「日本人は礼儀正しい」——そんなイメージは欧米でも広く共有されており、時間に正確で真面目といった好意的な印象も持たれている。一方で、日本人は会議ではあまり自己主張しないなどのステレオタイプで語られることも少なくない。

ワシントンでは、米政府を代表して日本政府の担当者と何度も交渉してきたアメリカ人は、日本人をどのように見ているのだろうか。

日本人と実際に仕事をしてきた元米政府高官2人に、そのリアルな経験と彼らが抱く日本人像を聞いた。

日米交渉の現場で見えた日本人の特徴と文化の違い

マロット

ワシントンDC日米協会の理事長を務めていた当時のマロット氏(写真提供:本人)

1人目は、ジョン・マロット氏。キャリア外交官として、大阪と神戸での米総領事館勤務や、国務省本省での日本部長など、米政府の対日交渉で重要な役割を果たした人物だ。退任後はワシントンDC日米協会理事長も務めた。長年、日米間の相互理解や文化交流の促進に寄与したとして、2017年春の外国人叙勲で「旭日中綬章」を受賞している。日本という国とその文化や習慣、日本人の特徴や性格を知り尽くした元外交官だ。

マロット氏が初めて日本を訪れたのは1969年。アメリカでは、日本に関する情報がほとんどなかった時代だった。羽田空港に到着すると、さっそく驚かされる出来事があったという。空港バスにバックカメラが搭載され、運転手が画面を見ながら後退していた。当時はアメリカでまだ一般的ではなかった技術で、マロット氏は強い衝撃を受けた。こうした体験に加え、アメリカでは見たことのない日本製品の数々に触れたことが、その後の人生や日本へのイメージに大きな影響を与えた。

そんなマロット氏は、日本人の性格を「非常に細部にまで気を配り、控えめで間接的に意見を伝える」と表現した。一方で、アメリカ人の性格については「物事の全体像を重視し、細かいことはあまり気にせず、直接意見を述べる」とし、その違いを強調した。

日本人の交渉スタイルや意思決定のアプローチについて、マロット氏は「情報収集マシーン」と表現し、決断前に細部まで徹底的に確認する傾向を指摘した。

「日本人は、アメリカ人と比べると、決断が非常に遅い。それは、すべての情報を集めて精査し、多くの質問を重ね、何度も会議を行うためだ。多くの日本人がリスクを嫌うからだ」と話し、その結果、情報を分析しすぎて意思決定ができなくなる「分析麻痺」に陥る可能性があるとした。さらに、「決断するのを恐れるのは、それが間違っていたら批判されるからだ」とし、この姿勢はまさに「石橋を叩いて渡る」状態だと説明した。

しかしマロット氏によれば、こうした慎重さは、テクノロジーが絶えず変化する現代社会ではもはや通用せず、多くの日本人がよりリスクを取る傾向が出始めているという。

阿部貴晃(海外書き人クラブ)

アメリカ在住のジャーナリスト。日系メディアのワシントン支局で20年以上、国際関係を中心に報道し、ホワイトハウスや米国の政治・社会、国際情勢を取材。2025年4月よりワシントンDCを拠点にフリージャーナリストとして活動。日米関係やワシントンDCから見たアメリカについて執筆している。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員
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