PROFILE: (おおにし・ようへい)2005年、立命館大学在学中にアパレルモバイル通販事業とインターネット広告代理事業の個人事業主としてY.B.Oを創業。07年3月にI-neを設立。デジタルを中心とするマーケティング戦略が奏功し、数々のヒットコスメを世に送り出している
PHOTO : KOJI SHIMAMURA
ヒットを生み出す巧みな製品開発と挑戦を続ける“ベンチャー精神”を武器にビューティ業界で着実に存在感を強めているのがI-neだ。ヘアケアや美容家電のみにとどまらず、近年はスキンケアやインナーケア、ライフスタイルなど多様なカテゴリーにも進出する。主力に次ぐ、第3、第4の柱が着実に育ちつつあり、成長の裾野を広げている。
「原点回帰と進化」で
I-neらしさをもう一度
WWD:2025年は多領域でブランドを立ち上げた。
大西洋平社長(以下、大西):ビューティカンパニーとして「多種多様なカテゴリーでイノベーションを起こす」という指針の下、今一度アクセルを踏んだ。ヘアケアと美容家電の二本柱だった事業構造から、すでに3本目の柱が立ち上がり、4本目の芽も出始めている。弊社では、ヘアケアと美容家電以外のカテゴリーをまとめて“スキンケアその他”と定義しているが、25年はここが想定以上に成長し、売り上げ構成比が約20%にまで拡大した。
WWD:好調だったブランドは。
大西:柔軟剤の「リウェア(REWEAR)」、機能性飲料の「ティーフレックス(TEAFLEX)」、コラーゲン配合プロテインの「コラテイン(COLLATEIN)」など、新たに立ち上げたブランドはどれも好調に推移した。また、24年10月に買収したスキンケアブランド「トゥヴェール(TOUT VERT)」もカテゴリーの成長に大きく貢献している。
WWD:ヘアケアや美容家電はどうか。
大西:ヘアケアは、「ボタニスト(BOTANIST)」と「ヨル(YOLU)」という弊社の2大ブランドがトップシェアを維持できた。「ボタニスト」は25年9月に発売したパロサントの香りの“サンタル”シリーズも好調に寄与した。美容家電は、市場全体で中価格帯が伸長していることから、低価格帯に軸を置いてきた「サロニア(SALONIA)」も価格幅を広げたことで利益率が改善した。24年にアルテミスを買収したことで自社グループ内で設計・開発が可能になった点も、利益率の改善に大きく寄与している。ただ、成長率で見るとこの2カテゴリーはやや伸び悩んでいる。立て直しの余地があり、ここを再成長軌道に乗せることが26年の課題だ。
WWD:成長鈍化の背景は。
大西:2年前の組織変更で当社独自の開発フレーム「IPTOS(イプトス)」を高度に最適化することに時間を要したことが一因だと見ている。25年初頭に運用プロセスを見直したことで現在は再成長に向けての兆しをとらえはじめている。再構築後に投入した「ヨル」の新シリーズ“メロウナイトリペア”は、直近のドラッグストアにおける中価格帯製品の中でトップ3に入るなど、好調な立ち上がりを見せた。新体制で開発した製品は26年下期以降に本格的に市場へ投入される見通しで、そこではヒットを着実に積み重ねていきたい。また、ヘアケア市場ではプレミアム化が加速しており、特に機能性を重視するトレンドは引き続き強いが、当社としてはその流れを捉えた製品の投入がやや出遅れた部分もあった。25年に発表した「日本美科学研究所(JBIST)」は、研究開発機能を強化し、より付加価値の高い製品を生み出すために設立した、当社初の研究拠点だ。理想的な連携体制が構築できており、唯一性が高く品質のいい製品開発が可能になると考えている。これからの展開に期待してほしい。
WWD:EC事業はどうか。
大西:オンラインは非常に好調だった。売り上げは前年比で53~56%増と大幅に成長し、オンライン売り上げ比率も前期の32%から44%まで上昇した。特に、オンライン限定で展開している3倍の大容量サイズが好調で、ヘアケア製品の店頭で製品を知り、よりお得な大容量製品をオンラインで購入するという理想的な流れができている。
WWD:海外事業の進捗は。
大西:現在は親和性の高いアジア市場を中心に慎重に可能性を探っている段階で、テストフェーズにある。商材はほぼヘアケアで、主に「ヨル」。大きなマーケティング投資は行わず、SKUは増やしながら徐々に広げていく考えだ。海外は不確定要素が大きいため、数値目標を強く置くより、親和性の高い市場でテストを重ね、勝算があると判断したタイミングでしっかり投資したい。将来的にグローバルカンパニーを目指す思いは強いが、まずは慎重に可能性やタイミングを見極めていく。
WWD:組織づくりで重視する点は。
大西:前例がなくても挑戦する文化は当社の大きな強みだ。組織拡大に伴う課題もあったが、現在はスモールチーム化と迅速な意思決定を重視した体制に見直している。規模が大きくなってもスピード感や挑戦しやすい環境づくりは引き続き大切にしたい。
WWD:売上高1000億円という目標に向けて、来年はどんな年になりそうか。
大西:美容家電とヘアケアをしっかり立て直しながら、好調なスキンケアなどの「種」に投資し、柱を太くする。組織面では、今年掲げた「原点回帰と進化」の考え方を貫く。階層を増やさずスピーディーに挑戦する。そうしたI-neらしさをもう一度強くしていきたい。
盆栽プロデューサー 小島鉄平さん
日本の盆栽文化を現代的にアップデートし、海外へ発信しながらファンを増やしていく姿に強く影響を受けている。僕自身も盆栽が趣味で、30~40鉢ほどコレクションしているが、盆栽は毎日手をかけなければならない、生きるアート。水をあげ過ぎても足りな過ぎても枯れてしまうし、形づくりの答えが出るのは数年後だ。何百年ものあいだ人の手で命をつないできた、歴史にロマンを感じる。日本の文化を世界に広げていくという点で、I-neが目指すJビューティへの挑戦とも通じると感じている。
COMPANY DATA
I-ne
2007年3月設立。消費者の潜在的ニーズを製品開発に反映し「ボタニスト」などのヒットブランドを生み出す。アイデア→企画→検証→EC販売→本格展開をたどる独自のブランドマネジメントシステム「IPTOS」を運用し、新規分野や海外にも事業を広げる。20年9月、東証マザースに上場。23年に東証プライムへ市場区分を変更した。24年は100億円でトゥヴェールを買収し、話題に。24年12月期の連結売上高は450億円。25年12月期の売上高は前期比15.5%増の520億円を見込む
TEXT : NAOMI SAKAI
問い合わせ先
I-ne
0120-333-476

