単身者は老後、国民年金だけで暮らしていくことができるのか。ライターでファイナンシャルプランナーの松田聡子さんは「不可能ではないが、いくつか条件がある。鍵になるのはダウンサイジングした生活を実現するための『習慣』を早い段階に身に付けておくこと」という――。


作業服を着て働く女性

写真=iStock.com/lielos

※写真はイメージです



貯蓄と国民年金だけで一生暮らせるか不安

「老後2000万円問題」以降、「将来、年金だけではきっと暮らせない」と思い悩んでいる人は少なくない。しかし、ファイナンシャルプランナーである筆者のもとを訪れた50代女性(Aさん)の生活は、そんな常識を根底から覆すものだった。彼女の家計を診断していくうちに、少ない年金でも不安なく暮らすためのヒントが見えてきた。


Aさんは地方都市に住む50代半ばの独身女性だ。現在はパートで働いており、将来受け取れる年金はほぼ国民年金のみ。相談内容は「働けなくなったら、国民年金だけで生活できるでしょうか」というものだった。


資産状況を伺うと、住まいは持ち家で親から相続した築20年の戸建て。住宅ローンの残債はない。金融資産は約400万円。老後資金としては少ないように思えたが、内訳を聞くと現金預金だけでなく株式も含まれていた。株主優待がもらえる銘柄を中心に保有しているのだという。


さらに65歳以降に受け取る年金の見込額を聞くと、月額約7万円とのこと。彼女はかつて自営業の男性と結婚して事業を手伝っていたが、数年前に離婚している。結婚前に会社員経験はあるものの、短い期間だったため、厚生年金はほんのわずかだ。つまり、Aさんの老後の年金は、「ほぼ国民年金だけ」というわけだ。


また、Aさんには元夫との間に成人した子どもがいるが、今後、一緒に暮らす予定はないという。連絡は取り合っているが、子どもに老後の面倒を見てもらうつもりも、財産を残すつもりもないと考えている。いざというときに頼る家族もなく、現時点の金融資産は400万円で、将来の年金は7万円。普通に考えれば、生活していくのは難しいだろう。ところが、Aさんに家計簿を見せてもらって、筆者は見込み違いをしていたことに気づかされた。


手取り10万円でも貯蓄ができる家計とは?

Aさんは現在、近くの工務店にパート勤めをしていて、手取りで月10万円ほどの収入がある。そして実際の生活費はそれを大きく下回っていた。


【図表】パートで働くAさんの1カ月の家計簿(概算)


月によって若干のばらつきはあるものの、毎月6万円から7万円程度で生活できている。参考までに、総務省の家計調査(2024年)によれば、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は平均で約15万円だ。彼女の支出はその半分以下ということになる。多くの人は「収入が少ないから貯蓄できない」とこぼす。しかしAさんは手取り約10万円のパート収入から3万円を貯蓄に回し、その残りで生活している。3万円を貯蓄した残りでやりくりすることは、それほど難しくないという。


Write A Comment