大学院で得た知見を還元/ウッドエイト社会保険労務士事務所 代表 八木 香苗

大学院で得た知見を還元/ウッドエイト社会保険労務士事務所 代表 八木 香苗

 2025年春、全国社会保険労務士会連合会が実施するプログラムの一環で、連合会からの推薦を受け、明治大学大学院経営学研究科に進学した。

 きっかけとなったのは生成AIの急速な発達だ。企業がまずAIに問いを立て、必要な情報を即座に得ることが当たり前になりつつあるなかで、正確な事務処理や法令知識の提供だけでは、社労士として企業の期待に応え続けることは難しくなってきている。複雑化する現代社会において、どのように企業に向き合うかを改めて考え直す必要があると考え、経営学の知見から視野を広げるために進学を決意した。

 大学院での学びで大きな収穫だと感じているのは、「頭の使い方」を鍛えられている点である。学術知識の習得はもちろんのこと、前提を疑うクリティカルシンキングや、事象を多角的に捉える視点を身につけることができる。授業では、年齢や業種、立場の異なる仲間同士で活発な議論が交わされる。他者の視点に触れ、自身の考えの曖昧さに気付かされることは少なくない。

 こうした思考の訓練は、業務にも活きている。経営者の悩みに向き合う際、表面的な課題だけに目を向けるのではなく、その背景にある組織構造や経営戦略といった要素まで意識した対話ができるようになったと感じる。法令遵守を土台としつつ、経営学的な文脈を踏まえて人や組織を捉え、社内連携を戦略的に促す提案を行うこと。この「専門性」こそが、AI時代に人が社労士を担うことの意義ではないだろうか。

 連合会は本プログラムへ、「アカデミックな研究指導を通じて、社労士業を見直し、労務管理指導の質的向上を図る」ことを期待している。社労士が経営学を学び、経営戦略パートナーとして関与することは、顧問先企業に対し、コンプライアンスという守りの基盤を固めながら、経営と人材を結び付ける支援を行うことを意味する。組織設計の視点を持つ社労士の存在は、企業の持続的な成長を下支えする力になれるであろう。

 社労士としての業務と大学院生の両立は、決して容易ではない。それでも、社労士が経営学の素養を備え、企業経営の中核にかかわる存在へと進化していくことは、業界全体の価値向上と職域の広がりにつながると考えている。

 大学院での学びで得た視座を業務に還元し、その成果を社会に共有していくこと。それが、連合会から推薦をいただいたことへの私なりの恩返しであり、使命である。この挑戦を糧に、社労士としてより確かな価値を提供できるよう、歩みを進めていきたい。

ウッドエイト社会保険労務士事務所 代表 八木 香苗【東京】

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