テキサス州にあるエンタジー社の施設。Bloomberg/Getty Imagesアメリカの電力会社は2030年までに、設備投資に1兆4000億ドル(約224兆円)を投じる計画であることが、パワーラインズの調査で分かった。アメリカの電力業界では、AIによる電力需要の増加が支出拡大の要因となっている。デューク・エナジーやサザン・カンパニー、アメリカン・エレクトリック・パワーは、特に支出規模が大きい電力会社である。
AI(人工知能)競争における大口の支出者は、大手テック企業だけではない。
アメリカでは、AIの電力需要に対応すると同時に老朽化した電力網の近代化を進める中で、電力会社による発電所や送電線への投資が過去最高水準に達している。
消費者教育を行う非営利団体であるパワーラインズ(PowerLines)の新たな報告書によると、民間電力会社は、2030年までに、設備投資に1兆4000億ドル(約224兆円)を投じる見通しだという。
今後5年間の電力会社による支出見通しは、業界が過去10年間に投じた1兆3000億ドル(約208兆円)を上回る規模となっている。
AIの学習や運用にはデータセンターで膨大な電力が必要とされており、全米の電力会社は、こうしたデータセンター向けの需要に対応するため、大規模なインフラ整備が不可欠になるとの見方を示している。
パワーラインズが電力会社51社の決算説明会を分析したところ、支出の増加は一部の主要企業に集中していることが明らかになった。
デューク・エナジー(Duke Energy)は2030年までに設備投資として1022億ドル(約16兆3520億円)を投じる計画で、アメリカの民間電力会社の中で最も大きい規模となる見込みだ。デューク・エナジーはフロリダ、インディアナ、オハイオ、ケンタッキー、ノースカロライナ、サウスカロライナで電力を供給しており、いずれもデータセンターの増加によって電力需要が高まっている。
サザン・カンパニー(Southern Company)も812億ドル(約12兆9920億円)を投じる計画だ。同社はアメリカ南部の複数州でデータセンター向けの電力供給を担っており、アラバマ州ハンツビルのメタ(Meta)の施設や、ジョージア州で拡大するマイクロソフト(Microsoft)のネットワークにも対応している。
アメリカン・エレクトリック・パワー(American Electric Power:AEP)は、2030年までに720億ドル(約11兆5200億円)を投じる計画だ。同社は2025年、オハイオ州で提案した電力料金制度をめぐりデータセンター業界と対立した。規制当局は2025年7月、AEPオハイオの電力網に接続するデータセンターに一定の費用負担を求めるこの制度を承認している。
アメリカでは、民間電力会社は、巨額のインフラ投資の費用を電気料金に上乗せするため、州の規制当局の承認を求めることが多い。
2026年に公表されたパワーラインズの報告書によると、電力・ガス会社は2025年に、電気料金の引き上げとして310億ドル(約4兆9600億円)規模の申請を行っており、2024年の2倍超に達している。
こうしたビジネスの進め方をめぐり、AIブームの費用を誰が負担すべきかについて、全米で激しい議論が広がっている。
2026年3月4日、マイクロソフト(Microsoft)やメタ(Meta)、OpenAIなどのテック企業は、データセンターの電力コストを理由に、一般の電気料金が引き上げられるのを防ぐことを目的とした自主的な規制であるドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の「電力料金負担者保護誓約(Ratepayer Protection Pledge)」に署名した。

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