サロン専売品メーカーの新製品発表会を取材する中で、近頃よく耳にするキーワードが「軽い艶」だ。オイルやバームでつくるウェットで重ための質感が一巡し、軽やかな艶を再現する手段として、各社はスプレーやジェルオイルといった剤型を新たに提案している。各社の動向や開発意図からは、軽やかでありながらも艶のある質感を求める美容師、ひいては消費者のニーズが見えてくる。

「ニゼル」は
“加工フィルター級”の艶

美容室専売メーカー大手のミルボンは3月12日、スタイリングブランド「ニゼル(NIGELLE)」から約12年ぶりに新製品を発売した。ラインアップは“ミラー フィルター”(180g、2420円)、“エアリー フィルター”(180g、2420円)、“ストップ フィルター”(180g、2420円)のスプレー3種。セット力と艶感のバランスで差異を持たせている。

約12年ぶりのアプローチとしてスプレーを選択した背景には、共同開発を担った「コア(COA)」の小西恭平スタイリストの熱望がある。小西スタイリストは美容学生時代からスプレーを愛用していたが、昨今はスプレーの新製品が少なく、満足度の高いスプレーに出合えていなかったという。自分で理想を追求したいと協業につながった。

製品のポイントは“加工フィルター級”の艶感だ。SNSが普及した日常生活において、AI加工やフィルターを通した画像が身近な存在となり、そうした画像越しに見るような美しい艶感への憧れをかなえるアイテムとして展開する。中でも“エアリー フィルター”は、軽やかな艶とふんわりとした動きを両立する設計で、重ためのウェット質感とは異なる方向性を明確にしている。

新生「モノーク」から
スプレーとオイルジェル

「モノーク(MONOQU)」は、1955年創業の老舗サロン専売メーカー、三口産業が2025年2月に立ち上げたブランドだ。第1弾は“オイル”“バーム”“オイルジェリー”の3種、第2弾は“ウォータージェル”“バームワックス”の2種を発売。6月15日には第3弾として、スプレー“グロスフォグ”(120g、2640円)と“オイルジャム”(100g、3520円)のスタイリング剤を投入する。

新たに展開する2種は、朝の時間にタイムパフォーマンスを求める層への対応も意識した。また、髪に艶が欲しい一方で、作り込みすぎたスタイルは今の気分ではないという髪の質感トレンドも意識して設計している。

同社の藤原修マーケティング部部長は昨今のスタイリング剤は「形から質感の設計への明確な変化がある」と指摘する。そういった質感の形成に、スプレーといった剤型への注目が集まっているのではと分析する。

アリミノは
“新感覚ジェリー”に着目

アリミノが展開するヘアケアブランド「スプリナージュ(SPRINAGE)」は26年1月、ケアとスタイリングを同時にかなえる“シアーグロス ジェリー”(80g、3190円)を発売した。「ヘアケア&スタイリングをかなえる新感覚ジェリー&オイル」と位置付けており、内側から潤って柔らかく揺れ動く艶を演出するスタイリング剤として提案している。

同アイテムは、スキンケア感覚で使えるスタイリング剤への関心の高まりや、若い世代の美容意識、タイムパフォーマンス志向に着目して開発した。同社によると、消費者やサロンが求める髪の質感は「軽めの質感」へ移行しており、「重たいオイルだとパーマがだれる」「軽やかな質感で艶を出したい」といった声もあったという。

スタイリング剤にケア要素を加えることが前提になりつつある中、現在差異化の軸になっているのは質感設計だ。重さや軽さ、艶、まとい方、空気感。そうした細かな違いに応じて、スプレーやジェリー、オイルジェルといった剤型が広がっている。剤型の多様化は各社の開発努力の結果であると同時に、生活者が髪の仕上がりをより細かく捉え、求める質感に応じてスタイリング剤を選ぶようになってきたことの表れとも見ることができる。

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