Photo: Tamara Kenyon / The New York Times

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世界中で若者を中心に「アルコール離れ」が進むなか、米国ではレストランが苦境に立たされている。これまでのアルコールに頼ったビジネスモデルが通用しなくなりつつあるいま、経営者たちはその「穴」をどのように埋めようとしているのか。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が取材した。

もう「魔法」じゃない

デイモン・ワイズがニュージャージー州モントクレアにレストラン「パイナップル・エクスプレス」をオープンしたとき、彼は従来のビジネスモデルを迷わず踏襲した。売り上げの4割を料理、6割をアルコールで賄うという計画を立てていたのだ。

ニューヨークのレストラン業界でキャリアを積み、複数の州で自身の店を経営してきた彼は、これこそが「魔法の比率」であると確信していた。

だが、ここ2年で、この定石は通用しなくなっていった。まず料理とアルコールの比率が5:5になり、ついには7:3にまで変化した。1月、ワイズは閉店を発表した。

「レストランを廃業に追い込む要因はたくさんありますが、これは間違いなくそのひとつでした。どうすればもっとお酒を飲んでもらえるのか、会議で何度も話し合いました」

ワイズ自身、5年前に断酒しており、酒を飲まない人々には同情的だ。しかし、先細りするハッピーアワーの売り上げは、単なる嗜好の変化を超えた、より複雑な事情を物語っている。

「経済的な要因で、人々が財布の紐を固くしているのだと思います」

アルコール離れが招く「外食産業の地殻変動」─米国の飲食店経営者の苦悩

デイモン・ワイズ Photo: Ed Kashi / The New York Times

レストランにおけるアルコールの重要性

2025年にギャラップ社が実施した世論調査において、米国の飲酒率は過去最低を記録した。「酒を飲む」と答えた人は54%にとどまり、そうした人々の飲酒量も減少していた。

背景には、飲酒による健康リスクに対する意識の高まりや習慣の変化、さらには米国人の6%が服用している肥満症治療薬、GLP-1受容体作動薬の影響がある。この薬には、アルコールへの欲求を抑制する効果があることが研究で示唆されている。

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