#地味で華がないのに、なぜか見入ってしまう刑事ドラマ――青木るえか「テレビ健康診断」
北大路欣也 ©文藝春秋 捜査中の事故で下半身不随となった刑事は、その人知を超えた記憶力・推理力によって犯罪者を追い詰める……と聞くとどんなサイコ・サスペンスか、『鬼警部アイアンサイド』か『おしどり右京捕物車』か、頓狂なトンデモドラマか、と思うのだが見てみるとこれがぜんぜんそんなことはない『記憶捜査~新宿東署事件ファイル~』。 ジミ。画面に華がない。これは悪口ではなくて、今どきのテレビドラマの「華」って、わかりやすいサイコパスがカッコつけて登場したり、J-POPが無関係に鳴り響いたり、超未来っぽいオフィスあるいは大正ロマンみたいな事務所が舞台とか、大人気の俳優(星野源クラス)が出るとか、そういうものがフラッシュライトのように画面に炸裂する。それが「華」。そういうのが鬱陶しくてしょうがなかったが、『記憶捜査』にそんなものはない。 なんというか、再現フィルムっぽいんです。 警察ドラマだから事件が起きる。その事件も派手さはなく、人は死ぬものの、原因は社会性のあるジミなもの。ベトナム人実習生のノービザ問題、老人を騙して無駄な商品売りつける銀行員(その行員もノルマに苦しんでる)……どうですこの地に足のつきっぷりは。
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