PROFILE: 遠藤宗/社長 COO遠藤宗/社長 COO

PROFILE: (えんどう・はじめ)1973年9月10日生まれ、静岡県出身。ヤナセ、船井総合研究所、たしろ薬品などを経て、2007年「アットコスメストア」の開業に伴い設立されたコスメネクスト(現アイスタイルリテール)取締役に就任し、アイスタイルグループに参画。2014年コスメネクスト社長を経て、22年9月から現職
PHOTO : HIRONORI SAKUNAGA

香港での旗艦店開業や共創型イベント「トーキョービューティーウィーク(TOKYO BEAUTY WEEK)」の立ち上げなど、2025年はアイスタイルにとって次の成長に向けた布石を打つ一年となった。一方で、足元の好調さに安住することなく、中長期の「非連続な成長」をいかに実現するか。意識はすでに、未来を切り開く次の一手へと向けられている。

次の10年を見据えた変革フェーズへ

WWD:2025年は大型の取り組みが相次いだ。

遠藤宗社長COO(以下、遠藤):直近では香港での旗艦店の開業をはじめ、次の一歩を踏み出した年となった。各事業はいずれも成長を遂げ、中長期計画に沿って順調に推移しているという手応えもある。一方で、中核事業である「アットコスメ(@COSME)」を含め、現状のビジネスモデルの延長で、10年後も本当に成長していられるのか、経営として改めて問い直す局面にきている。海外の旗艦店の出店は大きな挑戦ではあるが、あくまで想定内の取り組みだ。持続的な成長を実現するためには、既存の延長線ではなく、どこかで非連続的な成長を描く必要がある。こうした課題意識を踏まえ、26年は「変化」に向けて本格的に動き出す。

WWD:11月に開催したビューティイベント「トーキョービューティーウィーク」はこれまでにない挑戦となった。

遠藤:ブランドや行政など、多様なステークホルダーが協働する「トーキョービューティーウィーク」は、共創型の枠組みで次の時代のビューティカルチャーを世界に発信することを目的としている。「ビューティの東京」という構想のもと、日本のビューティ産業全体の底上げを図る取り組みだ。今回は準備期間が短かったが、来場者、参加ブランドの双方からポジティブな反応が得られた。26年は初頭から準備を進め、完成度を高めていきたい。ファッションとビューティの距離をどう縮めるか、異業種や街を巻き込んだ議論についてもさらに深めていく。

WWD:コンサル事業にも本腰を入れる。

遠藤:「アットコスメ」には膨大で有用な口コミデータが蓄積されている。B2Bの新サービス「アットコスメ コパイロット」は、そうしたデータの中から、口コミに特化したAI分析ができ、マーケティングの意思決定に活用できる形で可視化するツールだ。その上で、さらに踏み込んだ分析や示唆が必要な領域については、コンサルティングで対応するという流れを構築していく。単なる業務効率化ツールではなく、「誰に、何を、どのタイミングで届けるのが最適か」を判断するための基盤にしたい。

WWD:AI活用を強めていく方針か。

遠藤:AIに任せるべき業務は確実に存在しており、いま改めてその活用領域を見極めるフェーズに入っている。特に社内オペレーションの効率化において、AIは非常に有効な手段だ。一方で、情報の真偽が判別しにくくなっているという課題も無視できない。アイスタイルのビジネスは、ユーザーやブランドパートナーとの信頼の上に成り立っている。その信頼を裏切るようなAIの使い方は、絶対にしない。生活者とのフロントにどのように導入するかについては、慎重に判断していく。店頭のポップや演出といったライブ感は人が生み出すものだ。リアルな世界観はAIでは代替できない。ウェブとリアル店舗の両方を持つことは、奪われない価値である。

WWD:26年の重点テーマは。

遠藤:足元で優先度が高いのは引き続き、B2Bビジネスの進化だ。「アットコスメ コパイロット」やコンサルティングサービスはもちろん、蓄積された生活者の行動データをもとに個々のユーザーに必要な情報を適切に届けるCRM的なサービスを、ブランドと生活者双方にとって有益な形で実現したい。

WWD:店やECの在り方を、どう描いているか。

遠藤:店舗については、新規出店や既存店の売り場面積の拡張を進める。前述の通り、これまでの定石にこだわらず、フレグランスやヘアケアなど新たなカテゴリーの強化や、より進化した体験を作っていく必要がある。ECも同様で、抜本的な進化が必要だ。中のシステムは長く変わっておらず、基幹システムの刷新にすでに動き出している。成長を受け止める受け皿が弱ければ、成長そのものが止まってしまう。次に狙う成長は、これまでの受け皿では受けきれない。守りを固めながら攻める、その両立が不可欠だ。

WWD:組織文化の課題は。

遠藤:もっと「変えていい」という意識を組織に根付かせたい。アイスタイルにとってユーザーやブランドからの信頼はなにより重要だが、それが必要な変化を妨げる盾になってはいけない。よりよいサービスや事業を目指すために必要であれば、これまで守ってきたルールも変えて良いし、変えるべきだ。そのためには、経営側も変わる姿勢を示さなければならない。AIの活用などによって人がやらなくていい仕事を減らし、その分、変革に向き合う仕事に時間を使える状態をつくる。26年は、組織・事業の両面で次の10年を見据えた変革の端緒としたい。

個人的に今注目している人

YouTuber たそがれもーどさん

温泉が好きで月に一度は必ず訪れている。その中でYouTubeで温泉と食を軸にした旅を発信する「たそがれもーど」に注目しており、次はどこを訪れるのか、その行き先を追うこと自体を楽しんでいる。実際に温泉選びの参考にすることも多く、昨年は北海道・養老牛温泉の源泉掛け流し宿「湯宿だいいち」を訪れたが、泉質が最高だった。

COMPANY DATA

アイスタイル

化粧品メーカーに勤務していた山田メユミ(現取締役)が自身のメルマガをきっかけにコスメ・美容の総合サイト「アットコスメ」を開設。事業化のため吉松徹郎(現会長CEO)と共同で1999年7月にアイスタイルを設立。2002年にEC事業、07年に店舗事業を開始。12年に東証一部上場。25年6月期の業績は売上高が687億円、純利益が23億円だった。従業員数は539人(単体、25年6月末時点)

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