ユーグレナとサティス製薬、ヒト型含む3種の「超長鎖セラミド」発見 次世代の化粧品原料として実用化へ
ユーグレナとサティス製薬はこのほど、ユーグレナ、オーランチオキトリウム、クロレラの3種の微細藻類から、ヒト型を含む3種の超長鎖セラミドを世界で初めて発見し、特許を出願したと発表した。これらを効率的に取得する独自製法の開発にも成功し、次世代の化粧品原料として、実用化に向けた開発を進めている。
ユーグレナとサティス製薬は、2024年の事業提携以降、それぞれの強みを活かして新しい化粧品の研究開発を進めてきた。
このほど、約30億年前から地球の過酷な環境を生き抜いてきた微細藻類の生命力に着目し、ユーグレナ、オーランチオキトリウム、クロレラの3種の微細藻類から、ヒト型を含む3種の超長鎖セラミドを世界で初めて発見、特許を出願した。
微細藻類は、太古の地球に誕生し、強烈な紫外線、乾燥、酸化ストレス、栄養欠乏といった過酷な環境下で、極めて高度な細胞防御機構を進化させながら現在まで生存している。これまで微細藻類は、油脂や多糖類、タンパク質などを豊富に含む栄養価の高い食品素材として主に注目されてきたが、過酷な環境耐性において重要な役割を果たす細胞膜スフィンゴ脂質「セラミド」に着目した研究は、必ずしも多くはなかった。
ユーグレナとサティス製薬は今回、「外界ストレスから細胞を守るための微細藻類特有のセラミドが存在する」という仮説のもと解析を実施した。
陸上生物において、水分保持と外界ストレス防御は生存に関わる重要課題であり、その解決策としてヒトの皮膚は、高度な角層バリア構造を進化させてきた。その中核を担うのが多種多様な皮膚セラミドだ。
ヒト皮膚に存在する遊離セラミドは、構造や長さの組み合わせにより約20クラスに分類され、鎖長の違いを合わせると1300種以上の分子種が報告されている。特に炭素数が42(C42)や44(C44)といった超長鎖セラミドは、皮膚以外の臓器ではほとんど見られず、皮膚特有のバリア機能を支える要となっている。
一方、太古から地球に存在する微細藻類も、ヒトと同様に乾燥や酸化といった環境ストレスにさらされ続けてきた。そこで、微細藻類が過酷な環境を耐え抜く鍵となった膜脂質構造の中に、ヒト皮膚セラミドと共通する分子特性が存在するのではないかと考え、その分析に着手した。
その結果、ユーグレナからセラミドAS、オーランチオキトリウムからセラミドNDS、クロレラからセラミドAPをそれぞれ検出した。
ユーグレナは、植物と動物両方の性質を持つ特徴的な微細藻類。複数のユーグレナ粉末からアルコールで抽出したセラミドをLC-MS等で分析した結果、動物皮膚に特有なC44のヒト型超長鎖セラミドASの存在を確認した。さらに、独自技術により、本来は微量にしか存在しないこの成分を実用レベルまで増量することにも成功した。
海洋性微細藻類であるオーランチオキトリウムのセラミド分析により、C44のヒト型超長鎖セラミドNDSを発見した。この成分は通常、細胞内で速やかに代謝されるため、自然界で遊離状態として蓄積することは極めて稀だ。

▲微細藻類で確認された特徴的な超長鎖セラミド
微細藻類の中でも古くから研究に用いられているクロレラからは、C44を中心とするヒト型超長鎖セラミドAPが主体として検出された。さらに今回の研究では、C45という特異な構造を有する超長鎖セラミドAPをクロレラから初めて見出し、従来のセラミドとは異なる機序により皮膚ラメラ構造の安定性を高める可能性が示唆された。
また、主要成分であるC44やC45に加え、ほかにも50種以上の多様なセラミド分子が確認され、それらにおいて不飽和型がほとんど存在しないことがわかった。クロレラ特有のセラミドは極めて秩序性の高い組成であり、強固で酸化に強いことが示唆されている。これは、柔軟性よりもむしろ硬さと耐久性が求められた太古の過酷な環境に適応した結果と考えられ、ヒトの皮膚角層に見られる「強固で、低流動性で、酸化に強い」セラミド特性と本質的に共通しており、次世代の化粧品原料として大きな可能性を秘めている。
ユーグレナは、今回の発見は、セラミドが太古より生物種を超えて生存戦略の中で選択されてきた共通の環境適応因子である可能性を示すものであるとし、微細藻類からヒト皮膚と同じ超長鎖セラミドが見出されたことは、種の違いを超えて共通する、環境適応におけるセラミドの重要性を示唆しているとの見解を示した。
皮膚セラミドは、加齢や閉経、季節変化、アトピー性皮膚炎などの要因により量と質の両面で低下することが知られている。特にアトピー性皮膚炎では、セラミド量の減少、セラミド組成の変化、短鎖化が同時に生じ、バリア機能の低下を招く。
これまで化粧品分野では、比較的短鎖な合成セラミド(C36)が主流だったが、これはヒトの皮膚が本来もつ超長鎖セラミドとは構造的に異なるという課題があった。また、植物や真菌由来の天然セラミドも活用されてきたが、含まれる種類が限定的であり、ヒト皮膚セラミドの多様性を天然素材のみで補うことは、これまで困難とされてきた。
今回発見された微細藻類由来セラミドは、C44を主体とする超長鎖構造を有しており、ヒト皮膚セラミドと高い構造的親和性を示している。これにより、角層ラメラ構造の再構築、脂質秩序性向上、水分蒸散量低下、表皮細胞の分化促進、炎症抑制など、多層的な皮膚バリア改善効果が期待される。

▲皮膚セラミドの組成と天然セラミドの供給源
サティス製薬は、これまで植物ヒト型セラミドAP原料、植物幹細胞セラミドNP原料を開発してきたが、今回の研究で、微細藻類から新たな構造のセラミドAPに加え、セラミドASおよびセラミドNDSの抽出にも成功した。これにより、ヒト皮膚セラミドの多様性を天然由来成分で補うという、新しいスキンケアのアプローチが可能になる。
微細藻類において従来注目されてきた油脂、多糖類、タンパク質の活用に加え、新たに超長鎖セラミドを効率的に回収する手法を確立することで、資源の利用効率の向上とサステナブルな産業モデルの構築が可能となるとし、今回の成果は、次世代バイオリソースとしての微細藻類の多段階活用における新たな可能性を提示するものであり、皮膚科学・美容産業における、利活用の方向性を大きく広げるものであるとの見解を示した。
ユーグレナ社とサティス製薬は事業提携以降、それぞれの強みを活かして新しい化粧品の研究開発を進めてきた。サティス製薬はナチュラルで高性能、かつオリジナリティの高い化粧品原料の開発に強みを有し、ユーグレナ社は微細藻類の培養・生産技術を元に、多段階活用を拡張している。
両社は今後も、このセラミド生産技術を起点としてさまざまな微細藻類を活用し、健康および美容分野への貢献を目指していく考えを示した。
