料理家としてだけでなく、インテリアデザイナーとしても活躍している行正り香さん。東京国立博物館のアンバサダーとして、館内のカフェ・レストランのインテリアをサポート。数々の家のリノベーションも手掛けています。また、北欧渡航歴30年以上、デンマーク親善大使に選ばれたりするなど北欧との縁が深い方としても知られています。
そんな行正さんが改めて、北欧のインテリアが素敵な理由は何なのかを伝えたいと、新刊『照明と家具からはじめる 北欧インテリア』を上梓しました。今回は、本書から「ペンダントライトの正しい位置」についてのページをご紹介します。
たくさんの現地の実例から、「幸せな国々」と言われる北欧インテリアのリアル、家具と照明の選び方などを解き明かします。A 5判型192ページ/講談社刊
そのペンダントライトは高すぎる。「テーブルから60㎝」が正解でした
北欧の照明文化を語るうえで、欠かせない存在のひとつが「ペンダントライト」です。世界には華やかな照明器具が数多くありますが、北欧におけるそれは、装飾のための存在ではありません。シャンデリアが“空間を飾る光”だとすれば、北欧のペンダントライトは“冬の暮らしを支える道具”。人の表情をやさしく照らし、太陽の代わりのように心を温める光として育まれてきました。
その哲学を象徴するのが、デンマークの照明デザイナー、ポール・ヘニングセンが母親のためにデザインした「PHランプ」。舞台女優だった彼の母は、裸電球のまぶしさに悩んでいました。そこでヘニングセンは、光源が直接目に入らないよう、多重シェードによって光をやわらかく分散させる構造を考え出したのです。
PH2/1のテーブルランプ。折り重なるシェードによって光源は内部に隠れているため、照明器具自体が空間をふんわり包み込むように存在します。
コペンハーゲンのカフェの写真。多重シェードを用いたペンダントライトの傑作といえばこちら、PHアーティチョーク。複雑に重なり合ったシェードの合間から、やわらかい光が降り注ぎます。
ヘニングセンはさらに、「ペンダントライトはテーブル面から60~70㎝の高さに吊るすのが理想」とも語っています。その位置に光があると、料理や器はもとよりテーブルを囲む人の肌が美しく見え、会話の空気も自然と穏やかになると。私たちが思っているよりも光はずっと低い場所にあっていい――その発想自体が北欧的です。
フィン・ユール邸のダイニング。クラシックな雰囲気にあったデザインのペンダントライトがかなり低い位置に吊り下げられていることがわかります。黄色みの強い壁、オレンジがかった色の天井も外光を受けて反射し、空間にぬくもりのある明るさをもたらしています。
「ペンダントライトはテーブル面から60㎝くらいの高さに」。
インテリアの仕事でお客様の家にペンダントライトを吊るすたびに、この言葉を思い出します。光の高さを変えるだけで、暮らしの空気は驚くほど変わります。
ぜひ暮らしに寄り添う“低い光”を、体験してみてください。
*新刊『家具と照明からはじめる 北欧インテリア』では、部屋ごと(リビング、ダイニング、トイレほか)の照明術、電球の選び方などもご紹介しています。
「働く」の前に「暮らす」が大事。北欧インテリアの決定版!
☑︎ インテリアは照明で完成する
☑︎ 「家具からインテリアを考える」発想
☑︎ 北欧で人気の「Japandi(ジャパンディ)」とは
☑︎ “自分価値”のある家具の選び方
☑︎ 幸福度の高い暮らしのリアル
北欧の国々のインテリアが素敵な理由と、彼らの幸福度が高い理由の源は同じ。それは、「働く」の前に「暮らす」が大事な人たちだから。元デンマーク観光大使の著者が現地の最新実例から読み解く、いま北欧インテリアを取り入れたい人が知っておきたい基本の1冊です。
『照明と家具からはじめる 北欧インテリア』
行正り香 著
A5判型192ページ 1800円(税別)
2026年4月16日発売
行正り香
ゆきまさりか/料理家、インテリアデザイナー。福岡県出身。UCバークレー卒業。デンマーク親善大使に選ばれるなど、北欧のインテリアに造詣が深く、インテリアコーディネーターやリフォームプランナーとして多数の家作りに携わる。30冊を超える料理本のほか、家作りに関する著書『行正り香のインテリア』『行正り香の家作り』もロングセラーとなっている。探求学習・英語スピーキング学習教材「なるほど! エージェント」の開発も手掛ける。2023年、東京国立博物館のアンバサダーに就任。館内のレストラン・カフェの照明ディレクションもサポート。
文/行正り香
撮影/富野かりん
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