妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちの本当の苛立ち、あふれんばかりの悩みとは? 専門家の解説を元に、リアルな事象に切り込んでいく。それが『女たちの事件簿』
厚生労働省の令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査によると、過去3年間で相談があった事例のうち、カスタマーハラスメント(カスハラ)に該当する事例があった企業は86.8%にのぼります。さらに、件数が増加していると回答した企業が23.2%と増加傾向にあり、客に対して声を上げることが難しい現場の実態が、数字ににじみ出ています。
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こうした状況に、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう指摘します。 「マナーとは本来、明文化されていなくても、相手への配慮として自然と身につくものです。しかし近年は、書いていなければやってもいい、という解釈が広がっています。特に飲食を伴う店舗では、衛生面や商品へのリスクも伴うため、店側が過剰なほど注意書きをしなければならない現状は、社会全体のマナー意識の変化を映し出していると言えます」
山川れみさん(仮名・46歳)は、祖母から受け継いだ純喫茶と隣接する古着屋を夫婦で営んでいます。昨今の純喫茶ブームの恩恵を受けながらも、ここ数年で明らかに増えたと感じる困った客の存在に頭を悩ませていると話します。
「うちは飲食店と古着屋を経営していますが、本当に困った人が増えたと感じます。昔は当たり前にやらなかったようなことを、平気でする人がいるんですよ」
そんななか、先日やってきたカップルとのやり取りは、れみさんに現代のマナーの現実を突きつけるものでした。飲みかけのドリンクを手に古着屋へ入店しようとする2人に、できる限り丁寧に声をかけたそのときのことです。
ーダメって書いてないじゃん!
言い放たれた言葉に、れみさんは絶句したといいます。
「この言葉を聞いて、飲み物や食べ物を持っての入店禁止とデカデカと書かなくてはならない世の中になってしまったことを痛感しました。実は彼ら、注意をされた瞬間『じゃあ、そっちで捨てろよ』と言っていたんですよね…」
平塚氏はこう分析します。 「書いていなければやってもいいという発想は、ルールへの依存がマナー意識を上回ってしまっている状態です。本来マナーとは、相手の立場に立って考える想像力から生まれるもの。それが欠如していれば、どれだけ注意書きを増やしても、また別の場面で同じことが繰り返されるだけです。店側が声を上げにくい構造が続く限り、こうした事例は今後も増え続けるでしょう」
れみさんはこう続けます。 「実はこのカップル、古着屋のあとに隣の喫茶店にもやってきたんです。そこでの態度にも、疑問が残るものでした」
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※本記事で使用している写真はイメージです。
【取材協力】危機管理コンサルタント|平塚俊樹氏 【聞き手・文・編集】山本康裕 PHOTO:Getty Images 【出典】厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」
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