FRaUが発信し続けるSDGsの思いに共鳴する企業や専門家を招き、サステナブルな情報共有と異業種間の交流の場として開催してきた「FRaU 共創カンファレンス」。第3回となる今回は2025年12月19日に開催されました。

2026年に向けてFRaUが掲げるテーマは「日本における“もったいない”がつくる未来」。このテーマに沿って、サステナブルな活動を続ける企業や専門家に、それぞれの立場から講演していただきました。前半は、ごみ清掃芸人としても知られるマシンガンズの滝沢秀一さんが登壇。「ごみは資源の宝庫。ごみと“もったいない”を考えるセミナー」と題し、すぐにでも見直したくなるごみに対する意識や出し方が語られました。

後半は「“もったいない”ビジネスを成功させるヒントと決め手」をテーマに、トヨタアルバルク東京の栗盛謙さん、キリンビールの資逸晴亮さん、花王の田中泉さんが登壇。それぞれの企業が“もったいない”を軸に行う取り組みや思いを紹介しました。

本記事では、そのなかで花王の取り組みをレポート。化粧品事業部門(現:ハイジーンリビングケア部門所属)の田中泉さんが、KANEBOブランドで行っている「廃棄されるはずだった化粧品を、もったいないと思うだけでなく、新しいアイデアや企画に変える」取り組みについて語っていただきました。

●田中泉さん
2012年花王株式会社にキャリア入社。化粧品事業にて複数ブランド (SOFINA、est、アルブラン)の ブランディング・マーケティングを担当。
2022年KANEBOではブランドのESG活動も積極的に参加。(現:ハイジーンリビングケア所属)

田中泉さん:私が所属する花王グループには、KATEやRMK、KANEBOなど、さまざまなブランドがあります。花王グループでは、お客様一人ひとりの好みに応えるため、アイシャドウやチーク、アイブロウだけでなく、年間で数百色もの商品を開発しています。商品開発では、色や品質にとことんこだわるため、最後の最後で商品化されなかった色がどうしても出てしまいます。これまでは、そうした色を廃棄するしかありませんでした。

そこで、花王では約3年前から、商品にならなかったアイカラーなどをアップサイクルし、絵の具として生まれ変わらせる取り組みを始めました。株式会社モーンガータさんと協力して、「SminkArt* ときめくペイント」という商品として、廃棄予定だったアイカラーなどを絵の具に加工しています。 

*株式会社モーンガータの登録商標

アップサイクル絵の具商品にならなかった化粧品を使って作られたアップサイクル絵の具。 提供/花王

この絵の具の魅力は、化粧品ならではのパールのきらめきや、廃棄される予定だった商品を使っているため、同じ青色を作っても毎回微妙に違う唯一無二の色になることです。通常の絵の具とは一味違った彩りを楽しむことができます。

私が所属するKANEBOブランドは、「I HOPE.」というブランドパーパスを掲げています。「美」そのものを追いかけるのではなく、「希望」を伝えるブランドとして、年齢を問わず人々の希望を引き出していきたいという思いを大切にしています。

また、KANEBOでは「5つのACTION」というブランドとして大切にしている取り組みがあります。その中のひとつに、子どもたちが「自分の力で未来を切り開けるようにサポートする」という考え方があります。

KANEBOが重視する「5つのACTION」提供/花王

その考えを具体的に形にするために、花王で取り組んでいるアップサイクル絵の具を使ったアートイベントを、KANEBOで開催しています。このイベントは、2022年から2024年までの3年間、ユニセフが定める11月20日の「世界こどもの日」に合わせて実施してきました。

田中泉さん:普通に絵の具でお絵描きするなら、学校や習い事の教室でもできると思うのですが、化粧品から生まれたアップサイクル絵の具という、普段触れたことのない画材を使って描くことで、子どもたちが普段では描けない場所や素材に自由に表現できる機会を提供したいと思いました。そうすることで、未来を担う子どもたちが想像力を広げ、自分の個性を存分に表現できる場になればと考えています。

たとえば、普段は見上げるような壁に描いたり、クッションやアクリル板のような素材に描いたり、自分だけの色を二色、三色混ぜて作ったりと、日常ではできない体験を通して、子どもたちの創造力を刺激できるようにしました。

絵を描く子ども提供/花王

絵を描く子どもたち提供/花王

一年目は「PAINT HOPE ON WALL」として、壁一面に絵を描ける空間を作りました。二年目は「PAINT HOPE ON TREE」として、巨大なクリスマスツリーをみんなで作る共作型のイベントに。三年目は「PAINT HOPE ON SPACE」として、広いスペースにて床にも描けるようにして、のびのびと表現できる空間を用意しました。

さらに、プロのアーティストの方もお招きし、絵の描き方を学びたい子どもたちには「こんな風に描くと面白いよ」といったアドバイスもしていただきました。そのおかげで、毎回多くの親子が参加して楽しめるイベントになりました。

2022年イベント「PAINT HOPE ON WALL」2022年イベント「PAINT HOPE ON WALL」 提供/花王

2023年イベント「PAINT HOPE ON TREE」2023年イベント「PAINT HOPE ON TREE」 提供/花王

2024年イベント「PAINT HOPE ON SPACE」2024年イベント「PAINT HOPE ON SPACE」 提供/花王

また、出来上がった作品を捨ててしまうのはもったいないので、花王本社のエントランスに飾って再利用しています。社員の方にもイベントの存在を知ってもらえると同時に、定量的な成果が見えにくいこうした活動も、社内認知をあげ、かつ社員の方にも楽しんでもらいました。

花王本社のエントランス花王本社のエントランス 提供/花王

このプロジェクトは、チームやブランドのみんなで「やろう」と立ち上げました。「I HOPE.」というブランドパーパスは、年齢や性別に関係なく、誰にでも希望を引き出したいというユニークな考え方です。まずは小さく試してみて、成功すれば続ける。そんな考えで、1年目はスタッフを絞って挑戦しました。おかげで成功体験を作ることができ、2年目、3年目には社内公募でスタッフを募り、規模を大きくしていきました。

田中泉さん:こうしたアップサイクル活動を進めていると、「自分の国でもやりたい」という声が、KANEBOの商品を販売しているアジアの国々から届くことがありました。そこで、どの国で実施するのが良いか調べたところ、タイが最適だと考えました。タイではSDGsや子どもの成長、環境への関心が非常に高く、ブランドが実現したいことにも共感をいただけそうだったからです。

2025年1月、タイのパホンヨーティン駅で、アップサイクル絵の具を使ったお絵かきイベントを開催しました。この駅はアートが盛んなことで有名で、壁や駅構内の広場に多くの作品が飾られています。エスカレーターを上がったすぐの広場に特設のスペースを作り、子どもたちが自由に描けるイベントにしました。日本の子どもたちもタイの子どもたちも、笑顔でのびのびと楽しんでくれ、本当に笑顔は万国共通だと実感しました。

さらに、絵の具だけでなく、アップサイクルの輪はインクにも広がっています。「ecosme inkⓇ」というアップサイクルインクは、KANEBOの公式オンラインショップの配送箱やバースデーカードに印刷して活用しています。バースデーカードでは角度によってキラキラと光るので、インクの繊細な魅力も感じられる仕上がりになっています。

ecosme inkⓇ提供/花王

2025年には、子どもの明るい未来を作りたいという思いを共有するFRaUさんの「FRaU×KANEBO こどもコンテストワークショップ」に協賛しました。花王の研究員がアップサイクル絵の具について紹介したほか、漫画家の深谷かほる先生とアートワークショップを実施したり、今までとは違った形でのアプローチも実現しました。

「FRaU×KANEBO こどもコンテストワークショップ」の様子ワークショップでは、化粧品研究所研究員の河崎梓さんが「この絵の具って何からできてるの?   化粧品は絵の具にだって変身できる!   メイクの力は無限大!」の授業を行いました。 撮影/神谷美寛(講談社写真部)

こうした活動を通じて、KANEBOでは化粧品の無限の可能性を感じています。絵の具という形に変えることで、化粧品とは違う方法で人々にワクワクやひらめき、希望を届けられると考えています。そして、限られた資源を活かすことで、地球にも希望をもたらしていきたいと思っています。

花王株式会社 田中泉さん

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