日本映画脚本賞:阪本 順治「せかいのおきく」【2023年第97回キネマ旬報ベスト・テン(17)】

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「2023年第97回キネマ旬報ベスト・テン」の日本映画脚本賞は「せかいのおきく」の阪本 順治監督が受賞しました。

【阪本 順治監督について】
【大阪から世界へ、視野を拡大させる骨太の男】大阪府堺市の生まれ。生家の向かいが映画館だったことから、幼少より映画に親しむ。横浜国立大学在学中、石井聰亙監督の「爆裂都市/BURSTCITY」(82)に美術スタッフとして参加、これをきっかけに映画の現場と関わるようになる。その後、川島透監督の「竜二」や井筒和幸監督作品の撮影現場に参加し、助監督、製作担当、脚本などさまざまな経験を積んだ。
その一方で大学は中退し、16ミリ、35ミリで自主製作を続けた。時代が昭和から平成に変わった1989年、プロデューサー・荒戸源次郎と組んだデビュー作「どついたるねん」が完成。“浪速のロッキー”と呼ばれた赤井英和の生き様をそのまま描き出したようなボクシング映画は評判を呼び、ブルーリボン賞作品賞やキネマ旬報ベスト・テン第2位など、多数の映画賞を受賞。映画館ではなく、この映画のために作ったドーム型テントでの上映という話題性もあり、華々しいデビューを飾った。この成功により荒戸とのコンビが「鉄拳」(90)、「王手」(91)、「トカレフ」(94)と続く。大阪を舞台とした“新世界三部作”が「ビリケン」(96)で完結したのち、再び脚光を浴びたのが2000年公開の「顔」。初の女性主人公の映画となったこの作品は、キネマ旬報ベスト・テンで評論家・読者選出ともに第1位を獲得したほか各映画賞を独占、この年を代表する作品となった。02年には、韓国の政治家が日本で拉致された“金大中事件”を題材とする「KT」をベルリン国際映画祭に出品。
その後も、日本の安全保障の問題を扱ったアクション大作「亡国のイージス」(05)で興行収入20億円のヒット、「闇の子供たち」(08)ではアジアの幼児買春・臓器売買を告発するなど話題作を次々に手がけ、第一線で活躍を続けている。【力強さを基本に、視野を広げる】「どついたるねん」の成功もあって、初期はその路線を受け継ぐ作品が多い。勝負にかける男の生き様を力強い演出で描くスタイルはこの頃に確立。当初はひとつの町や都市を舞台にした物語が多かったが、ロードムービー「傷だらけの天使」(97)あたりから次第に世界観設定を拡大させ、2000年代に入るとエンタテインメントの要素に社会性を取り入れるようになった。その題材も大阪の一人のボクサー物語から始まり祖国防衛論へ、さらに日本を飛び出してアジアの倫理へと広がりを見せ、身の回り半径数メートルの私小説的世界をモチベーションとする作品が流行するなか、徐々にスケールと視野を広げていく骨太な作家として注目されている。

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【映画「せかいのおきく」について】
22歳のおきく(黒木華)は、武家育ちでありながら、今は貧乏長屋で父・源兵衛(佐藤浩市)と二人暮らし。毎朝、便所の肥やしを汲んで狭い路地を駆ける中次(寛一郎)のことをずっと知っている。ある時、喉を切られて声を失ったおきくは、それでも子どもたちに文字を教える決意をする。雪の降りそうな寒い朝。やっとの思いで中次の家にたどり着いたおきくは、身振り手振りで、精一杯に気持ちを伝えるのだった。江戸末期、おきくや長屋の住人たちは、貧しいながらも生き生きと日々の暮らしを営む。そんな彼らの糞尿を売り買いする中次と矢亮(池松壮亮)もまた、“臭い、汚い”と罵られながらも、いつか読み書きを覚えて世の中を変えてみたいと、希望を捨てずにいた。

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