
メロディ、コード、リズム、アンサンブル。その一つひとつに「こんな着地が待っているとは!」と思わせる仕掛けが忍ばされていて、それらが束ねられた演奏は、ちょっと涙が出そうになるくらい美しくて。
安野想(Vo・G)とトヨシ(Dr・G)によるふたり組バンド・エルスウェア紀行。昨年放送の『EIGHT-JAM』で川谷絵音が年間マイベストに“素直”を選出したことも記憶に新しい彼らは、この日、アコースティック編成の「微光奏」と、フルバンドによる「遠景奏」という二部構成で、日本橋三井ホールにいくつもの景色を描き出してみせた。
いつもと違う道を歩くことが、思考をほぐすきっかけになるという話を聞いたことがあるけれど、エルスウェア紀行のライブ体験はまさにそれ。2時間半にわたる音楽旅行を味わった自分の脳みそが、意外性に富んだ音の組み合わせの連続に喜んでいるのがわかった。
トイズファクトリーからのメジャーデビューシングル“のびやかに地獄へ”も、ミドルテンポのゆったりとしたサウンドに身を委ねていると、不意に足元をすくわれるような展開が待ち受けるエルスウェア紀行らしい1曲。冷笑や閉塞感に満ちた現代は「地獄」と言ってしまえるかもしれない。それでもどうせ向かわなければならない場所なら、のびやかに、スキップするように歩いていきたい。安野がこの曲に込めたメッセージも凝り固まった思考に新鮮な風を吹かせてくれた。(畑雄介)
「エルスウェア紀行 tour “strange town” 2025-2026」のライブレポートはrockinon.comにて後日公開&2月28日発売のJAPAN4月号に掲載!
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