社説/多年度予算措置の功罪 予見性向上し投資の呼び水に

高市早苗政権が単年度の予算措置を見直し、複数年度で予算執行できる仕組みづくりに着手した。半導体やエネルギー、防衛関連など中長期かつ巨額投資が不可欠な分野との相性が良く、企業が安心して投資できる環境整備を急ぐ。財政規律の維持は当然ながら、国としてのスタンスを明確にすることは企業の投資判断でプラスに働く。投資の“呼び水”にしたい。

わが国の予算措置は「単年度主義」が原則だ。会計年度ごとに国会の審議を経て予算が編成・執行される。毎年、国会でのチェックがされることで予算の透明性や柔軟性は確保できる半面、政策の継続性が損なわれるほか、長期投資との親和性が低く、企業側では将来投資に二の足を踏むことも少なくない。

多年度予算は単年度主義の弱みを解消し、特に長期投資が迫られる分野については相性の良さが指摘される。現在、注力している半導体関連や環境・エネルギー、防衛産業は長期で巨額投資が不可欠だけに、次年度以降の支援が見える多年度予算により、投資の予見可能性は向上。安心して投資できる環境が整うことになろう。

一方、多年度予算で問題になるのが財政規律の維持だ。将来の歳出が固定化し、見直しも難しくなることから、政府債務が膨張しやすいとの懸念がある。また、国会での審議も形式化され、政策の失敗を是正しにくい側面もある。制度設計を誤ると単なる「財政悪化装置」になりかねないだけに、中間評価制度の徹底や「期限付き・サンセット条項」といった予算の見直しを柔軟にできるような制度づくりを同時に進める必要がある。

半導体を中心とした技術基盤の強化やサプライチェーン(供給網)の整備は国家戦略に位置付けられている。国家資本主義がまん延し、国力が経済力に直結する時代を迎えた現在、政策の安定性は日本企業にとって重要な競争条件の一つになる。国の支援の継続性が確認できれば、なかなか進まない国内回帰や国内投資が活性化する可能性を秘める。「強い経済」に向けた呼び水にしたい。

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