焦点:韓国の通貨安定化、国内の米国株投資熱で苦境

写真は韓国のウォン紙幣。2015年12月、ソウルで撮影。REUTERS/Kim Hong-Ji

[ソウル 5日 ロイター] – 韓国政府は通貨ウォンを安定させる試みを進めているが国内で大きな障害に直面している。個人投資家の米国株に対する投資熱が記録的に高まり、ウォンが17年ぶりの安値水準で低迷する状況で一段のドル需要に弾みがついているからだ。

ドルはウォン安に対してこの1年間高止まりしているため、韓国政府が米政府と結んだ通商合意に従って米国内の産業に3500億ドルを投資する計画が困難な状況に陥っている。計画によって追加的な資金流出が生じれば、一段のウォン安を招く可能性があるのだ。

こうした圧力は「(昆虫の)アリ」とあだ名を付けられる韓国の大勢の個人投資家たちによってさらに高まっている。彼らは資金を国内に留めようとする韓国政府の呼びかけを無視して米国株投資を倍増させている。

そのような投資家の一人のカン・ヘヨン氏は昨年末にまさにそうした行動を取った。韓国政府が昨年、米国株を売却した投資家に税制優遇措置を講じると発表した際、彼女は全く反対の行動に出て、米国株に投資するためドルを買い増した。

「冗談を言っているのか?絶好の機会だと思った」とカン氏は語り、アルファベットやアップルのような米テック銘柄の購入を狙ってどのようにして2025年の最終週に800万ウォン(5555ドル)相当のドルを購入したか説明した。

韓国人が米国株に執着する背景にはウォール街が最高の収益を上げる企業を擁しているという信念とともに国内企業に対する不信感がある。投資家の多くは国内株式の貧弱な運用成績が長年続いたために不満を募らせたのだ。

外国株に対する投資拡大によってウォンが世界金融危機以来の水準付近で取引されている状況で、韓国当局は既存の政策手段の限界が露呈し、どのようにウォンを安定させるか再検討せざるを得なくなった。

<資金の国内呼び戻し>

韓国政府は昨年末、資金を国内に呼び戻すよう訴えかけるため、投資家が海外株式を売却し1年以内にその売却益を国内株式に再投資した場合、キャピタルゲイン税を免除する計画を発表した。政府当局はまた、輸出企業に対して外貨で得た収益をこれまでよりも多くウォンに換金するよう促し、国民年金公団(NPS)にドル売りを要請した。

こうしたあらゆる努力にもかかわらず、ウォンは年初来で0.9%下落し、1ドル=1451.8ウォンまで値を下げた。

韓国証券保管振替公社のデータによると、1月29日時点で個人投資家が保有する海外株式は過去最高の約1710億ドルに達した。3カ月ぶりに1700億ドルを上回り、ウォン安に圧力をさらにかけている。

1月の米国株の純購入額は50億ドルで、昨年12月の19億ドルから2倍以上に急増した。

U.S. stock holdings by retail investors hit a record high of 172 billion in January.

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韓国の総合株価指数(KOSPI)が過去1年でほぼ2倍に上昇し、世界で最も運用成績の良好な株価指数となっているにもかかわらず、米国株に対するこうした大量の資金流入は起きている。

しかしながら、香港を拠点とするソシエテ・ジェネラルのストラテジストのソン・キヨン氏は韓国人投資家の長年の米国株嗜好が揺るがず「KOSPIの上昇が投資家に米国株への乗り換えを加速させている」と指摘した。

韓国銀行(中央銀行)の李昌鏞総裁は1月に「昨年末に実施した外国為替安定化策が完全に効果がなかったとまでは言えないが、その過程でいくつかの弱点が明らかになった」と述べた。

財務省当局者もまた、ウォン安の主な要因は外国の投機筋でなく国内のドル需要にあると確認したと述べた。

ベセント米財務長官が1月、ウォンについて異例の口先介入で「韓国の力強い経済の基礎的条件と合致していない」と述べた際も、投資家は動じない様子だった。

<資本管理?>

アナリストたちは投資家の行動が数十の公認金融機関を通じてウォンの大半を取引し、かつて外国為替市場を管理した韓国当局者たちの影響力を弱めつつあると主張する。一部の当局者たちはウォンを下支えするために資本規制の再導入案を検討しているが、MSCI指数の「先進国市場のステータス」を確保するためにウォンを国際化させる政府の方針と矛盾する。

シティグループのエコノミストのキム・ジンウク氏は国民年金公団(NPS)について、外国株式の保有資産が拡大している状況を考慮すると、外貨戦略を大きく転換しなければウォン安の圧力が続く可能性があるだろうと述べている。

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