北米映画興行には思いがけない番狂わせが時々起こる。3月28日~30日の週末ランキングは、ジェイソン・ステイサム主演最新作『A Working Man(原題)』が初登場No.1を獲得。公開2週目のディズニー映画、実写版『白雪姫』を破るという異例の展開となった。

 『A Working Man』でステイサムが演じるのは、元特殊部隊の建設作業員。家族のような存在である上司の娘が人身売買組織に誘拐されたことをきっかけに、思わぬ腐敗と陰謀の世界に足を踏み入れていく。

A Working Man | Final Trailer

 監督は、日本でも話題を呼んだ『ビーキーパー』に続いてのタッグとなったデヴィッド・エアー。脚本・製作はシルヴェスター・スタローンが務め、共演にはデヴィッド・ハーバーやマイケル・ペーニャ、ジェイソン・フレミングという映画ファンのツボを押さえた顔ぶれが揃った。

 週末3日間の興行収入は1521万ドル。『ビーキーパー』の1657万ドルにはやや及ばなかったが、事前の予測を上回るスタートを切った。海外興収は1500万ドルなので、現時点での世界興収は3021万ドル。製作費は4000万ドルと抑えめだから、Amazon/MGM製作ゆえの配信展開も踏まえるとビジネス的には堅実路線だろう。

 Rotten Tomatoesでは批評家スコアこそ52%と渋い数字だが、観客スコアは90%。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreも「B」評価なので、口コミで興行成績をまだ伸ばす可能性はある。何も考えずに観られそうな中規模のアクション映画を求めるファンが確実に存在し、いまやその代名詞といえるジェイソン・ステイサムへの信頼度が相当高いことをうかがわせる結果だ。

 ちなみに『A Working Man』は作家チャック・ディクソンによる小説シリーズの第1作を映画化したもの。スタジオの判断によっては、ステイサムの新たな代表作シリーズが誕生することも大いにありうるはずだ。米Deadlineによると日本公開日は2026年1月2日だというが、現時点で正式な発表はなされていない。

 第2位の『白雪姫』は公開初週に続いて厳しい戦いを強いられており、3日間の興行収入は1420万ドル。前週比マイナス66.4%という下落率は、同じディズニー配給でもマーベル映画のように「初週集中型」と言い切れないぶんさらに苦しい。ただし、例に漏れず一部のメディアやSNSで過剰なネガティブキャンペーンが行われていることも事実。この悪しきループに巻き込まれてしまうと、脱出するのはかなり難しい。

『白雪姫』©︎2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 北米興収は6681万ドルで、世界興収は1億4311万ドル。製作費2億5000~7000万ドルを劇場のみで回収するのは相当ハードルが高そうだが、『ライオン・キング:ムファサ』が予想外の粘り強さによって勝利を収めたこと、女の子・女性をメインターゲットにした大作映画がしばらく登場しないことを鑑みると、可能性が完全に潰えたわけではない。

 最大のライバルは、いよいよ今週金曜日に北米公開が迫った『マインクラフト/ザ・ムービー』だ。ワーナー・ブラザース配給の同作は、チケットの前売りセールスが今年公開のPG指定映画として最高の数字を記録。言わずもがな『白雪姫』以上の成績で、若年層の男女から大きな注目を集め、初週6000万ドル超えの好発進が期待されている。

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