2025年10月、文部科学省による「令和6年度外国人の子供の就学状況等調査結果について」(以下、文部科学省(2025))が公表された。筆者は、宍戸(2025a)において、前年度の調査結果を確認するとともに、外国人の子供の不就学という課題について、教育現場・地域・行政などがどのようにアプローチし支援につなげるかについて考察した。

本レポートでは、最新の結果を分解して確認することで、宍戸(2025c)で確認した新しい情報連携基盤などにより制度的・技術的に解決できる課題を見極めるとともに、どのような調査と支援が求められるか考察し、私見を述べる。

本章では、文部科学省(2025)をもとに、「不就学およびその可能性のある子供」の内訳に着目する。これは、次章以降で検討する、どの類型が制度的・技術的連携の不足に起因するもので、換言すれば制度的・技術的連携により改善が図れるのか、一方で、どの類型が現場の職員による調査や支援を必要とするのか見極めることを目的とするものである。

文部科学省(2025)では、学齢相当(注1)の外国人の子供のうち、「不就学およびその可能性のある子供」は計13,183名であった(注2)。資料1は、こうした子供の内訳と、その定義を示したものである。義務教育学校、外国人学校のいずれにも就学していない「不就学」や、就学しておらず住民基本台帳に記載が残っているが実態としては「転居・出国」している子供が報告されているが、過半を占めるのは、不在や連絡不通により「就学状況が把握できない」子供たちである。また、「転居・出国」と報告された子供についても、「実際に出国した子供も多く含まれるが、国内転居の後に不就学状態になっている子供も含まれる可能性がある」とされており、居所が分からない、あるいは就学状況が把握されていない子供も少なからずいると考えられる。勿論、転居先で住民登録し、学校に通うなどして教育を受けている可能性もあるが、文部科学省(2025)ではそこまで捉えることができる調査手法は採用されておらず、また後述の通り、現在の住民基本台帳システム上も検出することは不可能である。

図表
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資料2はこうした「不就学およびその可能性のある子供」の割合を都道府県別に見たものである。2024年度の全国平均は8.1%であったが、割合が高い順に、東京都(14.2%)、沖縄県(10.8%)、北海道(10.6%)、大阪府(10.5%)、京都府(10.0%)の順となっている。前年度の調査に引き続き東京都が最も多いが、これらのうち京都府を除いてはいずれも前回よりその割合が低下している。また、これらの都道府県のうち東京都、沖縄県、および大阪府については、「転居・出国(b)」および「就学状況把握できず(c)」として報告される子供がその大勢を占めており、資料1で確認した特徴が顕著に見てとれる。

図表
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この結果を踏まえ、次章では「転居・出国」および「就学状況把握できず」として報告される子供のように、調査上「不就学およびその可能性のある子供」に区分されるケースについて、効果的に制度設計を行うことで、より精緻かつ効率的に分類することが可能か検討する。

(1)「学齢簿システム」の導入および外国人の子供への適用状況

資料3のうち上段のグラフは文部科学省(2025)において、「住民基本台帳システムと連動した学齢簿システムを導入し、外国人の子供に対しても適用していますか」(学齢簿システムについては後述)という質問に対する回答結果を示したものである。2024年度は全国の自治体(1,741団体)のうち、1,370団体(78.7%)で「システムを導入しており、外国人の子供に対しても適用している」と回答しているが、残りの自治体については、システムを導入しているが外国人の子供には適用していないか、そもそもシステムを導入していない。

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次に、資料3のうち下段に示したのが「学齢簿の編製にあたり、学齢の外国人の子供についても一体的に就学状況を管理していますか」との質問に対する各市区町村の回答である。「全ての子供について行っている」、「義務教育諸学校に通う子供など、一部の外国人の子供について行っている」との回答を合わせると1,694団体に上る。こうした外国人の子供についても一体的に就学管理を行っている市区町村数から、住民基本台帳システムと連動した学齢簿システムを導入済みの市区町村数(1,370団体)を差し引いた324市区町村は、外国人の子供についてシステムを活用せずに学齢簿を作成している可能性が高い。ただし、これらには、システム未導入の自治体、システムを導入しているものの外国人の子供には適用していない自治体、およびシステムで作成した学齢簿に対して外国人分のみ補正や追加入力を行っている自治体が含まれると考えられる。

(2)学齢簿とは何か

そもそも「学齢簿」とは何か確認したい。学齢簿とは、市町村教育委員会が住民基本台帳をもとに編製することを義務付けられている、学齢期の子供の氏名、住所、生年月日、保護者情報、就学先等を記録した基礎台帳である(注1、注3)。誰がどのような内容の学齢簿を編製するかは、法令により明確に定められている。

外国人の子供については、その保護者が日本の義務教育に就学させる義務はない。このため、法令上、外国人の子供が学齢簿に記載される対象であるとは規定されていない。しかし、国際人権規約を批准している日本は、国籍の区別なく、すべての子供に教育を受ける権利を保障している。在留外国人が、その子供を公立の小学校や中学校といった公立義務教育諸学校へ就学させることを希望する場合には、子供は日本人と同様に無償で通学することができ、日本人児童生徒と同一の教育を受ける機会が保障されている。このため、資料3に示したとおり、実務上学齢簿の対象として含めるかどうかは市区町村によって対応が異なっているのが現状である[宍戸3.1]。

(3)学齢簿編製のシステム化

前節で述べた外国人の子供の学齢簿上の取り扱いを含め、具体的な編製手順やデータ処理方式は自治体ごとに大きく異なる。実務上は、住民基本台帳データを年一回のタイミングで教育委員会の学齢簿システム(正式には「就学事務システム」、注4)に取り込み、その後に必要な補正や追加入力を人手で加える方法が一般的である。もっとも、「就学事務システム(学齢簿編製等)標準仕様書」(注5)が2021年8月30日付で公表されるまでは、全国共通の仕様は存在せず、各市区町村が個別にベンダーとシステムを構築していたと考えられる。また、資料3上段の「住民基本台帳システムと連動した学齢簿システムの導入・適用状況」によれば、そもそも就学事務システムを導入していない自治体も一定数存在しており、学齢簿編製のデジタル化が全国で必ずしも均一には進んでいない実態が明らかになっている(注6)。

学齢簿システムを導入していない理由に関する調査は確認できないため、その理由は明らかになっていない。しかし、法令上、学齢簿の編製の対象となる学齢の子供がいなかったとしても台帳としての学齢簿自体は毎年度作成が義務付けられている点に鑑みれば、学齢簿の編製業務をシステム化しないのは非効率ではないだろうか。とりわけ、学齢の子供の少ない自治体ほどシステム化の効果は大きいと考えられる(注7)。

(1)標準化された「学齢簿システム」の導入で解決可能な課題

資料4は、資料3(下段)の、学齢相当の外国人の子供に係る学齢簿の作成状況に関する質問に対して、「義務教育諸学校に通う子供等一部の外国人の子供について行っている」、または「行っていない」と回答した計210の教育委員会が、できない理由について述べた回答(一部抜粋)である。ここで挙げられている理由のうち、標準仕様の学齢簿システムを導入することで解決できる課題をまず確認したのち、より構造的な課題の考察に進むこととする。

図表
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まず、標準仕様に準拠した学齢簿システムの導入により解決できるものには、次のようなものが挙げられる。

このような回答にみられるように、住民基本台帳情報の取込み方法が異なる、あるいは新学年度を迎えるにあたっての年1回のバッチ処理しか行われていないといった「システム上の不連携」が根本要因になっているものについては、住民基本台帳システムからの随時取込(差分反映)や自動連携が明確に要件化された標準仕様のシステムの導入で解決可能であろう。これにより、転入・転出情報の反映も含めた一連の作成作業が大幅に効率化される。また、こうしたシステムの導入は、小規模自治体において外国籍児童の転入対応に関する経験が乏しい場合であっても、標準仕様に定義されたプロセスに則って業務を進めることを可能にし、属人的対応を抑制することで、安定的な事務処理の確保に資すると考えられる。

(2)「公共サービスメッシュ」の導入により解決が期待される課題

次に、各教育委員会からの以下のような回答(資料4)から見えてくるより構造的な課題とは何か。

居住実態と住民票の不一致により全ての外国籍児童を把握することが困難である

過去に把握できていなかった不就学児童や就学先不明児童が残存しており、居住実態が依然として不明である

手続きを行わず連絡も取れない世帯について就学状況を確認できない

これらの課題を分解すると、住民基本台帳制度そのものが外国人住民の実際の居住状況を反映しきれないという制度上の限界があると指摘できる。住民基本台帳には在留期間等の在留情報が記載されているが、その記載は外国人本人による在留カードの提示に基づく自己申告方式を基本としている(注8)。帰国や在留期間満了等によって実際には居住していない場合であっても、届出が行われない限り住民票が残存することになる。

こうした制度的制約は、「公共サービスメッシュ」の導入により改善されることが期待される。この公共サービスメッシュとは、デジタル庁が推進する行政データの活用・連携を迅速にするためのシステム間連携の仕組みである。各行政機関が保有する基礎情報を相互に連携し、必要な行政手続においてリアルタイムに近い形で参照可能とする情報連携基盤であり、2026年1月から提供される予定である(注9)。2027年3月からは、在留資格情報も住民基本台帳情報と連携されることが予定されている(注10)。これにより、帰国等により日本に居住していない者は住民基本台帳データベース上で確認することが可能になると期待できる。

住民基本台帳データベースに最新の在留情報が反映されるようになれば、学齢簿システムを導入していることが前提とはなるものの、市区町村に実際に居住している外国人の子供も含めた一体的な学齢簿を編製することができると期待される。期中の異動を含めて、効率的に編製できるようになるのではないだろうか。前述のとおり、学齢簿の編製そのものは各市区町村に義務があるが、住民基本台帳情報と在留資格情報との連携を進めるのは、出入国在留管理庁やデジタル庁、総務省などの国の関係機関である。一方で、学齢簿システムの標準仕様書を提供するのは文部科学省であることから、関連省庁が連携し、各市区町村や教育委員会が効率的に事務を進めることができるようなシステムを構築することを求めたい。

また、文部科学省(2025)についても、各市区町村の教育委員会が住民基本台帳や学齢簿等を用いて学齢相当の外国人の子供の数を把握したうえで、必要に応じて聞き取り調査を実施していると推測される。このため、例えば出国して日本に居住していない子供などは、住民基本台帳データベース上で適切にその状況が反映されることにより、そもそも調査の母数から除くことも可能になるのではないか。こうした子供たちをあらかじめ対象から除外することで、国内転居の後に不就学状態になっている可能性のある子供や、義務教育諸学校もしくは外国人学校のいずれにも在籍せず、どのような形態の教育も受けていない「不就学」状態の子供のような、優先的に人手を割いて確認すべきケースに人員を配置することができるようになると考えられる。

公共サービスメッシュを活用することで、真に人手をかけて就学状況を確認すべき世帯を精緻に抽出し、地方自治体の負担の軽減と、実態把握の精度向上を同時に実現することが求められる。

(1)共生社会の実現に向けた新たな支援モデルの必要性

前章では、学齢相当の外国籍の子供の就学状況が十分に把握されていないという課題について、住民基本台帳情報や在留資格情報といった基礎情報の整備を進めることで、各地方自治体が真に対応すべき事案をどのように抽出し得るかを検討してきた。すなわち、基礎情報の連携・整備を通じて、統計・調査上「不就学およびその可能性がある」と整理されている子供の数を、実態に即した形で縮減していくという観点である。しかし、本レポートにおける議論の対象となる外国人が原則としてすべて住民登録を行っているという前提のもと(注11)、真にサポートが必要な不就学の子供を減らしていくためには、宍戸(2025a)において考察したとおり、外国人との様々な接点の機会を捉えて情報提供し、子供の教育の重要性や日本の学校での学習、学校生活の魅力について伝え、理解を得ていくことが不可欠である。

本章では、前章までの分析を踏まえつつ、外国人と日本人の別を問わず、すべての子供を対象とした共生社会の実現という観点から、マイナンバーカードのICチップ内の空き領域を活用した施策について試論として検討する。具体的には、富山県朝日町で実施されている「LoCoPiあさひまち」の「こども見守りカード」にみられるような仕組みを応用し、子供の安全確保と就学機会への参加を促すことの双方に資するアプローチを提案したい。

(2)子供専用カード活用の意義と制度的前提

マイナンバーカードは、ICチップ内の空き領域に番号法に抵触しない範囲で機能を搭載することが可能である(注12)。富山県朝日町では、住民がマイナンバーカードを町内の様々な施設や、介護予防教室、公共交通機関に設置されている専用読取機にかざしタッチすることで、行政などが利用状況を把握、必要に応じて、施設・サービスの充実につなげている。また、こうした町内施設や公共機関などを利用することでポイントを溜める機能も搭載している。特徴的なのは、「こども見守りサービス」の提供であろう。子供たちがマイナンバーカードを紛失するリスクに鑑み、「子供専用カード」を作り、小中学校の登下校やスクールバス乗車時、あるいは町内の各施設の利用時に専用の読取機にタッチすると、登録した家族などのメールアドレスに自動で通知が届くサービスも実装している。

このモデルを参考にしつつ、こうした見守りサービスに加えて、子供たちが図書館、日本語教室、学習支援教室や公民館などの教育関連施設や公共施設を利用したり、地域のイベントなどに参加したりするたびにポイントが付与される仕組みを構築すれば、学習参加や地域参加そのものを自然に促すことができる。

ポイント付与の対象となる活動は、自治体の政策目標に応じて柔軟に設定できるだろう。例えば、図書館の利用だけでなく読み聞かせイベントなどへの参加、地域の清掃活動やスポーツイベント、地域の歴史・文化に触れるプログラムへの参加など、地域の教育・文化資源を最大限に活用する形で設計することができる。外国人の子供たちのみならず、地域のすべての子供たちをポイントプログラムの対象とすることで、地域社会全体が子供の成長を支え、外国人と日本人が自然に交わる機会を創出する共生モデルを構築することが期待できるのではないだろうか。

なお、技術的には、子供専用カードに格納した識別子を自治体内部で住民基本台帳情報や学齢簿情報と突き合わせることで、義務教育諸学校もしくは外国人学校のいずれにも在籍せず、どのような形態の教育も受けていない「不就学」状態の子供を早期に把握する仕組みを構築することも考えられる。行政によるサポートが真に必要なこのような子供たちにはより効果的な方法であろう。しかし、制度設計によっては、子供の行動履歴の監視や追跡に繋がりかねない。このため、こうした機能を実装する場合には慎重な制度設計と明確なプライバシー保護措置が求められる(注13)。

したがって、筆者としては、今回の提案は、子供の行動情報を広範に収集する仕組みを構想するものではなく、子供の積極的な地域参加を促すインセンティブとして、また地域社会が子供の成長を支える「共生」の基盤として活用していくことを目指すものである。

本編では、文部科学省(2025)を踏まえ、外国籍児童生徒の就学状況に関する現状と課題を確認してきた。調査結果が示すように、出国した可能性がある児童や所在が確認できない児童が一定数存在し、各自治体の教育委員会が多大な労力をかけて就学状況を把握している現状がある。これは、住民基本台帳、在留資格情報、学齢簿などの行政情報が連携していないことにより、制度上の想定と実務運用との間に乖離が生じていることを示している。

こうした課題に対し、学齢簿システムと公共サービスメッシュとを効果的に活用することで、これまで多くの手作業に依存してきた調査業務が大きく効率化されることが期待できる。このような行政の効率化は、自治体職員の負担を軽減することはさることながら、真の価値は、効率化によって生まれた時間と人員を、子供や保護者への直接的な支援に再投下することにあるのではないだろうか。「人間にしかできない支援」を強化する、という目的も、公共サービスメッシュを活用した制度設計を行うにあたり、非常に重要な視点となると考える。技術を適切に活用し、効率化によって生まれた資源を支援の質の向上に振り向けることを期待したい。教育行政分野においても、デジタル基盤を活かし、「支援のための情報連携」を通じて、誰一人取り残さない社会の実現が望まれる。

以 上

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