Cosmetics by Estee Lauder are displayed at a cosmetics store in a mall in Mumbai

Cosmetics by Estee Lauder are displayed at a cosmetics store in a mall, Mumbai, India, May 28, 2025. REUTERS/Francis Mascarenhas/File Photo

[5日 ロイター] – 米化粧品大手エスティ・ローダーや米高級衣料大手ラルフローレンなどラグジュアリー業界はあらゆる手段を講じて、トランプ米大統領の関税措置による悪影響を振り払いつつ、所得層による分断が進む市場でシェアを獲得しようと躍起になっている。具体的には広告費の増額からテニスのウィンブルドン選手権との提携まで、さまざまな動きが挙げられる。

消費者と直接やり取りする企業は、トランプ関税によって需要が冷え込んだ上に投入コストが上昇し、昨年最も大きな打撃を受けた業種の1つだった。各社は今、状況に対応するため戦略を練り直し、その結果として支出を増やしている。

アパレル、アクセサリー、化粧品などの企業は、高所得世帯を主なターゲットに据え、マーケティングを強化したり、よりプレミアムな製品に資金をつぎ込んだりしている。一方で低・中所得層の消費者は、雇用市場が軟化する中、家賃や食料品価格の上昇に圧迫されている。

高級ブランド「COACH(コーチ)」を傘下に持つ米タペストリー(TPR.N), opens new tabはマーケティング支出を40%ほど増やした。傘下の高級ブランド「ケイト・スペード」に関税の影響が表れ始めているにもかかわらず、主力商品でコーチの主力バッグである「タビー」の好調を追い風に、5日発表した2025年10-12月期決算は利益率が上昇した。
Tapestry’s shares have outperformed other affordable‑luxury peers over the past two years

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コーチは過去6カ月間の広告キャンペーンで、俳優のエル・ファニング、シンガーソングライターの幾田りら、メキシコ系シンガーソングライターのオマー・アポロ、ファッションモデルのKōkiなど、Z世代に人気のセレブを起用してきた。同社によると、同四半期に世界全体で新たに約370万人の顧客を獲得し、その3分の2程度がZ世代だった。

タペストリーのジョアン・クレボイセラ最高経営責任者(CEO)は「こうした投資は当社のブランド構築をさらに確固たるものにするのに役立っている」と述べた。

これらの投資は、関税の影響にさらされた製品が企業在庫に流れ込み始め、関税による影響が今後数カ月でピークに達するとの見通しが広がる中で行われている。

5日株式市場でタペストリーの株価は7%上昇した。

一方、エスティ・ローダー(EL.N), opens new tabやラルフローレン(RL.N), opens new tab、カナダの高級衣料品カナダ・グース(GOOS.TO), opens new tabもタペストリー同様にマーケティング支出を増やしているが、投資家の見方はもっと懐疑的だ。

シンガポールに拠点を置くヤル・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、イリア・キスリツキー氏は「しばらく不安定だった企業については、リスクの高い決算が出てくる可能性がもっと大きい」と指摘。「マーケティング予算という観点では、企業はアフォーダブル・ラグジュアリー(手の届く高級品)分野の需要が低下する可能性を認識しておくべきだ」と述べた。

エスティ・ローダーは、プレミアム香水や化粧品分野に注力し、新たに高級価格帯商品を投入。ステファン・ドゥ・ラ・ファヴリーCEOの下で進めている経営立て直し策の一環として、マーケティングを強化している。同社は需要低迷と原材料コスト上昇で経営が圧迫される状況が数年間にわたり続き、経営再建を図っている。

エスティ・ローダーは、今年後半に関税の影響で年間利益が1億ドル押し下げられ、当四半期の利益率は50ベーシスポイント(bp)低下すると予想している。こうした見通しを受けて同社の株価は5日に20%急落した。

ラルフローレンはウィンブルドンや全米オープン・テニス選手権などのキャンペーンを通じてブランド構築を強化し、四半期の営業コストが前年同期比で12%増加した。支出の増加と北米での厳しい事業環境を背景に、現四半期の利益率は約80―120bp低下すると見込んでいる。

カナダ・グースは四半期利益が市場予想を下回り、株価は急落した。同社は関税の影響を理由に挙げて昨年5月に業績見通しの公表を一時的に停止し、いまだに再開していないが、その一方でマーケティング支出を増やし、製品ラインの拡充も進めている。

BNPパリバ・エクイティ・リサーチのシニアアナリスト、ローラン・バシレスク氏は「投資家に対して、支出の継続的な増加がいずれは正常化し、利益の減少が止まるという信頼感を与えるためにも、少なくとも四半期ベース、できれば年間の業績見通しの公表を再開する必要がある」と指摘した。

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