日本マクドナルド株式会社プレスリリースより

 マクドナルドやドン・キホーテなど、最近、永山瑛太をさまざまな広告内で見かけることが多い。

 そこにうっすら感じる狂気。言い過ぎかもしれないが、ぼくらの日常が静かに侵食されていく恐怖すら漂う。俳優としての永山が表現するものとは。

「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、瑛太からの改名を機に今や日常を“ジャック”するまでになった強烈な俳優像を追う。

◆瑛太時代の衝撃

 永山瑛太が瑛太名義だった頃、篠原涼子主演の刑事ドラマ『アンフェア』(フジテレビ、2006年)が若き名演となった。篠原演じる警視庁の刑事・雪平夏見の相棒・安藤一之を演じ、いくつもの難事件の真相を追う。

 サスペンスフルな緊張が途切れない全編、最終話が近づくにつれ、内部に潜む黒幕の存在がおぼろげに正体を見せ始める。

 雪平の上司である管理官・山路哲夫(寺島進)あたりに目星をつけるのが妥当かと思いきや、見事に裏切られる。

 灯台下暗し。黒幕は相棒の安藤だった。よくもまぁいけしゃあしゃあとずっと雪平の傍らにいられたものだ。確かにミステリアスなキャラクターではあったが、まさかね。視聴者に疑いの目を一切向けさせない瑛太の名演は、衝撃的だった。

◆“フェア”な俳優

 視聴者の想像を掻き立て、最後の最後まで正体を隠し続けた安藤は、ドラマタイトル通り、アンフェアな存在だが、この大役を演じきった瑛太は清々しく映った。俳優としてはフェアな人ではないか。

 俳優としてフェアと言うのは、演じる役柄に対して忠実で、役柄そのものを生きようとする姿勢のことだ。それでいて演じ込みすぎるわけでもなく、どこか飄々とした瑛太自身の表情が時折覗きもする。このあたりの塩梅がうまい。

 放送時の瑛太は24歳だから驚く。あまりにも軽妙で名人の域に入っている。同作までに主演作品に恵まれていた彼が俳優人生をフェアに生きていた証だろう。

◆永山姓への改名

 では、永山瑛太名義になってからの彼はどうだろう? 改名は2019年の年末に発表され、翌2020年、平成から令和への改元のタイミングでしめやかに行われた。

 本名である永山姓への改名で、弟・永山絢斗との兄弟関係がより鮮明になった。改名後第1作ドラマ『あしたの家族』(TBS、2020年)を経て、NHKで放送された『Living』(2020年)では、実の兄弟がドラマ内でも兄弟を演じ話題となった。

 しかもこれが意外にも初共演だったのだから、見たことがありそうでない新鮮な印象とともに永山瑛太への改名は、イメージや好感度のさらなるアップをも手伝うこととなった。

◆怪しく尾を引く役

 俳優としてのフェアな態度もよりスリリングに深化する。

 長澤まさみ主演のサスペンスドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(関西テレビ・フジテレビ、2022年)で演じた連続殺人犯役は、永山の紛れもない真骨頂が滲んだ怪演だった。わずかな出番で神出鬼没のごとく現れ、不気味な存在感を残す。

 じわじわ感じさせる恐怖は、煮えきらないエンディングを迎えた最終話の後も、怪しく尾を引いた。さらに是枝裕和監督が坂元裕二に脚本を委ねた問題作『怪物』(2023年)での教師役も極めつけだ。

 小学校のクラス担任・保利(永山瑛太)が、教え子に度重なる体罰を加えたことから予想外の醜聞が広がる。その実、罪を着せられただけの保利のキャラクター性に全編の前半と後半で白黒を付け、繊細な好演が素晴らしかった。

◆広告起用がディストピアのような世界

 こうした怪演と好演に、奈緒主演の不倫ドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ、2023年)で演じたダメダメ不倫夫・吉野陽一役が連なる。改名後の永山は、まるで鬱々とした問題男キャラを好んで演じているようにさえ思える。

 そのキャラの印象があまりに強烈なのかもしれない。視聴者や観客の日常生活に溢れる広告にも作中のイメージが影響する。例えば、永山が起用されているマクドナルドの広告を見てみよう。

 永山扮する店長が「あなたと働きたい。」と呼びかける一枚がハンバーガーをのせるトレーに敷かれている。一見精悍な感じがするのに、『怪物』を観た後では直視出来ないという声がネット上で見受けられたりもしている。他にもドンキホーテの広告起用など、日常の中で永山を身近に感じる機会は多い。

 マクドとドンキを抑えられては、日常がジャックされたも同然(?)。永山がいたるところに紛れ込む。

 彼の顔で埋め尽くされるディストピアのような世界だ。それは冗談にしても、持ち前の爽やかさを狂気に、活力を恐怖に転換させる現在の永山瑛太は、強烈な俳優像を作り上げたのだ。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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