歯を磨き、フロスを使うことで、心血管疾患のリスクが下がることが明らかになっている。MirageC/Getty Images腸内フローラなどの腸内環境が注目を集めているが、次にブームが来るのは口腔内マイクロバイオームかもしれない。口の中を清潔に保つことで慢性疾患のリスクを下げられるという証拠が増えつつある。アンドリュー・ヒューバーマンのような長寿についての有力な発信者たちも、その重要性を広め始めている。
腸内にいる細菌、つまり腸内細菌叢(腸内フローラ)を大切にすることで、寿命を延ばす助けとなる可能性があることをすでに知っているかもしれない。しかし、健康との関係で今注目を集めているのは、それとは別の微生物の集まりだ。
研究者たちは数十年前から、歯周病や虫歯、歯の欠損といった問題を抱える人々が、脳卒中を起こしたり、心血管疾患、がん、糖尿病、肥満、関節リウマチ、アルツハイマー病などの慢性的な病気を発症しやすいことを知っている。
「私はこの分野に50年以上携わっている」とデトロイト・マーシー大学歯学部(University of Detroit Mercy School of Dentistry)で口腔疾患を研究するジュディス・ジョーンズ(Judith Jones)教授はBusiness Insiderに語った。
「100歳を超える人たちは、平均寿命より早く亡くなる人たちよりも歯の本数が多い」
ジョーンズ教授によると、その理由は「複雑」なものだという。
「単純な科学の話ではない」
例えば、歯を失うことは自尊心や生活の質に影響を及ぼす。自分の見た目に自信が持てなくなると、他人と交流する機会が減りやすくなる。またナッツ類、野菜、赤身のたんぱく質などの栄養価が高く噛みにくい食物を摂ることが難しくなると、食生活のバランスが崩れてしまう可能性もある。
しかし、最近の研究が示しているのは、口の中に住む微生物(口腔内マイクロバイオーム)が、これまで考えられていた以上に我々の健康に大きな影響を与えている可能性があるということだ。
より多くの歯が残っている人の方が長生きする傾向があると、研究で明らかになっている。cometary/Getty Imagesブライアン・ジョンソンとアンドリュー・ヒューバーマンも口腔の健康について言及
長寿に関する分野の情報発信を積極的に行っている人たちの中には、口の中を清潔に保つことで寿命が延びるという考えを広めている者たちがいる。
2025年3月、テック企業の元CEOで現在はバイオハッカーとして知られるブライアン・ジョンソン(Bryan Johnson)は、舌のクリーニングやティーツリーオイルを使用するなど慢性疾患の予防を目的とした9段階のオーラルケア「プロトコル(protocol)」を自身のニュースレターで紹介した。
その数日後、アンドリュー・ヒューバーマン(Andrew Huberman)は、自身の人気ポッドキャスト「ヒューバーマン・ラボ(Huberman Lab)」で、口腔マイクロバイオームと身体的・精神的健康との潜在的な関係について語った。
また業界のニュースレター「フィット・インサイダー(Fitt Insider)」は、55億ドル(約7800億円)規模の口腔ケア市場に、マイクロバイオームに焦点を当てた商品が登場していることを報じている。商品の中には、顧客の口腔内にいる微生物に基づき成分を個別に調整したプレバイオティクス(腸内や口腔内に住む善玉菌)入りの歯磨き粉などがあるという。
マーケットリサーチ会社、ミンテル(Mintel)の報告によると、2023年から2024年にかけてアメリカの口腔ケア製品の売上は6.3%増加し、108億ドル(約1兆5327億円)だったのが122億ドル(約1兆7314億円)に達したという。腸などの消化器系の健康商品が世界的に売れて市場が拡大したように、今度は口の中の健康に関連した商品でも同じような成功が得られることを投資家たちは期待している。この市場はフォーチュン・ビジネス・リポート(Fortune Business Reports)の市場調査では、2019年の379億3000万ドルから、2027年には719億5000万ドル(約10兆1880億円)に達すると予測されている。
口腔衛生環境が良くないと、複数の慢性疾患のリスクが増加する原因になる。RealPeopleGroup/Getty Images
