一斉授業が苦手なら、野外学習クラブを。読み書きが苦手なら、音声入力での論文作成を。デンマークの学校では、子どもがシステムに合わせるのではなく、システムが子どもに寄り添います。
今回はデンマーク在住25年のニールセン北村朋子さんの著書『経済力も幸福度も高くなるデンマークのすごい教育』(青春出版社)を一部抜粋してご紹介いたします。
本人の意欲を最優先し、社会全体で学びを支えるデンマーク流のインクルーシブ教育から、日本の教育が抱える課題を解決するヒントを探ります。
落ちこぼれ、不登校を生まない教育環境
知り合いのお子さんにCくんという子がいます。彼は4年生の時に「学校に行く意味って何? 学校にあまり行きたくなくなった」と言い始めました。Cくんがその気持ちを担任の先生に話をしたところ、その先生は彼にこう尋ねました。
「そうなの。じゃあ、学校に来ないとしたら、あなたは何をしたいと思っているの?」
すると、Cくんはこう答えました。
「僕は車が好きだから、たぶん、いろいろな車の本を眺めたり、車に関係したYouTubeを観たりすると思うな」
先生は、こう返しました。
「なるほど、そうなのね。じゃあ、何かいい方法を考えようか」
そして、先生は学校とも相談して、Cくんにこんな提案をしました。
「じゃあ、学校に来る代わりに、しばらくこの町にあるカーディーラーに通ってみる?」
先生と学校は、Cくんが興味のあることから学びの意欲を引き出そうと、町のカーディーラーに掛け合って、しばらく、学校の代わりにCくんを受け入れてもらえるよう、交渉したのです。
Cくんは、学校に来る代わりに、早速、町のカーディーラーに通い始めました。
毎日、大好きな車に囲まれた生活です。
ある日はセールスの人、ある日は社長さん、ある日はメカニックの人のところで、仕事をつぶさに観察しました。そして、様々なことに気づいていきます。
「車は、人によっていろいろな魅力があって、それを伝えるにはいろいろな方法があるんだな。セールスの人は、同じ車の魅力を伝えるのでも、いろいろな言葉の使い方や伝え方があるんだな」
「売上管理の時、こうやって数式やエクセルを使うのか」
「社長さんも、セールスの人も、ここの地域の人たちがどんな暮らしをして、どんな車に乗りたいのかをよく勉強しているんだな。地域の地理や歴史を知るのも大事なことなんだな」
「メカニックの人が、車を修理するには、数学や化学の知識が必要なんだな」
そうこうしているうちに、Cくんは学校で勉強していることの意味を彼なりに少しずつ理解しはじめ、3か月後くらいから、少しずつ学校に戻ることにしました。
ただ、彼は以前から、一日中、学校で授業を受けるのはつらい、難しいと感じていたので、先生にこんな提案もしてみました。
「僕以外にも、学校で一日中授業を受けるのが難しい子は何人かいるのを知っているよ。
だから、野外学習クラブを作って、その子たちと外で学べるようにできないかな?」
こうして、担当教員がひとり付くことになり、野外学習クラブが誕生。午後になると、クラブのメンバーは本などを持って自然の中や公園などに出かけて、そこで自然観察をしたり、本を読んだりしていました。
そんな話を、私とともに視察で訪れた日本人のグループに、自ら体験談として話してくれたCくんでした。
これは、ほんの一例です。デンマークの子どもたちは、学校の中だけでなく、家庭や社会の中での横断した活動を通じて学び、成長していくのです。
ディスレクシアだけど、文句ある!?
