「宇宙港」のトラベルセンターをイメージしたエリアで、宇宙のさまざまな情報を五感を使いながら知ることができる=東京都文京区のSpace Travelium TeNQ(鈴木美帆撮影)
春休みは宇宙へ行ってきます。なんていう時代が来ないとはかぎらない。「宇宙旅行」をコンセプトにした東京ドームシティ(東京都文京区)内の宇宙体感施設「Space Travelium TeNQ」(スペース・トラベリウム・テンキュー)。宇宙に関する知識はもちろん、宇宙飛行士や宇宙開発などあらゆることへの興味、関心を満たしてくれるが、なんといっても目玉は月旅行!? 東京から宇宙旅行へいざ出発。
アポロ11号の音声も
まるで空港のような宇宙船の離着陸情報が流れる「宇宙港」のエントランスから旅行はスタート。トラベルセンターをモチーフにしたエリア「スペースターミナル」では、宇宙のさまざまな情報を見て、触って、遊びながら知ることができる。宇宙の成り立ちはもちろん、「太陽系案内所」では地球を基準とした太陽系惑星などの情報を展示。月と火星の隕石(いんせき)に触ることもできる。手荷物引渡場のような場所に並べられたトランクは、地球で持つと10キロのトランクが他の天体ではどのような重さになるかを体感できる。
さまざまなゲームのほか、宇宙開発のこれまでの歴史とともに火星の塵旋風、月面着陸したアポロ11号からの音声、中性子星が合体するときに起きる重力波、太陽の振動音などを聞くことも。月面や宇宙空間を想定して作られた香りもあり、確かめる術がないからこそ想像する楽しみは尽きない。
自分だけの旅行しおり
「宇宙のくらしガイド」では、宇宙ステーションでの衣食住について実物を交えて紹介。快適に過ごすための生地の素材や宇宙食、衛生用品などには多くの日本企業が参画しており、日用品として技術利用され、販売されているものもある。その技術開発が地球で暮らす私たちにも大きな利便性をもたらしてくれていると思うと、一気に宇宙ステーションでの暮らしが身近に感じる。
診断から自分に最適な旅行先を選び、気になる宇宙食や手荷物に関する情報を集めた自分だけの宇宙旅行のしおりも作れる。もう宇宙旅行への準備は万端だ。
見玉はVR体験
同館の目玉はバーチャルリアリティー(VR)体験による月旅行「THE MOON CRUISE(ザ・ムーン・クルーズ)」。VRゴーグルをかけると視界は発射場へと向かう通路。自ら宇宙船に乗り込み月へ。360度見渡す限りの月の大地と黒い空に浮かぶ青い地球を背景に専用カメラでのセルフィー(自撮り)も可能だ。
乗り物に乗ったり展示を触ったりしながら自由に散策できる。約20分の滞在から帰るころには、次はいつ来ようかと考えてしまうほど宇宙旅行に現実感を覚える。
未知の体験と興奮の後は大画面で宇宙空間を眺めたり、関連書物などを閲覧したりできるラウンジで余韻に浸る。カフェで販売されている「TeNQ地球メロンパン」はすぐに完売するほどの大人気だ。
企画展示では現在、漫画「宇宙兄弟」の「Space Travelium TeNQ 宇宙兄弟展 2026」が開催中。今年は作中で主人公が宇宙飛行士選抜試験に合格し、その弟が日本人として初めて月面に降り立つ重要な年でもある。印象的な言葉やシーンの多い同作だが、「月旅行」へ行った後に見ると、作品をより近くに感じられる。
五感使った展示
「テーマは『宇宙旅行』。宇宙は遠くて関係ないと思いがちだが、自分事に楽しんでほしい」と運営する東京ドーム(同区)の渡辺良佳さん。より宇宙を体験できることを目指して令和6年11月、前施設である宇宙ミュージアムTeNQから生まれ変わった。
学ぶだけではなく興味を持つきっかけとするために、五感を使った体験型展示にこだわった。「地球外で罪を犯したらどの国の法律で裁かれる?」「宇宙人と遭遇したらどうしたらいい?」「月では夏服か冬服?」など、ちょっとした疑問も取り入れ、宇宙の身近さを演出している。
ファミリー層から若者のグループまで幅広い層が訪れる。順路はあるが回遊も可能なため、一周してから生まれた疑問を解消したり気に入った体験を繰り返したりと、時間はいくらあっても足りない。
「月旅行の写真も撮れるのでぜひシェアして」と本当の旅行のような感覚も持ち帰れるのが同館ならでは。「宇宙に詳しくなくても楽しめる仕掛けがたくさんある。宇宙に関連したものは日常にもあるので、もう一歩深いところに興味を持ってもらうきっかけにしてほしい」
宇宙開発やロケットのニュースの裏には膨大な開発秘話とまだ解明されていない無限の空間が広がっている。興味を抱いたその一歩先へ。リアルに迫る宇宙体験に知的好奇心がそそられる。
平日は午前11時〜午後9時、土日祝日は午前10時から。一般平日2500円。(鈴木美帆)
