「甘い香りは苦手」という人も、この新しい潮流には心惹かれるかもしれない。要するに、“バニラ一強”の時代は終わりを告げようとしているのだ。「甘さはもはや最終的な着地点ではありません」とロメロ氏は指摘する。

「食べ物にインスパイアされたノートは、煮詰めたり、焦がしたり、あるいは熟成されたような印象を与え、多くの場合、苦味やアルコール、ドライな質感によるエッジが効いています。グルマンの要素は、単に“心地よさ”を与えるのではなく、香りの骨格をなす“構造的なもの”へと進化しているのです」

期待したいのは、ミルキー、ナッツ、ビター、さらにはセイボリー系(塩味)ノートの台頭。調香師のクリスティーナ・クリスティ氏は、「これらのアコードは、おいしく、抗いがたい魅力を放つシグネチャーを生み出す新しい手法です」と語る。ミルキーなノートは、柔らかくクリーミーなテクスチャーや、温かいハグのようなニュアンスのある甘さを得て、2025年に大きな人気を博した。「フラー(Phlur)」の“Heavy Cream”や「エリス ブルックリン」の“Vanilla Milk”が切り拓いた道を、2026年のフレグランスがさらに進化させていくはずだ。

アーモンド、ピスタチオ、ヘーゼルナッツといったナッツのノートも、グルマンの世界を刺激的なものにしている。「これらはテクスチャー、温かみ、リッチさを加え、フレグランスに奥深さをもたらします」とクリスティ氏。

筆者の経験上、ナッツには特定の香りの官能性を高める不思議な力がある。「トム フォード ビューティ」の“バニラ セックス”に含まれるビターアーモンドのアコードは刺激的なオーラを放ち、「ペンハリガン」の“フォーチュイタス フィンリー”は、スパイス、ピスタチオ、タバコのブレンドが催眠術のような効果を生み出している。

そして、忘れてはならないのがお酒のノートの参入。ラム酒に浸したようなドラマチックで贅沢なアロマ、滑らかなウイスキー、そして、バニラ界隈における2026年のメインストリームとなりそうな、バーボンバニラの香りに要注目だ。このトレンドが気になるなら、「キリアン」の“エンジェルズ シェア パラディ”をチェックしてみて。

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