
2025年の秋ドラマも多くの作品が佳境を迎えています。そんな中で今期一番の話題作となったのが、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系/以下『じゃあつく』)。
ネット上のあらゆる指標を席巻した今作の凄まじさと魅力を、あらためて振り返りたいと思います。
◆視聴率では2位だが、TVerでは圧倒的1位
まず、全話平均世帯視聴率は、12月5日執筆時点で6.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。中高年層の視聴習慣を掴んでいる日曜劇場の『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)には及ばず、視聴率は今期2位。ただ、『じゃあつく』が本領を発揮するのはネット指標です。
TVerのお気に入り登録数では、2位『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)の125万、3位『ザ・ロイヤルファミリー』の98万を大きく突き放し、174万でトップに君臨しています。
これは、社会現象を巻き起こした『silent』(フジテレビ系)、『VIVANT』(TBS系)などに次いで、歴代ドラマの中でも5位にランクインする高水準です。
また、Filmarksのスコアも4.2を記録し、『ザ・ロイヤルファミリー』の4.0、『良いこと悪いこと』と『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)の3.9などを抑え今期1位。
さらに、Googleトレンドの過去90日間のウェブ検索数でも、平均検索数で『じゃあつく』が1位と、堂々のネット指標三冠目を獲得しています。お気に入り登録するほどではなくても、ドラマが気になって検索するふわっとしたライト層にまでリーチしていることの表れです。
◆勝男の強烈なインパクトがネットで有利に
こうしたネット指標の強さの要因は、なんと言っても主演・竹内涼真さん演じる時代に取り残された亭主関白男・海老原勝男が、キョーレツなインパクトを放っていたからでしょう。
「料理は女が作るもの」といった性役割についてを筆頭に、恋愛観、仕事観などあらゆる物事に対する考え方が古臭く、独善的でした。
それでも、竹内さんが突き抜けたさわやかさでコミカルに演じていること、勝男がちゃんと反省し自分をあらためようという姿勢を持っていたことで、ただの嫌味なモラハラ男から愛され化石男に昇華されました。
この勝男の憎み切れない面白おかしさは、多くの人に他人と共有したいと思わせる力があったのです。
◆共有したくなる個性際立つキャラクター達
毎話、放送があるたびにSNSが盛り上がるだけでなく、リアルな友人とも『じゃあつく』について「面白いから見て!」と言ったり言われたりした方も多いのではないでしょうか。そこから検索して、この作品にたどり着いた視聴者も少なくないはずです。
さらに、勝男の元恋人で“モテに全ベット”してきた山岸鮎美も、等身大のようで突飛となかなかクセのある女性でしたが、もう1人の主演・夏帆さんが好演。
他にも、“大量消費型恋愛体質男性”のミナト(青木柚さん)、勝男の失恋友達となった柏倉椿(中条あやみさん)、勝男の後輩の料理男子・白崎ルイ(前原瑞樹さん)など、個性際立つキャラが今作には溢れています。
◆家事ドラマの「成功の秘訣」は共感できること
今春放送で同じくネット指標に強かった『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(TBS系)もそうですが、「家事あるある」、「生活あるある」を題材としたドラマの成功例では、主人公に限らず、登場人物の誰かしらに視聴者が自分を重ね合わせられることが強みとなってきました。
『じゃあつく』も、様々なキャラがそれぞれの立場で思い悩み、多方面の視聴者から「あるある!」と共感されたからこそ、ここまで大きなムーブメントになったのでしょう。
ただ、「あるある」がリアルであるほど共感度は高いのですが、あまり現実的すぎると視聴者の気分も重たくなってしまいます。しかし『じゃあつく』は、『対岸の家事』以上にクスっと笑えたり、爆笑出来るシーンが多くあったので、それも他者への勧めやすさに繋がりました。
◆「竹内涼真=勝男」のイメージは続く?
『じゃあつく』はそれに加え、勝男、鮎美、ミナトの三角関係など、中だるみしないドキドキハラハラな展開が毎話続いたことで、最後まで反響が増幅する好循環を保ってきました。
そんな今作を、勝男という破壊力あるキャラで引っ張ってきた竹内さん。これまでも朝ドラ『ひよっこ』(NHK総合)や、日曜劇場『陸王』(TBS系)などで当たり役に出会ってきましたが、今後しばらくは視聴者の脳内が「竹内さん=勝男」となりそう。
また、そんな勝男イメージを打ち破ってくれる、竹内さんの新たな作品にも期待したいところです。
<文/こじらぶ>
【こじらぶ】
フリーライター・コラムニスト。言語学修士。男性&女性アイドル、地下、ローカルなど様々な現場を経験。ドラマ、スポーツ、エンタメ全般から時事ネタまで。俳優、アイドルなどのインタビューも。X: @kojirabu0419
