
写真は金の模造品と米ドル紙幣。2月20日撮影。REUTERS/Dado Ruvic
[5日 ロイター] – 中東の混乱を受けて投資家は先を争って安全な逃避先を求め、ストレス下で本当に安全な資産は何かという議論が再燃している。
ただ、伝統的な逃避先とされた資産の動きは予測不能になっており、選択は難しい。金の価格は急激に変動し、過去1年で人気を失ってきたドルは復活するといった具合だ。
幾つかの「安全資産」の動向比較は次の通り。
◎ドルは試験に合格
今週に入ってそうした「安全資産」の中でドルが最もアウトパフォームしたのは間違いない。
昨年4月のトランプ米大統領による「相互関税」発表で株価が急落した際にドルも売られ、安全資産としての存在に疑問符が付けられていただけに、足元の動きは特筆に値する。
データからは、買い需要があったのはドルの現金で、他のドル建て資産ではなかったことも分かる。
米国はエネルギーの純輸出国なので、北海ブレント価格が1バレル=80ドル超に跳ね上がったような現在の危機は当然追い風になる。
モルガン・スタンレーのFX戦略責任者を務めるジェームズ・ロード氏は「ドルには安全資産としての特徴はあるが、それは特別な文脈においてだ」と指摘。トランプ政権の政策がドルの安全資産的側面を損なってきた以上、常に避難通貨となるわけではないとくぎを刺した。

Chart shows currency declines versus dollar
◎政府債は見向きされず
過去において地政学的ショックが起きた場合、避難資金が流入していた政府債は今回、そうした流れを形成できていない。投資家は政府債について、身を守る資産というよりも物価見通しを主体に取引しているからだ。
ドイツの債務ブレーキ緩和やより幅広い各国の借り入れ増大などに伴って、政府債の魅力が色あせている面もある。
ユーロ圏国債の指標となるドイツ10年国債利回りは今週になって14ベーシスポイント(bp)も上昇(価格は下落)した。
ラスボーンズの債券責任者を務めるブリン・ジョーンズ氏は「ドイツは質への逃避の色合いを持つ投資先だ。しかし長らく続いてきた債券市場の強気局面が幕を閉じる場面で、借り入れを増やしているとすれば、積極的に買いたくはなくなる」と述べた。

A chart showing yields on the 10-year government bonds across Europe
◎金の安全性は盤石
金の安全資産としての信頼度は、この10年間で240%値上がりした点から判断すれば強固と言える。
振れが大きくなっているのは確かで、今月3日も急落した。複数のアナリストはその一因として、中東の紛争が市場心理を悪化させるとの懸念から、投資家が好調な値動きの資産を売って他の資産の損失を穴埋めしている点を挙げた。
ただアナリストによると、インフレや地政学、高水準の債務を巡る懸念が存在する以上、金が安全資産としての地位を失うことはない。
ステート・ストリートは、世界全体の投資ファンドが保有する資産のうち、金の上場投資信託(ETF)の比率は1%未満と、推奨戦略配分比率の5-10%を大きく下回っている点から、金はポートフォリオの観点でなお保有比率が低過ぎるとの見方を示した。
ステート・ストリート・インベスト・マネジメントの金戦略責任者、アーカシュ・ドシ氏は、基本シナリオでは年内に1オンス=6000ドルに達する確率は4000ドルに下落する確率よりも大きいとみている。

The price of gold over a 10-year period.
◎スイスフランと円には試練
長年避難通貨とされてきたスイスフランと円は、今週対ドルでそれぞれ1.2%と0.8%の下落となった。
セントジェームズ・パレスのジャスティン・オニュークウシ最高投資責任者は「バリュエーションの視点で相対的な魅力があるように見えるのは恐らく引き続き円だろう。この環境で守りを提供できる資産として、私にとっては際立った存在だ」と語った。
しかし高市早苗首相が日銀の追加利上げに難色を示したと報道されたことで、円の見通しに付随する何層ものリスクに政治的な不確実性という要素が追加された。
一方で複数のアナリストは、スイス国立銀行(SNB、中央銀行)が過度な上昇を抑制するために介入する用意があると警告しているため、スイスフランの上昇余地は限られると警戒している。
ゴールドマン・サックスのストラテジスト、テレサ・アルブズ氏は「SNB介入リスクの高まりは現在のショックにおいてスイスフランの安全資産という特性を薄める公算が大きい」と予想した。

A chart showing the divergence in safe-haven currencies, with the Swiss franc outpacing the yen
◎ディフェンシブ株も役目果たせず
市場がストレスに見舞われている局面で株式は低調に推移するが、公益や生活必需品といったいわゆる「ディフェンシブ」セクターは比較的下げが小さくなる傾向にある。
ただ今回はそうなっていない。
S&Pの公益株と生活必需品株は今週の下落率がそれぞれ1%と2.8%だったのに対してS&P総合500種は横ばいを維持。欧州でも公益株は3%安、生活必需品株は4.5%安で、STOXX欧州600指数は3%安だった。
これは公益株や生活必需品株の値動きが既に良かったことも一因だ。イランへの攻撃が始まる前まで、ディフェンシブなバリュー株は成長株をアウトパフォームしていた。
テンプルトン・グローバル・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、ジェームズ・ブリストー氏は「現行の金利水準で典型的なディフェンシブ株に投資するなら、相対価格について自らをより強く律する必要が出てくる。例えば私はペプシコ株を保有しており、これは最高のクオリティー企業ではない。だが出発点が非常に低かった。つまりネスレなどの株を買うのと比べて安全性のマージンが違ってくる」と述べた。

Chart shows utility stocks in US and Europe compared to benchmark
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