現代の食生活は、脂肪や糖、でんぷん、塩、乳化剤などの化学添加物を多く含む超加工食品で満ちている。炭酸飲料や包装されたスナック菓子、加工肉などが、その代表例だ。
こうした食品は製造過程で天然栄養素の多くが取り除かれ、かつては人体に接してこなかった成分が含まれることも多い。いまや米国では、超加工食品が成人の平均的な食事の半分以上、子どもの食事の6割超を占めている。
これまでの研究では、超加工食品を大量に摂取する人々は肥満や高血圧、脂質異常といったメタボリックシンドロームの症状を発症しやすいことが示されてきた。また、将来の心血管疾患の強力な予測因子とされる炎症マーカーである高感度C反応性タンパク質の上昇とも関連づけられていた。一方で、超加工食品の摂取量の増加が実際に心血管疾患のリスク増加と関連しているかどうかを直接調査したデータは限られていたという。
こうしたなか、フロリダ・アトランティック大学の研究チームが、米国における全国健康栄養調査(NHANES)のデータを用いた大規模な調査を実施した。このほど発表された研究結果によると、超加工食品の摂取量が最も多い人は、最も少ない人と比較して心血管疾患のリスクが47%も高かったという。
「これらの結果は、今後の研究だけでなく臨床ケアと公共政策にも大きな影響を与えるでしょう」と、チャールズ・E・シュミット医科大学教授で上級学術顧問を務めるチャールズ・H・ヘネケンスは説明する。
偶然では説明できない結果
ヘネケンスらの研究チームは、2021年から23年にかけてNHANESが調査した18歳以上の成人4,787名を対象に、食事内容と心血管疾患に関するデータを詳細に分析した。参加者の平均年齢は55歳で、55.9%が女性だった。
研究者たちは今回、参加者に2日間で摂取した食物をすべて記録してもらい、総カロリーのうち超加工食品が占める割合を算出した。さらに、妥当性が認められている一般的な食品分類システムを用いて、超加工食品を摂取している割合に基づいて参加者を4つのグループに分類した。
なお、今回の研究における心血管疾患の病歴は、自己申告による心臓発作あるいは脳卒中の経験の有無として定義している。また、研究者たちは年齢や性別、人種、喫煙状況、収入などの要因を考慮して分析内容を調整した。
こうした統計的調整を経た後でも、超加工食品の消費量が最も多いグループの個人は、最も低いグループと比較して心血管疾患を発症するリスクが47%も高いことが判明した。研究者たちによると、この差は偶然では説明できず、健康管理において考慮すべき重要な知見になりうるという。
タバコと同じ道をたどるのか
研究者たちは、超加工食品に関連する健康リスクへの認識の高まりが、前世紀におけるタバコと同様のパターンをたどる可能性があると指摘している。喫煙の危険性が広く認められるまでに数十年を要したように、超加工食品への依存を減らすには相当の時間がかかると考えられるからだ。その背景には、食品市場を支配する大手多国籍企業の影響力もあるという。
さらに、多くの人々にとって健康的な食品という選択肢が限られているという現実もある。経済的な制約や地域による食品へのアクセスの格差は、個人の努力だけでは解決できない構造的な問題だ。超加工食品をとりまく状況に対処するには、個人の選択に委ねるだけでなく、健康的な食事を容易にとれる環境をつくることが重要だと、ヘネケンスは強調する。
このほか、米国では大腸がんの発生率が上昇しており、特に若年成人の患者が増加している現状にも、研究者たちは警鐘を鳴らしている。大腸がんのリスク要因の多くは、食事パターンを含め、心血管疾患のリスク要因と重複している。超加工食品の摂取が増えたことが、大腸がんをはじめとする消化器系の疾患を増加させる一因になっている可能性が指摘されているのだ。
臨床現場での対応が急務
こうした知見を裏付けるには、さらに大規模な臨床試験(ランダム化比較試験)が必要になる。それでも医療提供者はすぐにでも行動を起こすべきだと、研究者たちは強調する。禁煙や運動といった従来の生活改善指導だけでなく、日々の食生活から超加工食品を減らすよう患者に助言することを推奨しているのだ。
