妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちの本当の苛立ち、あふれんばかりの悩みとは? 専門家の解説を元に、リアルな事象に切り込んでいく。それが『女たちの事件簿』

4月の新学期がスタートし、各地の学校で保護者会が開かれている。学年によって語られる文脈は異なるが、子どもの進路と直結する「お金」の話は、どの世代の保護者にとっても最大の関心事だ。

少子化は加速の一途をたどり、昨年度の出生数は68万人を下回る見通しだ。減少する子どもたちにいかに学びの機会を保障するかは、喫緊の社会課題となっている。

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危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、現在の公的支援についてこう整理する。

「令和元年から始まった幼児教育・保育の無償化に加え、2025年4月からは、扶養する子どもが3人以上いる『多子世帯』を対象とした大学・短大・専門学校の授業料・入学金の無償化(所得制限なし)が始まります。また、東京都など一部自治体では高校授業料の実質無償化も所得制限が撤廃されるなど、公的支援の枠組みは着実に広がっています」

しかし、平塚氏は「無償化の言葉だけに踊らされてはいけない」と釘を刺す。

「拡充は喜ばしいことですが、現実には無償化の対象外となる『見えない支出』が膨大にあるのも事実です。親がいかに正確な情報を得て、長期的な視点で教育費を運用していくかが問われています」

今回お話を聞いたのは、まさに教育費の資金繰りに戸惑いを隠せない細川典子さん(仮名・50歳)。私立進学校に通う高校2年生の娘を持つ母親だ。新学期早々の保護者会で突きつけられた現実に、戦々恐々としている。

「授業料の実質無償化があったからこそ私立を選びましたが、実態はかなり厳しいです。就学支援金の還付時期は遅く、それまでは立て替えが必要です。さらに私立は施設費や教材費などがべらぼうに高く、毎日が綱渡り状態です」

典子さん夫妻が私立進学を認めたのは、ひとえに「学歴」への期待からだった。

「日本は依然として学歴社会。娘には名の知れた大学に行ってほしいという思いが強いんです」

しかし、保護者会で進路指導担当者が放った言葉に、典子さんは愕然とした。

——人気の私大文系を目指すなら、塾代、受験料、入学金、前期納入金を合わせ、少なくとも300万円は手元に用意しておいてください。理系ならそれ以上です。国立も激戦で、滑り止めの私大への納入金を含めると、決して安くはありません。

「なんとなくお金がかかるとは思っていましたが、300万円という具体的な数字を突きつけられ、言葉を失いました。娘の友人はすでに塾に通い始め、月3万円、夏期講習などの特別授業を含めれば年間で数十万円が飛んでいくそうです」

さらに典子さんを悩ませているのが、近年主流となっている「総合型選抜(旧AO入試)」の存在だ。

「総合型も検討していましたが、その対策特化塾は100万円を超えるケースもあると聞きました。先生からは『難関私大の総合型は非常に狭き門』とも言われ、名の知れた大学への切符がいかに高額で険しいものかを思い知らされました」

典子さん夫妻は共働きだが、下にはまだ中学生の息子も控えている。

「私たちの年収で、背伸びをして私立に通わせたのは間違いだったのか……。都立に行かせていれば、もう少し余裕があったんじゃないか…と後悔ばかり。娘には華やかなキャンパスライフを送らせてあげたいけれど、プランはかなりシビアにならざるを得ません。今はただ、呆然としています」

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※本記事で使用している写真はイメージです。

【取材協力】危機管理コンサルタント|平塚俊樹氏 【聞き手・文・編集】矢口頼子 PHOTO:Getty Images 【出典】文部科学省|高校生等への修学支援

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