ミュウミュウ・ビューティーは社内向けのAI活用に絞り、短期間で香水ローンチを実現した。
事前検証や素材最適化に技術を使い、判断スピードと精度を同時に高めた。
消費者向け活用は抑え、ブランド世界観を守る設計を優先した。
ビューティーブランド各社がAI導入を急ぐなか、ミュウミュウ・ビューティー(Miu Miu Beauty)は、その技術を「どのように、そしてどこで使うのか」において、あえて抑制を重視している。
これは、1月に開催されたショップトーク ラグジュ(Shoptalk Luxe)で、同ブランドのチーフ・デジタル・オフィサーであるティファニー・ジェームズ氏が語った内容である。
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ジェームズ氏によれば、2024年にロレアル リュクス(L’Oréal Luxe)がミュウミュウのビューティーライセンスを取得したあと、2025年初頭にブランドのデジタルチームが編成され、同社はすぐにAIの活用を開始したという。「AIはかなり早い段階から使いはじめたが、主に社内プロセスを効率化するためだった」と同氏は述べた。
こうした効率化は、ブランドの市場投入までのスケジュールが非常に短期間だったことを考えると、極めて重要であった。ミュウミュウ・ビューティーは昨年8月、デビューフレグランスである「ミューティン(Miutine)」の発売とともに正式に市場に参入し、9月にはニューヨークで注目のローンチイベントを開催してこれを祝った。
「我々は決して大きなチームではなかった。まさに白紙の状態だった」とジェームズ氏は語る。「効率を高める方法があれば、どんな方法でも取り入れた」。
エマ・コリンが出演するミューティン(Miutine)の動画広告
AI導入の目的は社内業務の効率化にある
過去の実績が存在しない状況において、AIはローンチ前に意思決定を検証するための手段となった。「ターゲットオーディエンスの一部に向けてコンテンツの事前テストを行い、きちんと機能するかを確認するためにAIを使った」とジェームズ氏は述べている。
AIはまた、各種デジタルプラットフォームに合わせてクリエイティブ素材を最適化する用途にも使われた。
ロレアル USA(L’Oréal USA)によれば、ミューティンは発売後、プレミアムフレグランスの売上ランキングでトップ15にランクインした。流通は、セフォラ(Sephora)、アルタ(Ulta)、メイシーズ(Macy’s)といった米国の主要小売パートナーを中心に展開されており、加えてブランド認知を高めるための各種アクティベーションイベントも開催されている。
その一例として、ミュウミュウ・ビューティーは2025年11月から2026年1月初旬にかけて、全米有数のラグジュアリーショッピング施設であるマイアミ(Miami)のアベンチュラ・モール(Aventura Mall)でポップアップを開催した。
この体験型スペースは「ミューティン・ホリデー・ハウス(Miutine Holiday House)」と名付けられ、複数の部屋で構成された住宅風の空間のなかで、成分に関するストーリーテリング、カスタマイズ、現地でのギフティングなどが展開された。
ブランドの感性と消費者向けAIの適切な境界線
AIが実行面を支える一方で、ジェームズ氏は、消費者向けのAI活用については厳格に管理していると強調した。「今の我々にとっての課題は、消費者に直接向けるものとして、どこまでが適切なのかという理想的な線を見極めることだ」と同氏は語る。
さらに同氏は、ロレアルのブランドである以上、「AIコンテンツに関して、非常に厳しいガイドラインを設けている」と付け加えた。たとえば、「人間に取って代わることは決してない」という点である。
2021年に策定されたロレアルの「信頼できるAIのための責任あるフレームワーク」は、人による監督、安全性、プライバシー、透明性、公平性、説明責任、環境への配慮という7つの中核原則を基盤としている。これは、同社によれば、ブランド全体において倫理的で包括的かつ人間中心のAI活用を確保することを目的としている。
AI生成キャンペーンをクリエイティブな主張として前面に打ち出すブランドもあるが、ジェームズ氏は、そのようなアプローチはミュウミュウ・ビューティーのポジショニングには合致しないと述べた。「我々はとてもレトロで、とてもオーセンティックで、ローファイな方向性を取っている」と同氏は語る。
ロレアルGPTと視覚予測ツールによる意思決定
2025年、ミュウミウのファッションとビューティーを横断するエコシステム全体も、ミューティンの香水ローンチを含め、そうしたレトロで遊び心のある感性を前面に押し出していた。
ファッション分野では、ブランドは「ミュウミュウ・サマー・リーディング・クラブ(Miu Miu Summer Reads clubs)」を立ち上げ、カルチャー、知性、コミュニティとの結びつきを強めた。
ミュウミュウ・サマー・リーディング・クラブ
ビューティー分野では、ミューティンのインフルエンサー向けシーディングキットに、ベビーブルーのブランドロゴ入りマイクを同梱し、単なる「開封動画」ではなく、自身の声で語ったり、演じたり、ナレーションしたりすることをクリエイターに促した。
ジェームズ氏によれば、社内で使用しているAIツールのひとつに、消費者がクリエイティブ素材を視覚的にどのように捉えるかを予測するプラットフォーム、ヴィジット(Vizit)があるという。
「どこに視線が集まるかをテストできる」と同氏は説明する。「たとえば、ビジュアルに配置した小道具がボトルから注意をそらしていないかどうかを確認できる」。
さらに、2024年に導入され、全社的に展開されたロレアルの社内生成AIアシスタントであるロレアル GPT(L’Oréal GPT)もある。
このツールは、企業データを保護しながら、インサイト創出とコラボレーションを加速させることを目的とした「すべての人のための生成AI(GenAI for All)」イニシアチブの一環として、従業員のあいだで広く利用されるようになっている。
AIをクリエイティブの代替ではなくインフラと定義する
ジェームズ氏は、AIを効果的に活用するには相応のスキルが必要であることを過小評価すべきではないと警鐘を鳴らし、「クリエイティブディレクションそのものがひとつのスキルセットだ」と述べた。
同時に、AIへの習熟だけでは不十分であるとも明言している。採用に関しては、「AI一辺倒」を売りにする候補者はレッドフラッグになり得るとし、ツールが進化し続けるなかで、適応力や学ぶ姿勢を重視していると語った。
また、テクノロジーそのものへの過度な依存に対しても警告を発している。
「過信するというのは、すべての卵を1つのカゴに入れるようなものだ」と同氏は語る。「我々はAIを受け入れているが、一歩ずつ進めている」。
今後について、ジェームズ氏は2026年に追加製品を投入することを認めたものの、詳細については明らかにしなかった。そして最終的に、同氏はAIをクリエイティブの代替ではなく、インフラとして位置づけている。
「我々は引き続き、高付加価値の業務に注力したい」と同氏は語る。そのうえで、「AIが代わりに引き受けてくれることで、そうでなければ効率的でない作業は何か」を常に問い続けているという。
[原文:How Miu Miu Beauty used AI to ensure a successful launch]
Zofia Zwieglinska(翻訳、編集:藏西隆介)
Image via Miu Miu/YouTube
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