MicrosoftはヘルスケアAI分野で大勝負に出る。同社は米国時間3月12日、チャットボット「Copilot」の新機能「Copilot Health」を発表した。あらゆる医療記録やウェアラブルデバイスのデータを集約し、AIがその内容の理解を助ける新しい体験だ。
「われわれは、真の医療スーパーインテリジェンスの構築という大きな転換点に立っている」と、Microsoft AIのCEOを務めるMustafa Suleyman氏は語る。「ユーザーに関するあらゆること、つまりウェアラブルのデータや電子カルテから得られるすべての健康状態を学習し、それを利用して、すぐ手元でサポートや洞察、インテリジェンスを提供できる存在だ」
最近のMicrosoftの調査によると、モバイル版Copilotのユーザーは、他のどのトピックよりも健康に関する質問を多く投げかけているという。Copilot Healthは、こうした疑問に応えるために構築され、社内の臨床医や24カ国以上の数百人に及ぶ外部の専門家パネルによって微調整されている。また、全米医学アカデミーの信頼できる医療情報の評価枠組みを採用し、2025年のライセンス契約に基づきハーバード大学医学大学院の情報も活用している。
Copilot Healthは、一般消費者向けの通常版Copilotの中に組み込まれている。しかし、通常のチャットとは健康情報を切り離して管理できるよう、完全に独立した体験として設計された。健康に関する質問に特化したトレーニングを受けているため、通常版のCopilotや他のチャットボットよりも有用で正確なはずだ。「ChatGPT」も2026年に入ってから、同様の機能を導入している。
ユーザーの健康情報は通常のCopilotの回答には表示されず、新しいヘルスケア専用タブにのみ表示される。設定をオフにするだけで、いつでもデータを削除できる。その操作は非常に簡単で、なぜ他のAI企業がこれほどシンプルにデータを削除できるようにしないのか、疑問を抱かせるほどだ。
同社によれば、提供された情報はMicrosoftのAIモデルの訓練には使われない。ただし、CopilotのようなAIツール内の医療情報は、米国の医療保険の相互運用性と責任に関する法律(HIPAA)による保護の対象外となる。
Copilot Healthを利用するメリットは、すべての医療・健康情報が1カ所に集約され、それに関する質問に答えるよう訓練されたAIを使えることだ。スマートウォッチやスマートリングのデータを連携させたり、医療記録をアップロードしたりもできる。サードパーティーのプログラムである「HealthEx」を介して、複数の医療機関や病院、検査機関のファイルを一度にアップロードすることも可能だ。
Copilot Healthは医師ではない
電子カルテの共有を選択すれば、AIはより詳細な情報を踏まえた推奨事項を提示し、具体的な診察時のメモや検査結果に言及できるようになる。しかし、Copilot Healthを医師の代わりにしてはならない。このAIができるのは、健康上の懸念について話し合ったり、次回の診察に向けた準備をサポートしたり、より健康的な習慣を身につける手助けをしたりすることだ。
Microsoft AIのヘルスケア担当バイスプレジデントであるDominic King氏は、「Copilot Healthは確定診断や公式な治療計画を提示するためのものではないが、正しい答えにたどり着くためのサポートを提供するのは間違いない」と述べている。元外科医である同氏は、Copilot Healthを構築したチームを率いた。
例えば、医師に尋ねる質問リストの作成や検査結果の解説、自分の保険が適用される医療機関の検索などをサポートしてくれる。Copilot Healthは、新しい症状など健康上の懸念について話し合うことはできるが、診断や薬の処方はできない。
Microsoftは段階的な展開を進めており、まずは米国の成人(18歳以上)を対象に英語のみで提供を開始する。現在、Copilot Healthの待機リストへの登録を受け付けている。
現在もヘルスケア分野でAIは活用されているが、それらはバラバラに存在している。ウェアラブルデバイスにはAIによるデータ分析やコーチング機能が備わっている。一部の医師は、診察中にメモを取るためのAI書き起こしツールを利用している。事務作業や保険業務、特に保険金の請求処理(場合によっては支払拒否の判断を含む)にも独自のAIツールが導入されている。共通しているのは、どのAIも完璧ではなく、人間の監視なしに重要な決定を下すべきではないという点だ。
Microsoftが目指す医療スーパーインテリジェンスが実現できるかを判断するのは時期尚早だ。しかし現時点では、Copilot HealthはAIのより生産的な活用法を示しているといえる。インターネットを質の低いコンテンツ(スロップ)で埋め尽くすよりも、はるかに有意義だ。
Suleyman氏は、「これはおそらく、AIが世界に対してなし得る、最も重要かつ良い影響をもたらす貢献になるだろう。われわれにとって極めて重要なことだ」と語った。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
Amazonのアソシエイトとして、CNET Japanは適格販売により収入を得ています。
