時間は、4月20日の180万分から21日には690万分に跳ね上がり、283%の増加となった(編註:日本では現在、映画館で上映中)。Netflixの『2人のローマ教皇』も同期間の視聴時間が417%増加し、29万分から150万分へと大きく伸びた。

現実の出来事と重なる映画

このような数字はある意味、予想されていたことだとも言える。『教皇選挙』は昨年公開され、アカデミー賞で8部門にノミネートされており、脚色賞を受賞した。もともと注目作だったのだ。加えて、実際のコンクラーベが数日後に始まるというタイミングも、関心をさらに高めている。一方、『2人のローマ教皇』は、フランシスコ教皇自身とその前任教皇ベネディクト16世との関係を描いた作品だ。

Luminateの広報担当であるジミー・ハーニーによると、これまでも重要なニュースがあった際に、こうした急上昇が見られてきたという。例えば昨年、共和党全国大会で大統領候補ドナルド・トランプがJD・ヴァンスを副大統領候補に指名した際には、Netflixの『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』の視聴時間が1,180%増加した。昨年、前副大統領のカマラ・ハリスが民主党の大統領候補になる見通しが報じられた際には、女性副大統領を主人公にしたHBOの『VEEP/ヴィープ』の米国での視聴時間が353%増加したという。

理論的には、今後『教皇選挙』の視聴時間はさらに伸びる可能性もある。21日までは、現代のストリーミングにおける複雑な事情により、米国で視聴するにはAmazonプライム・ビデオで6~20ドルのレンタルまたは購入が必要だった。だが22日の早朝からは、Prime会員向けに無料でストリーミング配信が始まった。

“鍵をかけ”投票を実施

フランシスコ教皇の死は世界中のカトリック信者を悲しみに包み、複数の報道機関(『WIRED』含む)が、映画『教皇選挙』のタイムリーさに注目した。この映画では、次の教皇の座を巡る著名な枢機卿たちの攻防が、ドラマチックかつ誇張された形で描かれている。

フランシスコ教皇の葬儀は26日、ローマのサン・ピエトロ大聖堂で執り行われる予定だ。世界各国から枢機卿たちがイタリアに向かっており、その後、彼らは「コンクラーベ(鍵をかけるという意味のラテン語に由来)」に参加する。コンクラーベの間は外部との連絡は一切禁止され、電話やテレビ、新聞、メッセージ送受信などは許されない。80歳未満の枢機卿(252人中135人)が投票権を持ち、次の教皇が選ばれる。

なお、Luminateのデータによると、ほかの教皇を題材にした作品は、いまのところそこまで視聴時間が増えていないという。視聴者たちは再び、カトリック系コンテンツに慣れる必要があるのかもしれない。

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