妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちの本当の苛立ち、あふれんばかりの悩みとは? 専門家の解説を元に、リアルな事象に切り込んでいく。それが『女たちの事件簿』

4月。新年度を迎え、職場には新入社員の姿があります。初々しいスーツ姿が街に増えるこの季節、その指導に頭を抱えているという管理職や指導係は多いのではないでしょうか。

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かつては「当たり前」とされたことが通じなくなり、ハラスメントへの過度な警戒が上司の口をふさぐ——そんな時代になりつつある今、それでも新入社員たちと向き合い続けている、現場の声を取材しました。

厚生労働省が毎年公表する「個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、職場における「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は54,987件。令和4年度には8万9千件を超え、全相談項目のなかで最多となっています。ハラスメント防止が叫ばれる一方で、正当な指導まで萎縮してしまう管理職の苦悩は深まるばかりです。

危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう指摘します。

「職場でのハラスメント防止は重要な課題です。しかし、正当な業務指導とハラスメントは本来、明確に区別されるべきものです。ハラスメントという言葉が独り歩きし、指導自体を諦めてしまうケースが増えると、新入社員の成長の機会も、職場の秩序も失われてしまいます。管理職が萎縮する職場環境は、結果として誰にとっても不幸な結末を招くことがあるのです」

幸田慎吾さん(仮名・49歳)は、メーカーに勤め、ここ数年は新人研修を担当していると話します。価値観の変容に置いていかれないよう必死に対応しながらも、どこか虚しさを覚えるといい……。

「挨拶もできないなんて社会人失格だよと先輩に言われ、翌日から来なくなった新人が今年もいます。遅刻は初日から始まり、日ごとにひどくなっていく。にもかかわらず、スタバを手に持ったまま遅れてくる姿に、どうやって注意したらいいのかと頭を抱えます。強く言ったらダメだと会社は言いますが、じゃあ、子どものように諭せばいいかと言われるとそれも違うような…」

普通にできる子もいると慎吾さんは言います。

「ただ、その差が極端すぎて。何度言ってもダメな子とすぐになんでもできる子。真ん中が抜け落ちているようにも思えます」

世知辛い世の中になったと苦笑いしながらも前を向く慎吾さん。そんな折、開かれた歓迎会。参加は任意としたが新入社員の6割が集まり、1次会の後に数人から「もう少しお話を聞きたいです」と声をかけられ、それならと2次会に向かったという。

新入社員3人と30代の部下を連れて馴染みのバーで開催された2次会は盛り上がり、ここは!と慎吾さんは全額を自身で支払ったそう。

「解散後すぐに30代の部下からは感謝のメッセージが届きました。ありがとうと言われるために奢ったわけじゃないけれど、嬉しいですよね。新入社員から?もちろん何の連絡もありません。もう慣れっこですよ」

しかし、この後慎吾さんが目にしたのはあまりにも残酷な新入社員の本音だったと言います。

「後日、顔を合わせても感謝はありませんでしたが、ここ数年こんなことはザラなので、気に留めていなかったんですが、新入社員のひとりがSNSに歓迎会の様子をアップしているのを見つけてしまったんです。

そこには私を『かわいそう笑』と揶揄する言葉が書かれていて…。上司をイジってるという感覚より、SNSのいいね稼ぎ、承認欲求のほうが大事なのかもしれませんね。さすがに注意をすべきか悩んでいます」

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※本記事で使用している写真はイメージです。

【取材協力】危機管理コンサルタント|平塚俊樹氏 【聞き手・文・編集】

山本康裕 PHOTO:Getty Images 【出典】厚生労働省|「個別労働紛争解決制度の施行状況」

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