ロングウェア(長時間持続)メイクはコロナ禍のマスク需要を背景に進化を遂げ、現在はコスト意識の高い層から高い持続性と価値を評価される主要カテゴリーへと成長している。
サチュやワンダースキンのようなブランドが、TikTokで視覚的に映える「剥がすタイプ」の製品を投入し、ビリー・アイリッシュなどの紹介で爆発的な人気を得ている。
「クリーンガール」風の薄化粧から、よりカラフルで創造的な表現を重視する美学への回帰が進んでおり、高性能で落ちにくいメイク製品への需要がさらに加速している。
インフルエンサー、ハンナ・キャンベルがメイクのレビューを投稿すると、49万2000人のTikTokフォロワーから質問が殺到する。キャンベルはこれらの質問に答える準備ができている。実のところ、彼女は自身の代名詞ともいえる「ウェアテスト(耐久テスト)」動画のなかで、疑問のほとんどに先回りして対処しているのだ。
動画では、メイク製品がどれくらい持続するかを示すために、一日中経過をチェックする。彼女はいつも、お決まりの免責事項からはじめる。「容赦なく正直なレビューへようこそ。……そして、いつものように、ここでは正直な意見しかいわない。みんなも知ってのとおり、私はPRリストから外されることを恐れていないからね」。
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「リップ製品なら、『色落ちはするか?』『どれくらい速く落ちるか?』『ツヤはどれくらい持続するか?』『色はどれくらい残るか?』のような具合だ。製品によって異なるが、誰もが知りたい特定のポイントを持っている。時々カバーしきれないことがあると、コメント欄で『これはどう?』『あれはどう?』と聞かれるから、私は答えているのだ」とキャンベルはGlossyに語った。
「容赦なく正直なレビュー」が求める持続力
マスク、会議、ディナー、デートに耐えられる持続力の高いメイクは、日常の消費者にとってもっとも関心の高いトピックになりつつある。それはもはや、レッドカーペットで写真を撮られるセレブリティだけの関心事ではない。
ロングウェア(長時間持続)メイクのルーツは舞台メイクにあるが、1970年代から80年代にかけて、化粧品化学において皮膜形成ポリマーやシリコンが使用されるようになり、現代的な形態がかたちづくられはじめた。これにより、より長持ちが可能になったのだ。
1997年に初めて発売され、2026年リニューアルされたエスティ ローダー(Estée Lauder)の「ダブル ウェア ステイ イン プレイス メークアップ(Double Wear Stay-in-Place Foundation)」や、レブロン(Revlon)の「カラーステイ(ColorStay)」ファンデーションなどの製品が、時代を定義する助けとなった。今日のポリマーはさらに進化しており、新世代の長時間持続処方に役立っている。なかには、コロナ禍のマスク着用に耐えるように設計されたものもある。
マスク時代からはじまった「ワンダースキン」の快進撃
2020年、コロナ禍のマスク着用が最盛期だった頃、一日中持続すると主張する拭き取り式のリップステイン(リップティント)を携えて、ワンダースキン(Wonderskin)がキッチュな新参者として登場した。
以来、同ブランドは2025年5月に5000万ドル(約75億円)のシリーズA資金調達を実施し、前述の22ドル(約3300円)の「ワンダー・ブレイディング・オールデイ・リップステイン(Wonder Blading All-Day Lip Stain)」を含む2つのSKUが、2025年9月にセフォラ(Sephora)で発売された。同小売店では9月にもさらなる発売が予定されている。
自社のeコマースサイトにおいて、同ブランドは眉、ベースメイク、チークなどの持続メイクにも拡大している。「マスクを着用しなければならなかった看護師や医師など、世界が狂気じみているなかで誰もが、きちんとした正気な姿でいることを望んでいた。しかし、当時の状況では通常のメイクをすることは許されなかったのだ」と、ワンダースキンの共同創設者兼ブランドディレクターであるマリーナ・カレンキツ氏は語る。
2023年、アルタ・ビューティー(Ulta Beauty)で販売されているサチュ(Sacheu)は、14ドル(約2100円)の「ピールオフ・リップライナー・ステイン(Peel Off Lip Liner STAY-N)」を発表した。
この製品は、ブランドの共同創設者でありインフルエンサーでもあるサラ・チュン氏が、2022年にピールオフ眉ティントをリップライナーとして使用する動画を投稿したことから生まれた。現在、投稿は210万回以上の再生数を記録している。
CMOのミシェル・ミラー氏によれば、反響に基づいて、ブランドはすぐに唇専用に設計されたバージョンを考案した。それ自体でも成功を収めていたが、2024年にシンガーソングライターのビリー・アイリッシュが「GRWM(身支度動画)」で紹介した。そこから「すべてが変わった」とミラー氏は語る。今日、動画は1億6400万回以上再生されている。
ビリー・アイリッシュが変えた「サチュ」の運命
サチュのリップステインは、TikTokに完璧に適合するように設計されている。ユーザーは製品を唇に塗り、15〜20分間乾かしてから剥がすと、色が定着して残る。これが視覚的にソーシャルメディア映えするのだ。イピットデータ(Yipitdata)によると、サチュの製品は現在、アルタとターゲット(Target)においてナンバーワンのリップライナーとなっている。
サチュやワンダースキンのようなバイラルブランド以外にも、最近の相次ぐ新製品の発売は、長時間持続化粧品の人気が定着していることを示唆している。ここ数週間だけでも、ディブス(DIBS)が26ドル(約3900円)の「クールブラッシュ・チークステイン(Cool Blush Cheek Stain)」を、クルフィ(Kulfi)が24ドル(約3600円)の「ラッシリプス・ステイニング・リップライナー(Lassi Lips Staining Lip Liner)」を発表した。
さらに、サマー・フライデーズ(Summer Fridays)は22ドル(約3300円)の「フラッシュド・リップステイン・12HR・トランスファープルーフ・リップティント(Flushed Lip Stain 12HR Transfer-Proof Lip Tint)」を投入。これは、フーダ・ビューティー(Huda Beauty)やカバーガール(CoverGirl)などのマーカー型のリップ製品の流れをくむものだ。
ビオレットFR(Violette FR)の29ドル(約4350円)の「リップネクター・ハイドレーティング・リップステイン(Lip Nectar Hydrating Lip Stain)」はシェード展開を拡大し、ラネージュ(Laneige)は23ドル(約3450円)の「ジュースポップ・ボックス・リップオイル・ステイン・12HR・ハイドレーティング・ティント(JuicePop Box Lip Oil Stain 12HR Hydrating Tint)」を発売した。
創設者兼CEOのプリヤンカ・ガンジュー氏によると、クルフィの新しいライナーは、同社の2年前のヒット製品からインスピレーションを得たものだ。「我々は常に顧客のフィードバックを大切にしている」と同氏は述べ、リップオイルの細いアプリケーターをライナーのように使って唇を染めている顧客を目にした時、より長持ちするライナーをつくるべきだと確信した。
「剥がすタイプのライナーと比較して、繰り出し式で削ることもでき、とにかく簡単なジェルペンシルがいかに使いやすいかなどのフィードバックを得ている。唇が薄い人や年齢を重ねた人にとって剥がすタイプは、思いどおりにならず、唇に線が入ってしまうため、適していない。我々の製品は、まさにそうした悩みを解決するものだ」と彼女は語った。
ディブスはすでにアルタにおいてナンバーワンの高級チークを販売しており、同小売店でもっとも急成長しているブランドだ。
共同創設者兼CEOのジェフ・リー氏は、新発売のリキッドチークステインについて、「チークは非常に競争の激しいカテゴリーだが、すでに素晴らしい人気商品があるため、リキッドチークに再参入することに非常に意欲的だった。チークにはリキッドやクリームがあるが、チークは最初に色落ちするものだと一貫したフィードバックを受けており、新製品の原点となった」と語る。
また同氏は、同ブランドの既存のスティックは優れた持続力があると信じているが、「実際、お客様はあらゆる形態のチークを求めており、当社はまだリキッドやクリームで対応していない」
「クリーンガール」の終息と表現への渇望
データツールのスペイト(Spate)によると、「リップステイン」という用語は、Google検索、TikTokの視聴回数、インスタグラムの投稿において前年比59.6%の成長を見せており、同社はこれを「非常に高い人気」と定義している。
ハンナ・キャンベルがサマー・フライデーズの新作リップステインと、同時に発売されたライナーについて個別の動画を投稿した際、ステインに関する動画は26万3000回以上の再生を記録したが、伝統的なライナーに関する動画は8万7000回だった。
スペイトはGlossyに対し、サチュの人気はプラットフォーム全体で前年比122.3%増、ワンダースキンは49.2%増、クルフィは87.7%増となっていると語った。これら3つのブランドはいずれも、スペイトの人気度指数で「非常に高い人気」と評価されている。
同社の市場分析アナリストであるマチルダ・リバ氏は、「これは消費者の間で非常に高い認知度を示している」と述べた。リバ氏によると、これらのスコアの大部分はTikTokによるものであり、これらのブランドに関する話題がTikTokプラットフォーム上でもっとも活発に交わされていることを示していると。
長時間持続メイクの台頭にはいくつかの要因がある。2026年においては、単に「マスクに付かない」以上の意味を持っている。リー氏は、価値に対して非常に敏感な、コスト意識の高い顧客を挙げている。「顧客はますます教育されており、どれだけの製品が入っていて、どれくらい持続するかに注意を払っている」。
また、ガンジュー氏は「クリーンガール(clean girl)」メイクの緩やかな終息を指摘した。かつての2016年を彷彿とさせるような、よりカラフルな美学が戻ってきているのだ。「トレンドは常に変化しており、人々はメイクを通じてより多くの表現を求めている。よりクリエイティブで、より高性能なメイクを望んでいるのだ」と彼女は述べた。
レアビューティーのソフトピンチリキッドブラッシュのようなほかのリキッドブラッシュの場合と同様に、ディブスの新しいチークステインも少量で非常に長持ちするため、1.05液量オンス(31ml)は見た目以上に多くの製品量です。
さらに、一度サチュの剥がすタイプのような新しい製品の挙動に慣れてしまえば、顧客は使い続けるとミラー氏は説明する。「百聞は一見に如かずだ。結果は一目瞭然だからね。手にキスをしても、顔を拭いても、マスクをつけても落ちない。となれば、『なぜいままでこれをやっていなかったんだろう?』と思うはずだ」。
[原文:Glossy Pop Newsletter: Inside the new era of long-wear makeup]
Sara Spruch-Feiner(翻訳・編集:杉本結美)
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