ページをめくると次々に登場するおいしそうなものたち。食に対して三者三様のこだわりを持つ筆者たちが魅了された「おいしいもの」って、いったいなんだろう?

 

 

池波正太郎 「食卓の情景」 (新潮文庫)

『鬼平犯科帳』『剣客商売』などを手がけた、日本を代表する小説家、池波正太郎。幼少期を過ごした戦前から作家として花開く戦後までの記憶を、食べ物の思い出を交えながらたどるエッセイ。令和の現代とは異なる食の在り方や日々の暮らしの情景が、ありありと浮かんでくるような一冊。著者が自ら描いたという挿絵の数々も味わい深い!

 

 

『長命寺桜もち山本や』の桜もち

筆者のもっとも好きな菓子として登場。1717 年の創業から300年以上経った今も、桜もちひとすじで変わらぬ味を守り続けている。お店があるのは隅田川沿い。散歩がてら歴史が詰まった逸品を味わいたい。

 

 

 

貴田庄 「小津安二郎美食三昧 関東編」 (朝日文庫)

『東京物語』などを手がけた日本映画の巨匠、小津安二郎。彼の手帳や日記をもとに、生前愛したお店をエピソードとともに巡るエッセイ。食事はほぼ外食だったというグルメな監督の行きつけは、今も賑わいを見せる老舗の名店ばかり。敷居の高さに物怖じしてしまいそうになるが、日本を代表する文化人のお墨付きとあれば勇気を出して訪れてみたい。

 

 

『お座敷天ぷらおかめ』の煎茶の天茶漬け

天ぷら好きの小津監督が特に懇意にしていたお店が、1946 年創業で完全予約制の『お座敷天ぷらおかめ』。小津監督自身が提案したという「煎茶の天茶漬け」は、コースの締めとして今でも味わうことができる。

 

 

 

 

onKuL vol.20(2024年4月売号)より。

illustration:Nobuko Uemura
edit:Moe Shibata
text:Kaede Okuzumi
re-rdit : ONKUL

 

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