
写真はアンソロピックを使ったイメージ。2024年5月に撮影。REUTERS/Dado Ruvic
[トロント 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 人工知能(AI)が主導する形でさまざまな企業が消滅するという恐怖心が、市場に幻覚を生み出している。大規模言語モデル(LLM)を開発するアンソロピックが最近発表した新しいツールは、営業から法務、財務分析まで自動化する可能性を秘める。それが3日と4日にIT、専門サービス企業の株を売る動きにつながった。これらの値下がり度合いはまるで、広く利用される製品が一夜でなくなることを意味するようだが、投資家は過剰反応している。
既存のソフトウエア企業は2022年11月にオープンAIの対話型AI「チャットGPT」が登場して以来、株式市場で苦戦を強いられてきた。BVPナスダック新興クラウド指数がその後ほとんど上昇していない一方、AIを多用するテック大手の株は急騰している。懸念されているのは、経費管理など現在専用ソフトを必要とする多くの企業業務が、LLMによって簡単な作業に置き換わってしまう事態だ。
収益成長率だけを見ても懸念の理由は明らかだ。ベッセマー・ベンチャー・パートナーズによると、BVPナスダック新興クラウド指数の構成企業は平均16%の増収率を記録した。専門サービス企業の成長率は通常、この水準を大きく下回る。一方、アンソロピックやオープンAIは毎年売上高を何倍にも増やしている。またガートナーの推計では、25年から27年にかけてAIモデルへのIT支出はソフトウエア分野の1.5倍のペースで増加する見込みとなっている。
それでも、一部の株価の動きは行き過ぎているように見える。例えばロンドンに上場するレレックスの時価総額は3日に90億ドル減少し、550億ドルとなった。同社は法務・リスク管理分野の顧客向けにデータと分析ツールを販売し、学術誌も発行している。
だがUBSのアナリストによれば、レレックスのグループ売上高の88%は、LLMによる混乱の影響をほとんど受けていない。AIリスクが生じる可能性のある同社の法務データベース部門は、直近の通期決算における営業利益全体のわずか12%を占めるに過ぎない。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのアナリストが、26年にリスクのある法務データベース部門で予想する調整後営業利益約6億6000万ドルに15倍の倍率を適用すると、算出される潜在価値は100億ドルと、レレックスが失った時価総額に近い。言い換えれば、投資家は法務データベース部門を事業部門として無価値と見なしている。
しかし実際に、同セグメントの売上高成長率は19年と20年の1桁台前半から現在は1桁台半ばに加速している。レレックスと競合するトムソン・ロイターは、各社のデータベースで訓練したAIツールを展開済みだ。重要な教訓は、価値あるビジネスデータは依然として既存企業にとどまっているという点にある。
●背景となるニュース
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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