舞台演劇を通して更生を目指すプログラムと位置付けられる「RTA」。一方、主要キャストの85%以上が実際の元収監者で、「RTA」卒業生および関係者たちの共演で構成される本作から垣間見えるのは、これが単なる“プログラム”ではないこと。そのコミュニティは固く強い絆で結ばれている。「私たちは刑務所で10年以上ともに暮らしてきました。誰よりも長い付き合いです。だからお互いのことをよく知っていて、言葉を交わさなくても異変があれば気づいて『兄弟、どうした?』と声をかけ合う関係性であり、常にお互いをケアし合っています。本作での共演も仕事というより家族の再会のように感じられました」。“家族”という言葉を使うマクリンは、どこか誇り高い表情を見せる。

演技を通して脆さを知り、“強さ”の定義が変わった

撮影セットで対峙するコールマン・ドミンゴ(左)とクラレンス・マクリン(右)

撮影セットで対峙するコールマン・ドミンゴ(左)とクラレンス・マクリン(右)

そんな「RTA」最大の特徴の1つは、再犯率の低さといえるだろう。アメリカ国内において、収監後再び刑務所に戻ってくる人の割合は60%を超えているが、「RTA」卒業生においてはわずか5%未満。シンシン刑務所で最も恐れられた人の1人だったマクリンも、プログラムへの参加を通じて自身のなかで「“強さ”の定義が変わった」と話す。「(プログラム参加前は)常に霧のなかにいるような、地に足がつかない感覚で生きていました。今はしっかりと両足で立っていて、自分がどこにいて誰なのかがはっきりとわかります。こういった“強さ”は内面から育まれるもので、お金で買うことはできません」。新たな“強さ”を手にしたマクリンは過去の自分を回想し、「男性だって泣いてもいいし、さまざまな感情を抱いていい。他者に共感し同情してもいいと理解するまで時間がかかった」と明かす。「刑務所内でこれらの感情は“弱さ”とみなされます。しかしそれも人間の本質の一部だと理解することで、より“強さ”を感じられるようになりました。弱点だと思われるような脆さを受け入れて内面化することが、さらなる強さをもたらしてくれることに気づいたのです」

収監中に偶然居合わせた上演会で、自由に感情を曝け出す俳優たちの姿に衝撃を受け、すぐさまプログラムに申し込んだというマクリン。「舞台の上では自分が表現したいことを何でもできて、泣くこともできるし笑うこともできる。つまずいて転んだりしてもコメディーとして受け入れられる。私が舞台で感情を表現することで、観客および収監者全員に同じことをする“許可”を与えることができます」。例えば、“男らしい”自分が舞台に立つことで観客に、「彼が泣いているんだから、自分も泣いていいんだ」と思わせることができるそう。「これらは人間として当然持つべき自然な感情なんだ、と気づくことで観客の人生に人間味がもたらされるのです」と演劇の持つ力を説明する。

差別の原因は無知と恐れ、だからこそ克服できる

元収監者として刑務所に“戻る”苦悩。映画『シンシン/SING SING』で俳優デビューを果たしたクラレンス・マクリンにインタビュー

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