枇杷かな子さんの『亡くなった母の声が聞きたくて』の投稿より

▶▶枇杷かな子さんのマンガ『亡くなった母の声が聞きたくて』を読む

「涙が止まらない」

「私も同じ経験をしました」

「お母さんに会いたくなった」

など、多数のコメントが寄せられたマンガをご存知でしょうか。漫画家・枇杷かな子(@BiwaAmazake)さんが昨年末にSNSに投稿したマンガは、Xで2万いいねを集めました。そこには、お母様を亡くした枇杷さんの喪失感と、大切な思い出を取り戻す様子が綴られています。

昨年末に発売された書籍『今日もまだお母さんに会いたい』にも収録された、このエピソードをご紹介するとともに、このときの心境について枇杷さんにお話を伺っていきます。

■『亡くなった母の声が聞きたくて』あらすじ

枇杷かな子さんの『亡くなった母の声が聞きたくて』の投稿より(1)

ある日、枇杷さんは母の留守番電話の声を聞きたくなったそうです。亡くなった母が一昨年残したメッセージで、「豆腐屋行くんだけどなんかいるー?」という、そのときはなんということもない留守電でした。

枇杷かな子さんの『亡くなった母の声が聞きたくて』の投稿より(2)

しかし、そのメッセージを探してもスマホの中には見つかりません。介護中に怒りに任せて削除してしまったようで、そのことを後悔しながら何度もスマホの中を確認してしまうのでした。

枇杷かな子さんの『亡くなった母の声が聞きたくて』の投稿より(3)

亡くなって一年も経っていないのに、もう母の声がわからなくなってきてしまった枇杷さん。そのことに気づいて落ち込み、今日はもう夜ご飯が作れない…と感じたそうです。

枇杷かな子さんの『亡くなった母の声が聞きたくて』の投稿より(4)

しかし、ふとあることに気づきます。顔認識機能を使ってアルバムの中を探すと、母の映る動画が残っていました。

枇杷かな子さんの『亡くなった母の声が聞きたくて』の投稿より(5)

娘の誕生日のお祝いの時、ハッピーバースデーを歌うみんなの声に混じって、「おめでとう!」という母の声が動画の中に残っていました。

枇杷さんは何回も何回もその「おめでとう」の声を繰り返し聞きました。そして「大丈夫」「大丈夫大丈夫」と自分にそう言い聞かせて、夕飯を作り始めたのでした……。

SNSで反響を呼んだこのエピソードについて、枇杷さんに当時のことを伺いました。

■母が亡くなった時とは、違う喪失感を感じて

――亡くなられたお母様を思う気持ちと切なさが伝わってくるエピソードでした。このエピソードを漫画にしようと思ったきっかけは何でしたか?

枇杷かな子さん:母の留守番電話を介護中に消してしまい、亡くなったあと無性にそれが聴きたくなりました。そんな中、ふと母の声をおもいだそうとしても、想像する母の声がどんどん小さく、聞こえづらくなっていくような感覚がありました。母の存在が私の中でも消えてしまうような気がして、母が亡くなった時とは違う喪失感を感じ、母の声を必死で探しました。

――削除してしまったメッセージを後悔しながら何度も確認してしまうエピソードが描かれていますが、この時はどんなお気持ちだったのでしょうか。

枇杷かな子さん:凄まじい後悔を感じていました。もうないとわかっているはずなのに、もしかしたら履歴が残っているかもしれないと、小さな希望のようなものにすがっていました。

――お母様の声が残っている動画を見つけた瞬間はどんな思いでしたか?

枇杷かな子さん:嬉しい、とは一言で表せない思いです。「会いたかったんだよ」と会えたような気持ちと、「会いたいよ」という切ない気持ちが同時に湧き上がってきました。

枇杷かな子さんの『亡くなった母の声が聞きたくて』の投稿より(6)

――多くのコメントが寄せられていますが、印象に残っているコメントがあれば教えて下さい。

枇杷かな子さん:「お母さんきっと楽しかったと思います」と書いてくださった方がいて、その時は優しいご感想に胸があたたかくなりました。「あぁ母に楽しい思いをさせてあげられたんだ」と救われるような気持ちでした。

   *    *    *

写真はたくさん残っていても、意外と残っていない大切な人の「声」。この作品を読んで、「親の声を録音、録画しておこう」と感じた方も少なくないのではないでしょうか。当たり前のように一緒に過ごせるうちに、大切な思い出をたくさん残しておきたいですね。

取材・文=レタスユキ

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