「麻辣燙(マーラータン)」と大きな字で書いてある赤いカップ麺をコンビニやスーパーでよく見かける。販売しているのはさいたま市に本社を置く医食同源ドットコム。サプリメントやマスクを主力とするメーカーだったが、麻辣燙が1年半で1300万食も売れ今や看板商品に。大ヒットの勢いを借り、都内にマーラータンの飲食店までオープンした。
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中国スタッフが本場の味追求
まずはカップ麺を実食した。開封時に漂ってくる香辛料の香りが中国で売られているカップ麺そのもので、中国に滞在経験がある人であれば懐かしく感じるはずだ。火鍋要素も感じられる麻辣スープは辛さも含めて本場の味。
1300万個売れた麻辣燙カップ麺、カップ麺のヒットで袋麺も発売した(医食同源プレスリリースより)
医食同源ドットコムの主力事業はサプリメントやマスクなどの製造販売だったが、マーラータンの開発は、中国出身の同社開発部メンバー張さんの「本場中国の味を日本人にも食べてほしい」という思いから2021年に始まった。中国現地のスタッフと開発を進め、マーラータンブームが盛り上がってきた2024年9月に発売された。
張さんは「中国の味も四川式や東北式など多様なので、中国現地で販売されている他社の商品を食べ比べて味の方向性を決めるところからスタートしました。その後、日本人にも受け入れられるよう味の調整を何度も行なったことがヒットにつながりました」と語る。
EC販売からスタートし、とあるスーパーマーケットで試験的に取り扱ってもらったところ、マーラータンブームの追い風を受けて好調な売れ行きを見せたため定番化。大手コンビニエンスストアでの販売も決まり一気にブレイクした。
マーラータンブームにうまくはまった
マーラータンは日本では「麻辣湯」という漢字が使われることが多いが、同社のカップ麺の商品名はあえて中国語そのままの「麻辣燙」。マーラータンの認知が広がる中で、際立つガチ感が人気の理由かもしれない。
普通の日本人にとっては少し辛すぎるからか、SNSではチーズや牛乳などをちょい足しして辛さをマイルドにするアレンジ投稿がよくされているそうだ。残りのスープを鍋に移し替えて野菜や春雨を加え、もう1食おかわりマーラータンを作ったり、ご飯や卵をいれてマーラー雑炊にして食べたりするアレンジもアリではないかと感じた。
マーラータンカップ麺は今年3月10日までに約1300万食を出荷、それまで売り上げのほとんどを占めていたマスクに取って代わる同社の看板商品に成長した。マーケティング担当の大山さんも、これほど爆発的なヒットになるとは思ってもみなかったそうだ。
同社は麻辣燙のヒットを受け、「中華房」シリーズとして新商品を次々に発売、同シリーズは食品カテゴリが売り上げの3割ほどを占めるまでになった。3月には醤油や花椒塩スープのシンプルな具無しカップ麺「スー麺」を投入し、4月にはトマトベースのスープを使ったマーラータンカップ麺を発売する。
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実店舗運営の戦略は?
医食同源は2月末、実店舗「中華房 麻辣燙」を東京・吉祥寺にオープンした。
ショーケースから具材を選んでボウルに取り、重さによって値段が決まるというシステムは他のマーラータンの店と同じ。スープの味はカップ麺よりも薬膳感が強く感じられる。牛骨ベースのスープを使用し、ミルキーなまろやかさの楊國福と薬膳やスパイスの風味を強く感じる七宝の中間のような味わいだ。細い春雨を使ったさつまいも麺はカップ麺と同じで、小麦の中華麺なども選べる。

好きな具材を選ぶシステムは、他の店舗と同じ
カップ麺で既に認知度が高まっているからか、店内は若い女性が大半を占めておりSNSの影響力の高さを感じた。
楊國福や七宝、その他中国系や韓国系、アレンジ系マーラータンがしのぎを削る中、あえて実店舗を出す狙いはどこにあるのか。
大山さんによると客から直接フィードバックを受け、今後の商品開発につなげる場として、飲食店を開いたという。
スープは薬膳感をより強く感じる
マーラータンの魅力の一つは、アレンジの可能性が無限にあること。
カップ麺ではアレンジもチーズなど「ちょい足し」がメインだが、実店舗であれば、具材のチョイスや辛さのレベル、主食となる麺の種類の選択も自由自在だ。スープも胡麻だれ(芝麻醤)や辣油(ラー油)、おろしにんにくを入れたり広くカスタマイズできる。実店舗で自分が好きなアレンジを見つけて、自宅でカップマーラータンを食べる際に再現することもできるようになる。
実店舗とカップ麺の両輪によって、コアなファンの獲得や定着化につながるのかもしれない。
最近はマーラータンのお店が増えすぎて、飽和気味にも思える。ブームの中心にいるのは若い女性であり、彼女たちの動向次第ではマーラータンバブルの崩壊も考えられる。大山さんは「時代に合わせて変化していくしかないと考えている」と話す。
マーラータンも多様化が進み、トムヤムスープやトマトスープなどスープの種類を増やしたり、逆に汁無しマーラータン(麻辣香鍋)を提供する店も出てきた。医食同源が運営する「中華房 麻辣燙」のマーラータンは1種類のスープのみだが、スープや具材の選択肢を増やすことも検討している。
将来はカップ麺として売られている「酸辣燙」やスナック菓子の「麺ピー」が店舗で食べられるようになったり、はたまた同社のサプリメントが体験できる場になっているかもしれない。
中国外食チェーン、日本進出後の勝敗は?ーー<マーラータン・火鍋>編
(文:阿生)
東京で中華を食べ歩く会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。X:iam_asheng

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