米国とイランの協議は合意に至らず、トランプ米大統領はホルムズ海峡封鎖を表明しています。イランは「2、3の相違があるが交渉は継続」と示唆する一方、米国はホルムズ海峡の即時開放や核開発の放棄を求めており、両者には隔たりがあるようです。当面は、ホルムズ海峡での偶発的な衝突リスクや交渉関連のニュースが市場心理を左右しそうです。ただ、原油先物カーブを参考にすると、遅かれ早かれ緊張が一服するとみるのが、依然として合理的です。今後も、4月25日の米大統領の記者向け食事会や、5月14〜15日の米中首脳会談など、節目となるイベントは多くあります。
「ハイリスク・ハイリターン」局面では、リスクテイクの対価は相応にあるとみていました。ただ、2026年4月8日の2週間停戦を受けて株価が急伸した後は、石橋をたたいてリスク資産に投資しても高いリターンは望めません。3月初旬にすべてのリスク資産を売り、4月7日終値で買い戻すことは理論上は可能ですが、現実的ではありません。継続投資や時間分散の重要性を再確認すべきです。なお、仮に停戦が破棄されれば、「ハイリスク・ローリターン」となりえます。地政学問題がすべて解決するのを待って投資判断しても、効率的市場において高いリターンを期待するのは、そもそも難しいです。もっとも、停戦が順調に進めば、「ミドルリスク・ミドルリターン」の芽はあります。過去例では、停戦の3〜4週間前から停戦日にかけてS&P500やTOPIX(東証株価指数)が平均3〜4%上昇し、停戦後1年間でさらに平均10%前後上昇する傾向がみられました。
株式市場は試行錯誤の繰り返しで、今後も予断を許しませんが、平均的には景気や政治を先読みします。地政学ニュースに一喜一憂するより、遅かれ早かれイラン情勢は収束するとの大局観を軸に、時間分散しながら押し目買いを進めるのが適切だと引き続き考えます。情勢正常化に伴い、TOPIXは3,800近辺、日経平均は57,000円近辺へと水準訂正が進みやすいと引き続き想定しています。原油高騰の一服とともに、「G>R(名目経済成長率>名目長期金利)」、2026年度の2桁増益、株数減による株高ストーリーが軸となりやすいとみています。
データから浮かび上がる投資家ポジションも示唆に富みます。3月以降のリバーサル相場でも、信用倍率ファクターや外国人投資家保有比率ファクターなどに異変はみられず、日本株アクティブ投信のベータ(感応度)は2月末以降、1超を維持しています。4月6日公表の4月QUICK株式月次調査の人気セクターをみると、ポートフォリオのコア部分は2月末から4月初旬にかけて大きく動いていないとみなせる内容でした。総じてみると、「地政学リスクに一喜一憂せず、AI需要やリフレーション(緩やかな物価上昇)の恩恵を受けるセクター・銘柄を軸にしたポートフォリオを大きく動かす必要はない」という投資行動は、結果的に正しかったと考えられます。
一方、原油高への対応として、企業・家計部門のダメージを政府が補助金などの財政措置で和らげるという構図は、今後も意識されやすいとみられます。10年債利回りは2.4%台と27年ぶりの高水準を記録し、金利・株の相関関係では「金利上昇・株安」のパターンも増えるなど、長期金利上昇のマイナス面も議論されやすくなっています。ただ、3%台を維持する名目GDP(国内総生産)成長率が長期金利を上回る「G>R」局面は、大枠では継続しています。こうした局面では株式が堅調になりやすい傾向があります。景気拡大も継続する見込みであることから、株式が債券に比べて堅調との大局観を引き続き重視します。こうした局面ではバリュー(割安)が優勢な一方、サイズや内需・外需で大きな差は出にくいです。
(注)1980年以前の名目GDP成長率は68SNA数値。
(出所)内閣府、IMF、JPX総研、ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成
トップダウンの観点では、銀行セクターを1月以降、注目セクターから外していましたが、長期金利上昇に対する相対株価の出遅れ感が徐々に注目できるようになっています。一方、1月以降にタクティカルな観点で注目していた保険セクターは、3月以降に大きくアウトパフォームしたため、さらなるアウトパフォームは徐々に期待しにくくなった可能性があります。
バリューの相対株価も足元では堅調ですが、長期金利上昇とおおむね連動しており、全体でみると出遅れ感はありません。今後も、長期金利次第という自律性に欠ける展開になりやすいとみています。4月9日は、長期金利の低下に伴い、バリューが大きくアンダーパフォームしました。
不動産セクターは、トップダウンの観点から2月以降、注目セクターから外していましたが、長期金利上昇の悪影響は相応に織り込んだともいえます。東証REIT(不動産投資信託)指数のアンダーパフォーム傾向も、長期金利上昇の悪影響を反映したものといえます。金利上昇圧力を跳ね返す賃料引き上げや物件価値向上力(インフレ対応力)という着眼点では、大手不動産ディベロッパーがREITより優位だと、ストラテジーの観点からみています。
(編集:野村證券投資情報部)
編集元アナリストレポート
Japan Macro Report – 米イラン「停戦合意」と各市場シナリオの確認(2026年4月10日配信)
Quick Note – 日本株朝メモ:米・イラン早期停戦期待は後退 – 週初はリスクオフでスタートも、交渉は継続か(2026年4月13日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。
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