
写真は2025年11月、ニューヨーク証券取引所で撮影。 REUTERS/Brendan McDermid
[オーランド(米フロリダ州)5日 ロイター] – 人工知能(AI)関連銘柄への投資判断で、投資家はより一層の選別眼を求められることになる。昨年の米国ハイテク株の広範なブームをけん引した包括的な成長神話は終焉を迎えたからだ。AIの波はもはや全ての船を浮かべるわけではなく、ある四半期に順調だった企業も次の四半期には沈没する可能性がある。
今週のいわゆる「ソフトウエア・マゲドン」により、S&P総合500種ソフトウエア・サービス指数の時価総額が約8000億ドル消失。オラクルやサービスナウなどの企業の株価下落が顕著だった。ソシエテ・ジェネラルによると、ソフトウエアセクターのS&P総合500種指数に対するパフォーマンスは過去25年間で最悪となっている。
今回の動揺の根源は、AI新興企業アンソロピックの新ツールにあるようだ。同社の生成AIモデル「クロード」向けの新たな法務ツールは、多くの法務業務を自動化でき、将来的にはソフトウエア企業が提供する営業・マーケティング・データの分析サービスも置き換えられるようになる。
しかし、今週の下落はほとんど実態が分かっていないこのツールだけの問題ではない。これはAI革命が新たな段階に入りつつあることを投資家が認識し始めた兆候だ。ハイテク産業は今、AIによる破壊者と、AIの犠牲者の間で分断されつつある。
指数連動型ファンドを購入し、ハイテクのメガキャップ(超大型株)への投資ブームの追い風で上昇するのを眺めているだけというのは、もはや最適な投資戦略とは言えない。投資家は勝者を選び、敗者を避ける必要があり、AIによって強化される分野と、AIによって破壊される分野を見極めなければならない。つまり、10年間にわたるパッシブ(受動的)運用による高リターンを経て、アクティブ(能動的)運用が再び脚光を浴びるかもしれない。
問題なのは、このような特殊な状況がどう展開するか誰にも予測できないという点だ。AI技術はまだ揺籃期にあり、その究極的な影響は未知数だ。すなわち今日の勝者が明日の敗者となる可能性があり、変化の速度は目まぐるしくなる。
交流サイト(SNS)「フェイスブック」を運営するメタ・プラットフォームズの株価が、直近2回の決算発表の翌日にどのように動いたのかを見てみよう。AIとデータセンター建設への巨額投資を発表した後の昨年10月30日にメタの株価は前日より11%下落したが、同様に積極的な支出を表明した後の今年1月29日には10%の急騰をもたらした。
マイクロソフトを例に取ろう。マグニフィセントセブン(超大型ハイテク7銘柄)の中で明らかなAI分野の先行的優位性を示し、時価総額は昨年に4兆ドルを突破した。しかし、過去3カ月間に株価は25%の急落を見せた。巨額の設備投資が報われるかどうかに投資家の疑問がつのっているためだ。

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<ソフトウエアセクターへの弱気>
今週の株価の不安定な動きを巡っては、セクター間や個別銘柄間の差が注目を浴びているかもしれない。しかし、実際にはこのような傾向はしばらく前から起きていた。
S&P総合500種のハイテク指数が過去3カ月間に9%上昇した一方、通信・サービス指数は10%下落した。バークレイズの株式ストラテジストらによると、米国最大級のハイテク企業6社のアマゾン、アップル、アルファベット、メタ、マイクロソフト、エヌビディアの株価変動の相関性は少なくとも過去10年間で最も低い。
「上昇基調」という見方からの転換が今後も続いて「ハイテクで、ハイリスクの市場」が形成され、ファンドマネージャーが個別株やテーマ型投資戦略の余地をより多く持てるようになると予想している。
ソシエテ・ジェネラルのマニッシュ・カブラ氏は、このような状況を基本的に次のように要約している。それは世界的なソフトウエア株が売り込まれる一方で、世界的な半導体ブームが訪れるというものだ。
これは理論的には投資家にとって良いニュースのはずだ。セクターの混乱、相関関係の崩壊、流動的な価格変動の時代には、掘り出し物や裁定取引の機会が見いだされがちだ。これは「株選別者の市場」と呼ばれているものだ。
ジェフリーズの株式取引担当マネージング・ディレクター、マイケル・トゥーミー氏は、過去最高となるソフトウエア株の73%、ハイテク株の45%がそれぞれ売られ過ぎ状態にあると算出し、IGVのiSharesテクノロジー・ソフトウエア上場投資信託(ETF)のS&P500種に対する売りが過去最大水準にあると主張する。
トゥーミー氏は「私のキャリアでこれほどネガティブな投資家心理は、どのセクターでも見たことがない」とし、「ソフトウエアの株価は今後、大幅な上昇が待ち受けていると思う」との見方を示した。
しかしながら、膨大なデータや調査にアクセスできるにもかかわらず、AIがもたらす急速な変化と、その影響による大きな不確実性によって「銘柄選定者」は実質的に手探りの状態に陥っている。
ハイテク業界は流動的な状態にあり、当分はこのような状況にとどまる見込みだ。このような日々や週が今後も続くであろうことを投資家は覚悟すべきだ。

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(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

