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『羊たちの沈黙』(91)のレクター博士のモデルともなったといわれ、300人以上を殺害したともいわれる実在した怪物、ヘンリー・リー・ルーカスをモデルに描いたシリアル・キラー映画『ヘンリー』。

14歳の時、虐待を繰り返す母を殺害したヘンリーは、相棒のオーティスとその妹ベッキーとの奇妙な同居生活をはじめる。だがヘンリーは、次第に本能的ともいえる殺人への衝動が抑えられなくなっていく。そしてヘンリーに惹かれるベッキーの様子を見たオーティスが嫉妬、共同生活は惨劇と化していくが…。

1986年アメリカ製作の映画『ヘンリー』は完成から数年間、本国アメリカでオクラ入り状態となり、1990年にやっと正式に公開、日本では1992年に劇場公開された作品。70年代後半~80年代にかけて、全米で300人以上を殺害したと云われる連続殺人鬼、ヘンリー・リー・ルーカスをモデルに、殺人鬼の日常を淡々と凍るような冷たさで描いた犯罪スリラーで、流血や残虐シーンはほとんどないにもかかわらず、作品の放つ空気と徹底したドキュメンタリータッチの描写で<史上最も恐ろしい映画>のひとつとして映画史に残る衝撃作。

完成した1986年当時、『13日の金曜日』のような観客を楽しませるホラー映画を望んでいた出資会社は、『ヘンリー』の一切の感情を寄せつけない冷徹な内容に唖然、さらにはMPAA(アメリカ映画協会)によりX指定を受けたことにより数年間正式な劇場公開が見送られた。意図的なのか、偶然なのか、描かれる殺人鬼の行動はひどいが、映画という芸術の側面でとらえた場合には、全体のトーン、空気が完璧に統一され、アメリカの闇の一部を垣間見れる作品として本作以上に死臭と陰鬱さが滲む地獄のような映画は存在していないと思われる。
2019年6月12日BD&DVD発売

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